2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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実用性の検証が一巡し、事務処理を効率化する手法としてごく当たり前の選択肢となったRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。導入コストを大きく上回る生産性向上が数多くの事例で示されてきただけに、RPA活用で達成すべき「費用対効果」への要求は、年々シビアなものになってきている。
ユーザー企業のITインフラと連携して用いられるRPAツールは、既存の環境との相性により、実用に見合う応用領域が大きく変わってくる。そうした中、データセンターやクラウドサービス、ストレージソリューションの分野で事業展開し、テクノロジー活用の勘どころを熟知する株式会社ブロードバンドタワー(東京都千代田区)は、営業事務部門で多用する基幹システムとの連携を重視してRPAツールを選択。スタッフ4人で担う定型業務の3割をロボット化し、導入から1年で初期費用を上回るリソースの創出を達成できる見通しという。
同社におけるRPAツール選択の進め方と、そこで重視したポイント、活用の現況と今後の展望について担当者に聞いた。
──貴社のRPA導入検討は、現場からの要望を受けて始まったと聞きました。まず、当時のいきさつからお聞かせください。
樋山洋介氏(取締役執行役員 DC・クラウド・ストレージ営業担当): 2000年に設立された当社は、当初からの事業で業界内でも“老舗”にあたるインターネット・データセンター(iDC)事業のほか、当社独自のクラウドサービスの提供と代表的なメガクラウドサービスの再販およびコンサルティング、さらにストレージ製品の販売・サポートなどを手がけています。
エンタープライズITの領域ではクラウド化が年々着実に進み、当社の顧客数も直近数年間は毎月右肩上がりを続けています。これに伴い、受発注や請求などの業務量も増加の一途で「将来も見据えた体制強化を」との声が営業事務の現場から挙がっていました。
一方で、営業事務の中には単純な入力や転記といった、必ずしも人手で行わなくてもよい作業が少なからず含まれていることも以前からの課題でした。
「採用難は今後さらに深刻化し、人間がやる意味のある仕事に集中できなければ増員もおぼつかなくなる」という私自身の考えもあり、2018年春から営業事務部門の2人にRPAの導入検討を頼み、情報収集と並行して導入効果が見込める作業を精査してもらいました。
──ITサービスを提供する企業として、テクノロジーの活用に関する多くの知見をお持ちのところ、今回のRPA導入ではどのような点を重視していたのでしょうか。
樋山氏: 「単体で社員160人という当社の企業規模でRPAの導入効果を出すこと」を強く意識していました。
AI(人工知能)ソリューション事業を展開するグループ企業では問い合わせ対応を自動化するチャットボットなどの開発・提供も行っており、当社としても知見があります。ただ、社内業務の効率化でAIを応用するには、AIが学習して精度を高めるのに十分な量のデータが必要で、当社の事務量ではその域まで達しにくいのが実情です。
既存の業務を処理する、いわば“手足”として使い始められるRPAの場合はそうした制約がないものの、いち早くRPAが普及した数千人規模の組織にならって、当社でもRPAの専任担当者を置こうとすると、今度は専任者の人件費をまかなうのが難しくなります。
こうした事情を踏まえて「合計4人いる営業事務のスタッフが、自身の仕事から定型業務をロボットに移し、新たに1人採用するのと同等の業務量をこなしてもらう」というボトムアップ型・スモールスタートのアプローチが成り立つかどうかを重視していました。
──2019年8月にRPAを導入するまで、1年以上をかけてツールと対象業務を見極めたそうですね。
金澤美和氏(営業本部 営業サポートグループ ディレクター): はい。検証の結果、私たちのグループが担当する営業事務のうち、ロボットに適した定型業務は全体のおよそ半分を占めており、中でも基幹システムへの入力や転記の割合が多いことが分かりました。そこでこうした分野を重点的に、複数のRPAツールを試用して適性を確かめました。
私たちが現在使用している基幹システムは、中小企業での導入例も多い「OBIC7」をカスタマイズしたもので、「同じ操作画面のURLが、セキュリティー対策で毎回変わる」「スクロールで出てくる下部や別ウインドウなど、当初表示される画面以外の場所にもボタンが配置されている」などの特徴があります。
PC上でロボットに動作を指定する方法はRPAツールごとにさまざまでしたが、当社のシステムのこうした仕様にうまく対応できる製品は限られていました。その中でも、画像認識機能による操作対象とのマッチング精度が高く、なおかつページ全体から一度に操作対象を見つけ出せたのは「Verint RPA」だけでした。この圧倒的な「いい目」を持つ点が導入の決め手となりました。
──現在のRPAの活用状況はいかがですか。
磯貝奈央氏(同マネージャー): 見積書発行のための情報入力をはじめ、受注登録や請求、週次・月次での集計表作成などで15種類のロボットを運用しており、OBIC7関連のほか、Excelファイルから抽出したデータの集計にもRPAを使っています。
定常的に発生する作業をロボット化することが多い一方、昨年10月の消費税率変更に際しては、過去へさかのぼって再計算が生じた取引の処理にRPAを活用し、工数を大幅に削減できました。
金澤氏: これらのロボットは当初、導入支援の一環としてエス・アンド・アイ株式会社に作成いただきましたが、そこから私たち自身も1日半のトレーニングを受講してツール操作を学び、類似する別用途のロボットを増やしているところです。
Verint RPAは「自動実行する工程ごとに作業画面のサムネイルが示される」という、スライド作成ソフトに近いユーザーインターフェースでロボットの実装やカスタマイズが可能です。「Excel上級者、Accessもある程度分かる」というレベルなら、まず問題なく操作できる印象で、現状では営業サポートグループの4人中、私たち2人が使っていますが、残る2人や将来のメンバーも、さほど時間をかけず使いこなせるようになりそうです。
樋山氏: 今回の税率変更のようなイレギュラー対応、あるいは「監査の重点項目が変わり、従来問題ないとされた手順が突然認められなくなる」といった想定外の事態は、いつも何かしら出てくるものです。業務そのものも絶えず変化しており、当社で言うと、現行の基幹システムの大枠を決めた7年前の想定以上に「定額の月額請求」や「自社サービスと外部仕入れの分割請求」が増えています。
影響が全社に及ぶ基幹システムの改修や更新を頻繁に行えない以上、現場の力で素早く変化に対応するためには何らかの方策が欠かせません。理想を言えば、誰もがプログラミングスキルを持つべきでしょうが、現実的にはRPAがその役割にふさわしいと私は考えています。その意味で、習熟しやすいシンプルな操作画面と高い性能を両立しているVerint RPAは、他ツールにない優位性を持っていると評価しています。
──費用対効果の面でも、見合った成果が得られているのでしょうか。
樋山氏: そうですね。今回当社では、ロボットが代替した作業を人間が行ったときの時給換算額を積算していき、買い切りライセンスなどの初期費用を上回れば投資としても成功と考えています。
さきほどあった通り、社員4人で行う当社の営業事務のうち定型作業はおよそ半分を占めていますが、現状でそれらの1割がロボット化済みであり、当社の決算月である2020年12月までにロボット化率は3割に達する見通しです。
これはつまり「増大する業務から社員0.6人分をロボットに移管できそう」ということですが、0.6人分の人件費相当額がRPAの初期費用を上回るため、導入から1年余りで「元が取れる」計算になりそうです。
──とても順調にロボット活用が進んでいるのですね。最後に、さらなる展開についても構想をお聞かせください。
樋山氏: 営業サポートグループ独自の取り組みとして営業本部の管轄で進めてきたRPA活用を全社に広げる観点から、RPAツールの運用は2020年1月から、社内のIT部門に移管されました。
これは会社全体としてRPA活用の機運を高め、運用ルールを統一できるという意味では前進です。ただ同時に「ロボットの実装や改修にあたり、ボトムアップ時代のスピード感が保てるか」あるいは「個別部署への適性を重視して選んだRPAツールが他部署にも受け入れられるか」といった新たな課題にも直面することになります。
RPAが注目される背景に「働き方改革」があるのは周知のとおりですが、ここへ来て「単に労働時間を短くしただけでは生産性は高まらず、働き手のスキルアップが重要」という点への理解が浸透してきたように思います。
私たちとしても、社内のRPA人口を増やしたいと考えており、まずはRPA導入から丸1年となる夏ごろをめどに、営業事務のメンバーがRPAで達成した生産性向上の成果を “お披露目”する準備を進めているところです。
技術面では、OCR(光学文字認識)との併用でRPAの活用領域を広げたいという思いもあります。過去の契約書類などのスキャン画像をもとにデータを手入力する作業などは早急に自動化すべきと考えており、多様な様式や手書き文字にも対応できる最善の方法を引き続き検討していくつもりです。
──企業規模に応じたRPAの活用戦略について、具体的なヒントを数多く伺えたように思います。今回はご多忙のところ、貴重なお話をありがとうございました。
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