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「財務部長が決死の覚悟で出社」もあり得る状況、緊急事態のテレワークがあぶり出した企業の明暗自粛要請も「財務経理、管理職は出社」はなぜ発生するか

世界的な感染症の流行により経済の停滞が懸念されるが、日本の企業の状況はどうだろうか。財務経理、管理部門では、事業の停滞や資金繰りの懸念だけでなく、押印のために出社するリスクも出てきているようだ。

» 2020年04月08日 15時19分 公開
[キーマンズネット]

 日本CFO協会は2020年4月6日、「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響に関する調査」の結果を発表した。

 調査は、日本CFO協会が会員を主体とした日本企業のCFO(最高財務責任者)および経理財務幹部を対象にオンラインアンケート形式で実施したもの(調査期間:2020年3月18日〜4月3日、有効回答数:577件)。回答者の役職は役員が16%、部長が24%、課長が29%、その他が31%だった。従業員規模別では、5万人以上が11%、5000人以上が22%、1000人以上が25%、500人以上が13%、その他が29%。

感染症が流行すると決算業務が遂行できない現実、資金調達に課題も

 今回の調査対象は、企業のCFO(最高財務責任者)や経理財務部門の幹部で、新型コロナウイルスによる業務への影響や、テレワークの状況と課題を聞いた。主な結果は以下の通り。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による業務への影響については、決算業務に「影響あり」と回答した企業の割合は75%に上った。具体的な影響としては、「海外拠点や子会社からのデータ収集の遅延」や「連結決算の遅延、監査対応の遅延」「業績悪化や来期の業績予測」「有報記載のリスク情報の検討」「リモート対応による認識の齟齬(そご)」「リモート対応で全ての決算処理は不可能」などの声が上がった。

 財務業務に「影響あり」と回答した企業の割合も71%に及んだ。「有価証券の評価減」や「資金計画や資金調達」「在宅の限界(現物確認、銀行振込)」などが具体例として挙がった。

 日本CFO協会では、年度決算への影響を懸念する企業が多く、業績悪化による資金管理や調達にも大きな不安が生じていると分析している。

(日本CFO協会調べ)《クリックで拡大》

テレワーク中「ハンコを押しに出社」が4割、PC持ち帰りNG企業も

 次に、テレワークについては大半が必要だと回答したものの、テレワークを導入している企業はまだ少なかった。一部企業ではテレワークを推奨するものの、出社する従業員が多い状況もあるようだ。理由はどこにあるのだろうか。

 具体的には、震災などの緊急時に備えてテレワークができる体制が必要かどうかを聞いたところ、「非常に必要」と回答した割合は69%、「どちらかというと必要」は27%で、大多数が必要と考えていた。平常時でもテレワークを「ぜひ導入すべき」と回答した割合は45%、「導入すべき」は30%で、必要と考えている割合は4分の3に及ぶ。

 だが、2020年2〜3月のテレワークの実施状況について聞くと、「強制的に実施」と回答した割合は7%にすぎなかった。そして、「強制していないが強く推奨」が34%、「推奨しているがあまり実施せず」が28%、「実施も推奨もせず」が26%だった。

(日本CFO協会調べ)《クリックで拡大》

 テレワークを実施または推奨した企業のうち、「テレワーク実施中に出社する必要が発生した」と回答した割合は41%。「紙の書類の処理(請求書、証憑書類、押印手続、印刷)」や「会議への参加」「打ち合わせ」「銀行対応」などが、その理由として挙がった。

 テレワーク環境が整う企業でも、書類の承認業務を担う部門長などの組織の屋台骨を支える管理職がリスクを負って出社する状況があることがうかがえる。

 一方で、テレワークを実施しなかった理由としては、「書類をデジタル化していない」や「外部関係者(銀行、監査法人、税理士、社労士、システム会社、コンサルティング会社など)とのリモート対応が不可能」「自部門、連携部門にWeb会議ツールがない」「PCを家に持ち帰れない」「会計システムなど社内システムがクラウド化されていない」「外部から社内の業務システムにアクセスできない」などが挙がった。

 日本CFO協会では、必要な制度やシステムが未整備であることがテレワーク普及の阻害要因になっており、テレワーク導入には紙文化からの脱却が不可欠だとしている。実際、テレワークを実施できていない企業の77%が紙の書類をデジタル化できておらず、テレワークを実施している企業でも紙の書類のデジタル化に対応できている企業は36%にとどまっている。同協会では、社内システムの導入など経理財務業務のデジタル化への対応が急務だと指摘する。

 ここで挙げられた「出社の理由」の中には、セキュリティポリシー上、手軽なWeb会議ツールを利用した打ち合わせが難しい業務があることは理解できるが、「紙」をデジタル化するだけでリモートワークに切り替えられるものも少なくない。

 稟議(りんぎ)書や申請書など、社内業務の多くはワークフローシステムなどを活用すれば電子化が可能であり、押印と同じ効力を持つ仕組みをリモートワークでも実現可能だ。同様に取引先との契約も電子契約システムや契約書管理システムなどが手ごろな価格で利用できるようになってきた。しかし、今回の調査では、一般企業への普及はまだ途上という状況が明らかになった格好だ。

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