ワークスモバイルジャパンが実施した「新入社員のチャット利用に関する上司の意識調査」によると、30代は形式的なことを重視する傾向にあるのに対して、50代は不要な形式を排除したコミュニケーションに寛容的であることが分かった。
ビジネスチャットでの業務連絡は完結にするべきか、ビジネスマナー本を参考に丁寧に記するべきか。上司や他社はどう考えているのだろうか。
ワークスモバイルジャパンは2020年6月16日、「新入社員のチャット利用に関する上司の意識調査」の結果を発表した。調査対象は、ビジネスチャット導入企業に勤務する30代〜50代のビジネスパーソンで、875人から回答を得た(調査期間:2020年4月22〜28日、インターネット調査)。それによると、30代は形式的なことを重視する傾向にあるのに対して、50代は不要な形式を排除したコミュニケーションに寛容的であることが分かった。ビジネスチャットのマナーはどう考えるべきだろうか。
まず、新入社員が上司に報告や連絡をする際、チャットで済ませてよい内容とそうではない内容に対する認識を調べた。
チャットで済ませてよい内容として最も多く挙がった回答は、「直行・直帰の報告」で73.7%(複数回答)だ。次いで「飲みの誘い、飲み会の連絡」(71.5%)、「休暇取得の連絡・相談」(65.7%)が続いた。それに対してチャットで済ますべきではない内容では「緊急対応を要するミスの報告」(59.8%)が最も多かった。
意見が分かれたのは「当日の欠勤報告」で、チャットで済ませてよいとした人は49.8%、チャットで済ますべきでないとした人は50.2%と、ほぼ半々だった。また遅刻の報告については、事前報告については58.6%の人がチャットで済ませてよいとした一方で、事後報告については59.1%がチャットで済ますべきではないと答えた。
次に、社内チャット時に、あいさつや相手の名前といった形式的な内容を書くべきかどうかについて聞いた。すると、意外にもマナーに厳しいイメージが有る50代以上がカジュアルなビジネスチャットに寛容だとする結果になった。逆にマナーに厳しい世代は30代だった。
「お疲れさまです」や「お世話になります」などのあいさつ文については、全体の13.4%が「不要」、19.2%が「どちらでもよい」と答えた。年代別に見ると、年上になるほど「不要」や「どちらでもよい」の割合が高かった。具体的には、「不要」と回答した割合は、30代が8.8%だったのに対して50代は15.5%だった。
メッセージを送る相手の部署や役職、名前の記載についても、年上の方が「不要」や「どちらでもない」と考える傾向が強い。30代では、「不要」が18.4%、「どちらでもよい」が15.0%を占めたのに対して、50代ではそれぞれ27.8%と31.6%だった。
30代は、近くにいる新入社員からチャットだけでコミュニケーションを取られると、嫌われているのではないかと不安を感じる傾向が強いことも分かった。「不安を感じる」と回答した割合は、全体では31.3%だったのに対して、30代は44.5%、40代は30.7%、50代は18.6%だった。
ワークスモバイルジャパンの執行役員を務める萩原雅裕氏は、「上司や先輩の立場である50代の多くがフランクな対応について寛容だったり、30代は新入社員に嫌われていないか不安を感じているケースが上の世代よりも多かったりと、年代による意識の差が見られた。経営者や管理職ほど忙しく、仕事でチャットを使うことのメリットを実感しているので、前置きのあいさつは不要、簡単な報告でよいという回答は納得できる」と述べている。
また萩原氏は、ビジネスチャットの導入に成功している企業では、(1)上司は部下ほど細かいマナーにこだわっておらず、チャット時のルールを明文化するとよいこと、(2)チャットは組織文化やリアルなコミュニケーションの写し鏡であり、対面や電話、メールなど従来の手段と組み合わせて使うべき、といった方針を持っていることにも触れた。
ビジネスチャットはツールごとに機能が異なっており、一概にどの使い方でないと「マナー違反だ」いえるものはない。ただし原則として、ビジネスチャット一般に「メールで長文のやりとりをするほどでもないが伝えたい情報」「今すぐ連絡を取りたい情報」「個別のプロジェクトとにグループで情報や資料を共有する」といった目的の連絡に適している。他にもプロジェクトごとのタスク進ちょくをまとめられるなどの利点もある。こうしたビジネスチャットならではのメリットを最大化するにはシンプルな報告・連絡・相談を心掛けるべきだろう。同様に時間拘束の問題も有る。メンションを付けて呼びかける場合、呼びかけた段階から相手の時間を拘束することもあるため、要件を手短かに伝えるなどの配慮が必要だ。
多くのビジネスチャットツールがユーザー向けにチュートリアルやデモ動画を公開しているので、職場の従来の監修よりも、利用するツールベンダーが推奨する使い方に併せてコミュニケーションのルールを決めることも重要だろう。
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