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PC調達だけじゃ終わらない、テレワーク対応のために情シス担当者がやるべきこと

コロナ禍で急きょテレワーク対応に追われた情シス部門。さまざまな対応に追われた担当者も多いかと思います。本稿では、テレワークの準備から実施後まで、情シスを襲った想定外のトラブルを紹介します。

» 2020年07月01日 08時00分 公開
[杉 研也キーマンズネット]

 2020年4月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴って緊急事態宣言が発出され、出勤を抑制するため急いでテレワークへシフトした企業も多いでしょう。

 本稿は、テレワークの準備から実施後まで、情報システム担当者(以下、情シス)を襲った想定外のトラブルを紹介します。緊急事態宣言は一時解除となりましたが、「ニューノーマル」(新常態)のテレワークシフトに向けて参考になればと思います。

テレワーク需要を時期別に振り返る 急激な需要増でPCが枯渇

 IT機器のライフサイクルマネジメント(LCM)サービスを展開している当社では、その一環としてPCをはじめとするIT機器をレンタルしています。今回の緊急事態宣言前後で、多くの顧客からテレワーク導入についての問い合わせを受けました。

 まず、テレワーク需要の拡大について、当社の動向を基に整理しておきます。

 新型コロナウイルス感染症の報道が増え始めた2020年1月下旬〜2月の段階では、顧客からテレワークに関する問い合わせはほぼ無い状態でした。3月に入ると図1の通り、1日に数件ほどの問い合わせを受けるようになりました。3月下旬からは、さらにテレワーク関係の問い合わせが増え、緊急事態宣言が発出された4月7日からゴールデンウイーク直前の4月24日までは、問い合わせ件数は高水準で推移しました。

 以前からテレワークを実施できる体制をとっていた企業も少なからずありましたが、図1からは今回のコロナ禍でテレワークの導入を急きょ実施した企業が多かったことが分かります。

図1 問い合わせ件数の推移(提供:パシフィックネット)

 コロナ禍でテレワーク需要が急激に高まった結果、市場のPCは一時的に枯渇しました。メーカーの生産ラインも鈍化し、ベンダーや販売店も休業したことが、PCの調達に大きな影響を与えました。読者である情シスの方も、調達に苦労されたという方が多いのではないでしょうか。当社もテレワーク需要に備えて在庫は増強していましたが、予想を超えた問い合わせ量で、一瞬にして在庫が不足したことを覚えています。

 ここからは、問い合わせの内容について見てみましょう。

 最も多かったのは「デスクトップで業務されている従業員向けにテレワーク用のA4ノートPCを配布したい」というニーズで、44%と約半数を占めました。これは、自宅で利用するため持ち運びの必要がなく大画面が良いと考える顧客が多いということです。また、テンキーが必須だという要望もあり、これは事務や経理の方々のテレワークが進んだ結果でしょう。

 テレワークに必要なものはPCだけではありません。通信環境の整備のため、Wi-FiルーターとSIMに関する問い合わせも全体の2割ほどありました。外回りをする営業向けには、すでにルーターやデザリング可能な携帯電話、スマートフォンといった通信環境を配備している企業も多いため、バックオフィス業務の従業員のテレワークに必要となったのだと推察されます。加えて、件数は少ないながら液晶モニターのレンタルの要望もありました。

図2 問い合わせアイテムの内訳(提供:パシフィックネット)

大量PCの調達完了、でも情シス自身はテレワークできない現実

 従業員全員分のPCを調達したからといって、情シスもテレワークに移れるというわけではありません。その後も数多くの課題が情シスを待ち構えていました。

 情シスの方からの相談で機器調達の問い合わせの次に多かったのは、「キッティング」の相談でした。

 そもそもキッティング作業とは何をするのでしょうか。PCを社内の基幹システムにつないだりセキュリティの設定したりとPCを業務利用するには、いろいろな設定が必要になります。設定は情シス担当者が作業するため、大量のPC設定に追われることになります。テレワークが推進され始めたとはいえ、自宅でPCの設定作業をする訳にもいかず、情シスは出社して設定作業をしなければなりません。キッティングがボトルネックとなり、情シス担当者のテレワーク導入には難航した企業も多かったと思います。

 全面的に出社が禁止されていた企業では、当社のような企業にアウトソーシングする形で対応していました。

 とはいえ、多くの情シス担当者は感染リスクのある中でもやむを得ず出社をしていました。企業によっては、情シス部門は少人数もしくは1人で運用しています。キッティング作業が終わらなければ、従業員にテレワーク用PCをデリバリーできないため、長期にわたって出社したケースもあるようです。

キッティング作業後も課題は山積み……

 なんとかキッティングを終わらせPCを配布した後に待っていたのは、従業員の機器導入におけるトラブル対応です。

 ユーザーである従業員はITスキルが高い人ばかりではありません。自宅での機器の設置や接続方法などあらゆる問い合わせが情シスに集中し、かなりの労力がかかってしまったケースも少なくありません。

 全従業員の機器の設置、接続までが終わり、テレワークが導入できた後も、業務効率に関連したトラブル対応が必要だったようです。例えば、「ノートPCの画面が小さいので効率が低下した」「これまで紙にプリントして作業していたのだが、ディスプレイ上で作業するようになってミスが増えた」といった声です。

 自宅でのテレワークは、サブモニターやプリンタを置くスペースの問題もあります。こういった従業員ごとの個人的なサポートやトラブルにも苦慮されたというケースもあったようです。

 今回、テレワークを実現する上でハードウェア面の課題になったのは、機器の調達、キッティング作業、トラブル時の対応(ユーザーサポート)、ユーザーの効率低下の4点です。後編の記事では、この4つの課題を踏まえ、今後テレワークを実施するに当たって情シス担当者は「どのような対策を取れば良いのか」「どう備えれば良いのか」について詳細に解説したいと思います。

著者紹介:杉 研也

 IT機器の調達から運用管理、データ消去、適正処理までをLCMサービスとして提供するパシフィックネットの取締役を務める。企業や官公庁におけるIT機器の排出からデータ消去、リファービッシュまで、ITAD(IT Asset Disposition)の責任者として、多数のリユースの現場に携わる。環境省が開催する「使用済製品等のリユース促進事業研究会」で委員を務め、また総務省がオブザーバーとして参加する「リユースモバイル関連ガイドライン検討会」で主査に任命されるなど、社外活動にも積極的に参加、リユース業界の透明性の高い健全な発展に尽力する。現在は、サブスクリプション(レンタル)ビジネスの責任者として、働き方改革とテレワーク導入の推進、DaaS(Device as a Service)の提言など、新たなIT機器の活用方法を企業に提唱している。


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