テレワーク制度導入で、会議、出張、どうなった? 調べてみたら、2割の企業がやむなく出張会議を決行、Web会議導入で効率ダウンなど、一筋縄では行かない厄介な問題が見えてきた。
キーマンズネットは2020年7月1〜15日にわたり「会議の実施状況とIT活用」に関する調査を実施した。全回答者数130人のうち、一般部門が48.5%、情報システム部門が35.4%、ベンダーやSIerとしての立場が12.3%などといった内訳であった。
今回は「出張や移動を伴う会議の有無」や「対面会議から遠隔会議への切り替え計画の有無」「会議実施状況の変化」など、主に移動を伴う社外関係者との会議における運用実態を調査。出張を伴う会議は前回調査からわずか半年で27.7ポイントも急減していることなどが分かる結果となった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
前編では主に、社内会議を中心に感染症拡大の影響でどのように会議運用が変化してきているのかを紹介した。後編ではテレワーク制度導入によって取引先企業との商談や出張を伴う会議などにどのような影響が及んでいるのか、その実態や課題を調査したので紹介していこう。
初めに、社内外を問わず現在開催される会議の中で、出張や移動が必要な会議があるかを聞いたところ「ある」は42.3%と約4割の企業で未だ移動を伴う会議が存在していることが分かった。この結果を2020年1月に実施した前回調査と比較したところ、わずか半年足らずで27.7ポイントも減少しており、これまで年々増加傾向であった「移動を伴う会議」に見直しがかかっている状況が見て取れた(図1)。緊急事態宣言や外出自粛による影響が、今回の調査でも数字として現れた形だ。
現在出張や移動を伴う会議が全くなくなったわけではない。だが、調査を実施した7月上旬の段階で出張や移動を伴う会議が「ある」と回答した方のうち、今後Web会議などの遠隔会議に切り替える計画の有無を聞くと「ある」が49.1%、「検討中」を含めると76.4%と過半数であった。この結果からも移動を伴う会議は今後もさらに減る傾向にあることが予測できる(図2)。
では、今後も遠隔会議に切り替える予定はないと回答した23.6%の企業はどうだろうか。
出張を伴う会議をWeb会議などの代替手段に切り替えない理由として多く挙がったのは、「対面で話す必要がある用件が多い」や「(オンライン会議ツールなどの代替策を)導入しても運用、管理する人材がいないため」といったものだ。
会社として対面でのコミュニケーションを重視していることで、導入を主導する部門や経営層も導入メリットを理解できず検討自体がされないといった企業も一定存在しているようだ。
2020年4月の緊急事態宣言の発出以降、社内外問わず自社の会議実施状況にどのような変化があったかをフリーコメントで聞いたところ3つの変化に大別できた。
1つ目は会議の回数が減ったり参加人数が減るなど、この機会にこれまでの会議の目的を見直したことにより生産性が向上したという変化だ。
「必要最低限の会議しか実施しないという会社の決定により、会議の目的が明確化された」「定例報告系の会議を廃止して効率化を図った」など会議形態を見直すケースが多く見られた。
また「会議の参加メンバーを減らした」「ソーシャルディスタンスを保つために、参加者を絞った」といった会議目的に合わせて参加者を柔軟に変更するなどの対策も見られた。会議室に入れる人数を制限するに当たり、参加者を合意形成に必要な最小人数に制限したケースでは、参加する会議が削減できた、と歓迎する意見が多かった。だが、残念ながらこうした企業では「全面的なテレワーク移行をきっかけにWeb会議に切り替えた結果、参加人数の制限が実質的になくなってしまい、元の人数に戻った」とする意見もあった。
2つ目はWeb会議やビデオ会議など遠隔会議への切り替えが一気に進んだという変化だ。「出張案件がWeb会議になった」「顧客や取引先企業への訪問を制約するケースが多く、Web会議で対応することにしている」「顧客そのものが、対面でなくWeb会議で打ち合わせをしましょうと提案して来ている」など社外関係者との打ち合わせや商談も、会社の方針や先方からの申し出などもあり遠隔会議に切り替わってきているようだ。当然社内の会議も同様で「Web会議に全面移行した」との回答が目立った。「拠点のシステム入れ替えに立ち会いなしでWebだけで対応したがやってみたら問題なかった」など、これまで遠隔会議との相性が悪いと見られていた業務についても「取り組んでみたら意外と問題がなかった」ケースがあるようだ。
出張が減った代わりに会議システムの接続環境が枯渇するケースもあったようだ。遠隔の事業所間をつなぐ会議などで本社と各拠点を会議システムで接続する運用に切り替えた企業では、会議システムの機材で会議室そのものが枯渇する状況が生まれたようだ。
「遠隔会議が増えた分、会議室が取りづらくなった」「会議室への出席人数を制限して『密』を回避。Web会議の活用が進んだことで、小規模会議室が枯渇した」など新たな課題も生まれているようだ。
従来、出張して現地会議室で打ち合わせしていたような業務が全てオンライン会議になれば、双方の事業拠点で会議システムや会議室が必要になることが考えられる。在宅で接続できるWeb会議システムで運用が可能な会議であれば自宅を活用すれば良いが、機密情報を取り扱う会議に当たっては通信環境やシステムの問題から、双方の拠点に相応の設備投資が必要になるだろう。場合によっては、従業員の椅子と机を従業員の自宅に貸与してでも、オフィスに会議スペースを増設しようという動きが出てくるかもしれない。
3つ目は会議の形を変えて運用しているケースで「会議形式でなくとも可能なものは資料連携とメールベースの質疑応答に変更した」に見られるように、書面やメールを使って意見交換や相互理解を深めていく方式に切り替えたチームもあった。他にも「発表会などは人数を制限し、基本的に自席からSkypeなどで参照」させることで“密”を避ける会議運用など、各社さまざまな工夫が見られる結果となった。
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