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経費精算システムの利用状況(2020年)/前編

経費精算システムの満足度を調査したところ、やや不満が増加。紙とシステムの中間運用の企業では申請タイミングが遅れやすい傾向や、在宅勤務になった結果、出社する必要に迫られるという不思議な状況も見えてきた。

» 2020年09月03日 06時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2020年8月10〜26日にわたり、「経費精算システムの利用状況」に関する調査を実施した。全回答者数66人のうち製造・生産部門が27.3%、情報システム部門が21.2%、営業・販売・営業企画部門が12.1%、経営者・経営企画部門が10.6%などと続く内訳であった。

 今回は経費精算の「方法」や「タイミング」、現状の経費精算手続きについての「満足度」や「システム選定時の重視ポイント」など、企業で日常的に発生する経費精算業務の実態を調査。その結果、経費精算システムの利用が65.2%と過半数である一方、申請書や領収書原本など紙文書を使った申請も併用する割合が50.0%存在していることなどが分かった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

システム利用は65.2%、Excel帳票の利用者は申請をまとめる傾向も

 はじめに企業での経費精算方法について聞いたところ「経費精算システムで申請し、領収書と併せて書類を提出する」45.5%、「経費精算システムで申請し、領収書のスキャンデータや画像データと原本の両方を提出する」19.7%、「所定の用紙に手書きで記入し、領収書と併せて申請する」16.7%などが上位に続いた(図1)。これらの結果を整理すると経費精算システムを利用した申請が65.2%と過半数である一方、申請書や領収書原本を含め一部でも紙文書を使った申請がされているケースも50.0%と半数存在していることになる。

 関連して次に経費精算を実施するタイミングを聞いたところ、全体の7割が「経費が発生したタイミング」と回答し、次いで「締め日近くにまとめて」が24.2%となった。この結果について前述の経費精算方法との関係性を見てみると、経費精算システムを利用するケースでは「経費が発生したタイミング」で申請する割合が高く、Excelや申請書類などへの記入や提出が絡むケースでは「締め日近くにまとめて」申請する割合が高い傾向が見て取れた。

図1  図1 経費精算方法

在宅勤務のために出勤? 「出社が前提のオペレーション」への不満が増加

 続いて、現在の経費精算手続きについての満足度を聞いたところ「とても満足」が4.5%、「まあ満足」が48.5%、「やや不満」が33.3%、「とても不満」が13.6%となり、まとめると全体で「満足」が53.0%、「不満」が46.9%と拮抗する結果となった(図2)。これを2019年7月に実施した同様の調査と比較したところ、満足度が10.2ポイント減少しており、反対に「とても不満」とする割合が5.1ポイント増加していた。今回はサンプル数が少なかったことから正確な比較は難しいが、不満の割合が高まっている可能性がある。

図2 図2 満足度

 そこで調査では主に「不満」と回答した方に、その理由を聞いた。すると、大規模かつ長期間の在宅勤務を想定しない運用ルールを変更できず、何とも不条理な作業を強いられる状況が明らかになった。

 具体的には「出張などの精算時は領収書が伴うので会社でしか処理ができない」や「11日以上の在宅勤務者は交通費支給が停止するルールになった。この場合は通勤費が都度精算となるが、手続きのために出勤が必要になった。システム自体の変更が必要な問題だ」「利用情報はweb入力ながら、原本保存のため、経費処理申請書を印刷して原本を貼付けて上長承認を得て提出する必要があったことから出社が避けられないため」といった出社を伴う経費精算に対しての不満が集中していた。特に2020年は新型コロナウイルス感染症の流行により、急いで在宅勤務やテレワークに対応せざるを得なかった企業も少なくない。そうした変化の中、実際の働き方と申請ワークフローが合っていないことで不便が生じ「営業職はクラウド上の精算システムだが、内勤は紙のままであるため」「オンライン申請は経費発生から精算まで3日しかなく、期間を過ぎると紙申請になる」などの部門格差や既存のルールに対しての不満が募ってしまったのだと予測される。

コスト? それともカスタマイズ性? コロナ影響でシステム選定条件に“変化”アリ

最後に、全体の約7割で利用されている経費精算システムの選定時の重視ポイントを上位1~3位まで聞いたところ、その合計割合が高い順に「導入コスト」や「運用コスト」「操作性の良さ」が上位に続いた。売上創出というより業務効率化に貢献するツールであるという性質上、コスト面や使い勝手、安定性などが重視される傾向にあるのは頷ける結果であろう。

 一方、2019年7月に行った同様の調査と比較すると「柔軟なフロー設計、カスタマイズ性」や「領収書を写真で保存できる」といった項目への回答が増加傾向にあった。特に後者については前年1~3位の合計が8.4%だったところから、今回は19.7%と2倍以上の伸びを示していた。この背景には、新型コロナウイルス蔓延により“出社”を前提に設計されていた申請ワークフローから脱却し、在宅やリモート環境から如何に“出社せず”に安全に抜け漏れなく経費申請を行わせるのか、対応を急ぐ企業の思惑が見て取れる。こうしたことからも、今後企業が経費精算システムに求める機能や選定時のポイントには変化が起こるものと見られ、今後の動向には注意が必要だ。

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