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Teams電話の仕組み、費用は? 大代表、部門代表電話を自宅で受ける方法を解説代表電話をアプリで受信

在宅勤務を標準とする企業が増える中、「会社の所在地に固定された電話とFAXを誰にお守りをさせるか」は各企業で大きな問題となっている。「出社できないので、全ての会社宛ての電話とFAX、部長の自宅に転送でいいですか?」とならないように、今からテレワークでの「電話」運用体制を整理しておこう。

» 2020年10月23日 06時00分 公開
[キーマンズネット]

 緊急事態宣言が発出され、多くの企業がテレワークへと移行した。事前にテレワーク環境を整備していなかった企業はドタバタで暫定的にテレワーク環境を整えたことだろう。今後は第二波、第三波に警戒しつつ、オフィスでなくても業務を遂行できる環境を整えていく必要がある。

会社(物理)の所在地に固定された電話とFAX、誰がお守りをするか

 従業員をテレワークに移行させる際に、問題になったのが「会社の電話とFAXをどうするか」だ。IT全盛の21世紀においても、いまだに顧客とのコミュニケーション接点として電話とFAXは重要な要素となっている。

 ただ、会社の電話とFAXはオフィスという場所に縛られたもののため、対応が問題になった。「会社の電話は留守番設定にして、既存の顧客には従業員個人の携帯電話番号を伝える」という方法を採った企業もあるだろう。FAXについては、従業員の誰かが持ち回りでオフィスに出社して処理するといったアナログな方法を取った企業もあるだろう。テレワークでも自宅から会社の電話の受発信ができ、FAXを自宅PCから送受信できたりするようになればテレワークはもっと効率がよくなる野ではないだろうか。

 実は会社の電話やFAXをテレワーク中の自宅などで利用する方法は幾つかあるが、本稿では「Microsoft Teams」(以下Teams)に一括して集約する方法を紹介していく。

Teamsは「03」「06」などの市外局番付きの番号の電話回線を使える

 Teamsは企業向けのチャットシステムと思われがちだが、実は非常に広範囲な機能を持つ「ワーキングハブサービス」ともいえる機能を持つ。例えば、オンライン会議機能や1対1の電話機能、ユーザーの予定表など、追加のアプリを導入することでさまざまな機能が追加できる。特に「Microsoft 365」の電子メール(「Exchanageサービス」)、クラウドストレージ(「OneDrive」)、オフィスウィート類との連携を前提とした設計になっていることから、それらを組み合わせて利用したときの利便性が高い。

 最近は、複数のサービスを連携して自動的にさまざまな業務処理を実行するRPA(Robotic Process Automation)機能、CRMで有名な「Salesforce」との連携、Microsoftのクラウドサービス「Azure」が持つ高度なAI(人工知能)機能との連携機能が提供されている。カスタムアプリを構築できるため、社内のデータベースや業務システムとの連携も可能だ。

01 Teamsは仕事のコミュニケーション ハブとしての機能も期待できるアプリケーションだ。ビジネスチャットだけでなく、Outlookの電子メールや予定表などとも連携しているため、Teamsを立ち上げておけば、仕事関連のコミュニケーションがまとめて管理できる。他のアプリケーションを立ち上げたり画面を切り替えたりといった煩雑な操作が不要だ

 Teamsには、標準でPCやスマートフォン(データ通信機能)を使ったIP電話機能がある。しかしIP電話はインターネット通話網だけに閉じたものなので、既存の03や06番号(0ABJ番号)などの電話との連携はできなかった。米国ではTeamsを使ったクラウドPBX機能などが提供されていたため、日本国内での提供も期待されていたが、通信キャリアとの連携や日本国内の法令の問題などがありなかなか実現しなかったという位事情もある。

02 Teamsの通話機能を使えばTeamsユーザーとのテレビ電話やオンライン会議も可能だ。実はTeamsの管理設定をしておけばSkypeユーザーとの通話も可能だ
03 Teamsのクラウド機能を利用すれば外線機能がなくてもTeamsユーザー間のボイスメール機能を標準で利用できる

 こうした状況を変えたのが2019年6月のソフトバンクと日本マイクロソフトの提携だ。両社の提携によってTeamsから通常の電話回線の通話を扱えるようになった。ソフトバンクはTeamsの電話機能を「UniTalk」という名称で提供している。UniTalkはソフトバンクの通信網とTeamsのクラウドサーバを接続するサービスで、03や06などの市外局番から始まる電話番号を使ってTeamsのユーザーと通話したり、Teamsのユーザーが会社の番号で外信をかけられるようになった。ソフトバンクの発表後、NTTドコモ、KDDI、NTTコミュニケーションズなども次々とTeamsでの電話機能のサポートを発表したため、通話サービスの選択肢は広い。

 今までもクラウドPBXを使ったIP電話システムは幾つか存在した。だがそれらは、既存の会社の電話番号が使えなかったり、電話番号がIP電話の050番号が割り当てられたりと、会社の代表電話にするにはやや問題がある仕様だった。

 またスマートフォンなどを支給してその電話番号を業務で利用する運用も考えられるが、何か問題が発生したときに特定の個人としか連絡がつかない点が問題となりやすい。業務の属人化につながりやすく、担当者が病気や事故、休暇などで連絡が付かなくなった際のリスクヘッジが難しくなる。退職した従業員の社給スマートフォンの再利用も問題になるだろう。

 こうした問題を考慮すれば、オフィスのように部署ごとの代表番号を割り当て、そこに電話を転送するような機能が必要だろう。さらにテレワークで都合が良いのが、Teams自体がクラウドサービスとして提供されるため、ユーザー企業が新たにハードウェア(IP-PBX用の交換機器)を導入したり、大容量インターネット回線を新規導入したりする必要がない点だ。これらについては、サービス提供元の日本マイクロソフトと通信キャリア側が品質を保証する。

代表番号の固定電話のために出社はいつまで必要? 固定電話の番号をTeams通話に持ち込むには

 ここからはTeamsのクラウドPBX機能を提供したNTTコミュニケーションズのサービスを例に、導入方法やコスト、運用方法などを紹介しいく。

 NTTコミュニケーションズはクラウドPBXとして「Arcstar IP Vocie」というクラウドIP-PBXサービスを展開している。しかし、今回Teamsで提供したIP-PBXサービスは、Arcstar Smart PBXとは全く異なるものだ。

 2019年9月にNTTコミュニケーションズが発表したTeamsの通話サービス「Direct Calling for Microsoft Teams」は、IP電話の電話番号が付与されるためTeamsのユーザーに割り当てられるのは「050」から始まるIP電話の番号だった。このため「03」や「06」といった市外局番で始まる番号を使用できない点が不満となっていた。そこで同社が2020年6月に新たに発表したのがDirect Calling for Microsoft TeamsをクラウドIP-PBXのArcstar IP Vocieサービスを連携させる追加サービスだ。このサービスを利用すれば03や06といった電話番号(PBXのダイレクトコール番号)にかかった電話を任意のTeamsアカウントに転送できるようになる。

05 「Direct Calling for Microsoft Teams」を使えば、社内のTeamsユーザーに050のIP電話の番号を付与する(出典:NTTコミュニケーションズ)

 ただし、このサービスを受けるにはオフィスの電話番号をNTTコミュニケーションズのArcstar IP Vocieサービスに移管してArcstar IP Vocieサービスの利用料金を支払う必要がある(Direct Calling for Microsoft Teamsは1アカウント当たり月額300円と通話料金が必要になる)。

06 Direct Calling for Microsoft TeamsとArcstar IP Vocieサービスを組み合わせれば、発信者通知でもオフィスで使っている電話番号利用できる(出典:NTTコミュニケーションズ)

 Teamsの場合、社内のオンライン会議や社内通話ではインターネットを利用するため、データ通信のコスト以外に通話料はかからない。さらにDirect Calling for Microsoft Teamsを利用した場合は、NTTコミュニケーションズの「Arcstar IP Vocieサービス」「050 Plus」「OCNドットフォン」「提携先プロバイダーのIP電話」などの通話料が無料となる。提携先以外のプロバイダーが提供するIP電話(有料通話先)や一般の加入電話(03や06などの電話)は3分間で8.8円(税込み)の通話料となる。携帯電話に関しても1分間で17.6円だ。国際電話に関してもNTTコミュニケーションズが各国に対して提供している通話料金で通話できる(Direct Calling for Microsoft Teamsは、110番、119番などの緊急通報用番号などに電話をかけられない。同様に一部のフリーダイヤルや有料ダイヤルが利用できない場合がある)。

 Teamsで電話を受けるには、Microsoft 365/Office 365で「Phone System」のライセンスを追加で購入する必要がある。Microsoft 365/Office 365のE5プランには、すでにPhone Systemのライセンスが入っているため、追加費用は通信会社が提供しているDirect Calling for Microsoft Teamsのサービス料金だけでいい。

 他のMicrosoft 365/Office 365ライセンスを利用している場合(特に中小企業向けのプランや大企業向けのE3など)は、追加でPhone Systemのライセンスを購入する必要がある。Phone Systemのライセンス費はユーザー数で決まる。Microsoft 365/Office 365のEnterpriseプラン(E1、E3)にPhone systemを追加するライセンスは1ユーザー当たり月額870円(税別)が必要だ。

 また、2020年4月には「Microsoft 365 Business Voice」というライセンスが発表されている。このライセンスは中小企業向けのMicrosoft 365にもPhone Systemを追加できるものだ(1ユーザー当たり月額870円、契約上限300ユーザー)。

10 Microsoft 365 E5プランには、Teamsの外線機能が入っている。その以外のプランは、Microsof 365 電話システムをオプションで購入する必要がある(出典:日本マイクロソフト)
09 Microsoft 365の電話システムは、Microsoft 365の管理機能から追加購入できる。ただし、ユーザー数が300ユーザーと限定的だ(出典:日本マイクロソフト)
08 Microsoft 365の電話システムは、中小企業向けのMicrosoft 365 Businessでも利用できる。さらに、限定的な機能を提供している Microsoft 365 F1プランなどでも利用できる(出典:日本マイクロソフト)

 NTTコミュニケーションズが提供するDirect Calling for Microsoft TeamsとMicrosoft 365/Office 365のMicrosoft 365 電話システムのライセンス料は1ユーザー当たり月額1170円、Teamsを含む大企業向けのMicrosoftt 365 E5プランは1ユーザー当たり月額6200円だ。コスト負担を考えると代表電話の窓口部門など、限定的な人数から運用を開始してもよいだろう。

 1ユーザーあたり月額1170円以上のコストはかかるが、オフィスのPBX機器などを整理したり、NTTの電話回線をTeamsのMicrosoft 365 電話システムに入れ替えたりすれば、トータルで見ればライセンスコストの負担増加分は吸収できるかもしれない。また、複数拠点を持つ会社にとっては支社間の電話をTeamsにすればIP電話を使うことになるため、社内通話のコストが無料になるため、これらの要素を勘案して導入可否を検討すると良いだろう。

いまログオンしているデバイスが「代表電話」に

 Direct Calling for Microsoft Teamsを使ってTeamsで電話が扱えるようになるメリットは、今までデスクやオフィスに縛られていた電話というコミュニケーションツールがマルチプレース/マルチデバイス化することだ。つまり、オフィスのデスクトップPCで仕事をしていれば、ログインしたTeamsに電話がかかり、自宅でテレワークをしていれば、自宅のノートPCに電話がかかるようになる。さらにTeamsはスマートフォン(iOSやAndroid)をサポートしているため、移動中でもスマートフォンのTeamsで電話を受けられる。ユーザーの状況に合わせて1つの電話番号をマルチデバイスで利用できるのだ。もちろんTeamsのMicrosoft 365 電話システムは、留守番電話機能、他のユーザーへの転送、複数のユーザーとのグループ通話など、多くのPBX機器が持つ機能もカバーする。

11 Microsoft 365 電話システムはPBXが持つ機能のほとんどをクラウドで実現する(出典:日本マイクロソフト)

レガシーといえるFAXもTeamsに統合

 電話と同じようにテレワークの障害として問題になっているのがFAXだ。電子メールやWebアプリが徐々に浸透してきたとはいえ、業種や業務によってはなかなかFAXを廃止できないものが残っている。FAX自体はオフィスに設置されるため、オフィスにFAXを送信しに行ったり、FAXで送られた文書を確認しに行くといったテレワーク中の業務が日本各地で発生して大きな問題となった。

 こうした問題を解消する方法の1つにインターネットFAXがある。FAX機能をインターネットFAXにまとめれば、オフィスに置いた機器のために移動する必要がなくなる。インターネットFAXの一つであるNTTコミュニケーションズの「BizFAXスマートキャスト」の場合を例に見ていこう。BizFAXスマートキャストの場合、FAX用の電話番号を同サービス移行することで、受信したFAXを特定のメールボックに送信したり、電子メールやWebから特定の宛先にFAXを送信でき仕組みだ。

26 FAXの受信はメールとして転送される。送信に関してはメールやWebからも実施できるが、便利なのは専用のプリンタドライバをインストールして、Microsoft WordやPDFなどアプリケーションから直接、BizFaxスマートキャストにデータを送り、FAXとして送信する方法だ(出典:NTTコミュニケーションズ)

 Teamsのプラグインとして提供されているワークフロー自動化ツール「Power Automation」(旧Flow)を使ってビジネスフローをくみ上げれば、BizFAXスマートキャストのメールボックスから、FAXをTeamsのチャンネルに投稿することもできる。さらに、RPA機能を使って、FAXの内容をテキスト認識して、FAXをビジネスフローに載せて処理することも可能になる。FAXを送信する場合もBizFAXスマートキャストに電子メールで送信するだけで、相手先にはFAXとして送信される。

 このように、電話もFAXもフレキシブル化、マルチプレース化していけば従業員はオフィスという1つの場所に縛られることがなくなる。すぐにオフィスがなくなるとは思わないが、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」の時代の働き方に対応できる業務環境を整えるには、場所に依存せずに業務ができることが一つの条件となるだろう。

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