Device as a Serviceは単なる「モノ」の提供ではない。つまりPC運用を「as a Service化」することで何がどう変わるのか。PCの“お守り”をしてきた情シスの役割はどう変化するのか。
本連載最終回となる本稿で解説するテーマはSTEP4「セルフサービス化」です。
第4回では、Device as a ServiceではPCをモノではなくユーザーを中心とした管理に変えることが必要で、それにはクラウドベースの運用管理基盤が必要だということを解説しました。これは、STEP4の前提とも言えます。連載第1回では、Device as a Serviceにとって重要なキーワードとして「ユーザーに直接」「継続的なアップデート」を挙げました。これを体現するのが今回説明するSTEP4の「セルフサービス化」です。
STEP3まで環境が整えば、あとはセキュリティポリシーを定義し、IDベースにするだけです。第4回(STEP3)でも説明しましたが、Device as a Serviceは、PCをIDベースで運用管理します。そのため、ゼロトラストセキュリティの採用が必要になります。IDにひも付けたデバイスの提供とIDベースのゼロトラストによるセキュリティの自動化で、PC運用は非常にシンプルなものとなるでしょう。
本連載を通してDevice as a Serviceについて解説しましたが、そもそも「as a Service」とは何でしょうか。いろいろな解説があると思いますが、筆者は「as a Service =サービス化」であり、常に運用され、使える状態を維持され続けることだと考えます。モノの提供の場合は、提供した時点でメーカーは責務を果たしたと言えます。もちろん製造物の責任はありますが、「設計通り動作するか」「保証期間内は壊れないか」といった程度の責任です。運用し、使える状態を維持し、活用して成果を出すのはユーザーの責任です。
これがサービス化されてサービス事業者によって常に使える状態が維持されれば、ユーザーは成果の創出に集中できます。「使える状態=ユーザーが成果を創出できる状態」であり、それを提供するのが「良いサービス」だと筆者は考えます。そしてモノを活用するための情報をユーザーに提供し、カスタマーサクセスに尽くします。これは、従来のサポートとは違います。ユーザーの体験をより向上させる取り組みです。
こうした良いサービスを提供するためには、「ユーザーダイレクト」の仕組みが欠かせません。Device as a Serviceにも同じことが言えます。サービス事業者側がPCを提供しても、それらをユーザー企業のIT担当者が運用、管理しなければならないのであれば「モノとして受け取っているだけ」です。IT管理者を介さずに、ユーザーへダイレクトに提供してこそ、企業はモノをサービスとして受け取ったことになり、IT管理者を一切の雑務から解放することを可能にします。なぜならば、「常に使える状態を維持する」ためには、アップデートを継続的に提供する必要があるからです。
モノは、経年劣化します。ソフトウェアも陳腐化します。あらゆるモノは、永久不滅に価値を発揮することはできません。常に使える状態を維持するためには、アップデートが欠かせません。しかし、この運用がIT管理者の負担になっています。
それを解決するのがユーザーダイレクトなのです。実は、これは実現がかなり難しいことです。モノを提供する事業者は、企業のIT管理者にモノを渡せば仕事が完了しました。その企業に従業員が1000人いようが、1万人いようがIT管理者は数人のはずです。事業者は、その人たちを相手にしていればよかったのです。しかし、ユーザーダイレクトとなれば、事業者側は1000人、1万人の従業員を相手にすることになります。当然、人手だけでは回りません。そこで、クラウドの登場です。
STEP3は、このための布石です。ユーザーダイレクトを実現するためには、クラウドベースに移行し、クラウドからサービスを受ける形態でなくてはならないのです。そのため、ユーザーダイレクトがキーワードであるDevice as a Serviceには、提供プラットフォームが必須となるのです。当社が提供を予定する「Cotoka Platform」もその一つです。
PCをユーザーへダイレクトにサービスとして提供し、自動的にアップデートされ続ける状態を提供できれば、ユーザーの手元には常に使える状態のデバイスがあり、管理者の仕事は「契約の維持」だけになります。
PCは最も基本的で重要なビジネスツールです。しかし、その運用はIT管理者の大きな負担であり、それ故にできるだけリプレースを避け、結果的にデバイスの利用期間が長期化するという企業もあります。1つのデバイスの長期利用にメリットはありません。ノートPCは、3年を経過すると故障率が上がるといいます。日本マイクロソフトの調査によると、同じPCを4年以上使い続けた場合、3年以下と比較すると故障率は3.4倍に跳ね上がり、機会損失などを含めたコスト負担は2.2倍にもなると言います。原価償却という“モノ視点”であれば、ある程度期間がたったモノはもうタダ同然のように見えるでしょうが、古いデバイスで低生産な仕事を強いられる従業員からしてみれば、たまったものではありません。
PCが自動的にアップデートされる環境であり、さらにデータレスPCのようにデータが常にクラウドにあれば、IT管理者は何の負担もありません。またサービス提供ベンダーから定期的にデバイスのリプレースを受けられれば、ビジネスに影響を与えずに、常に従業員は高い生産性を維持できます。データ移行などが必要ないため、ユーザーにも負担はかかりません。これがDevice as a Serviceなのです。
本連載はいかがでしたでしょうか。ウィズコロナ時代におけるPC運用の一つの在り方だと考えます。Device as a Serviceにより、IT管理者がPC運用に多大な時間を取られることはなくなります。ユーザーに直接、最新のデバイスが提供され、運用され、一定期間経てば故障率が上がる前にリプレースされる。デバイスの故障で従業員の仕事が止まることはありません。IT管理者は、ただ契約を管理するだけです。PCリプレースのための予算確保や計画の策定も必要ありません。「月額×ユーザー数」と計算するだけでいいのです。
筆者には、世の中にはまだ、STEP1、2止まりのサービスが多いように映りますが、当社のCotoka PlatformをベースとしたDevice as a ServiceのようにSTEP4まで提供しているサービスも一部では始まっています。コロナ禍により、時代の先行きを読むことがさらに困難になりました。Device as a Serviceは、環境変化に影響されないPC運用の手段の一つとして考えられるのではないでしょうか。
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