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営業仕事の「無駄時間」とは? 「誠意ある営業担当者像」にも変化【2020年調査結果】

ニューノーマル時代における営業活動の意識調査から「働く時間のうちムダだと感じる時間の割合」や「好ましい営業スタイル」が見えた。売り手は「対面で話す」ことを重視する一方で買い手には意識の変化が見られた。

» 2021年02月09日 10時50分 公開
[キーマンズネット]

 HubSpot Japanは2021年2月8日、日本の営業組織を対象とした意識・実態調査の結果を発表した。同調査は今回が2回目で、前回調査後の1年間で営業組織の状況にどのような変化があったかを明らかにした。先行き不透明なニューノーマル(新常態)時代における、法人営業のあり方のヒントを提供することを目的だとしている。

2019年と2020年で法人営業の「買い手」意識に変化、売り手の対応に差

 まず、HubSpot Japanがコロナ禍以前(2019年10月)に実施した1回目調査の結果を見ると、商品やサービスの買い手である経営者の70.6%が「営業担当者に自社を訪問してほしい」と考えていた。そう考える理由で回答が多かったのは「顔を見ずの商談には誠意を感じない」(35%)「営業担当者の顔を見ると安心感がある」(30.1%)で、同社は「明確な理由や合理性があるわけではなく、気持ちの面での理由が大きい」としていた。

2019年調査「営業担当者に自社を訪問してほしい」と考える理由(出典:HubSpot Japan)

 しかし、非訪問型営業を導入している組織としていない組織を対象に調査した商談成約率は、加重平均値で「非訪問型営業を導入している組織の成約率:39.6%」「非訪問型営業を導入していない組織の成約率:41.6%」と大きな差はなかった。同社はこれを「物理的な訪問で買い手に誠意や安心感を与えたとしても、それが成約率を大きく押し上げているわけではない」と述べた。

 今回の調査はコロナ禍(2020年12月3〜6日)において、ビジネスシーンでの「売り手」として経営者や役員515人と法人営業組織の責任者515人、法人営業担当者515人、買い手としては経営者や役員、会社員309人を対象に実施した。その結果から、売り手と買い手で「営業担当者の誠意」の意識に差が見えた。

 2020年調査で聞いた「訪問型営業とリモート営業のどちらが好ましいか」では、買い手で「リモート営業が好ましい」と回答した割合が38.5%だったのに対して、「訪問型営業が好ましい」は35.0%だった。前回調査(2019年12月)時は、それぞれ21.0%と53.7%だったので、この1年間でリモート営業を望む人が増えたことが分かる。

望ましい「営業スタイル」に変化(出典:HubSpot Japan)

 一方売り手では、前回から割合は低くなったものの、今回の調査でも訪問型の営業を好む人が多数派だった。具体的には、前回調査時が63.1%、今回が48.0%だった。「訪問型営業が好ましい」と回答した理由では、「訪問型営業の方が成約率が高いと思うから」と回答した割合が45.0%(複数回答)で最も高かった。次いで、「訪問しないと誠意が見せられないと思うから」で、36.1%だった。

 しかし、非訪問型営業を導入している組織としていない組織を対象に調査した商談成約率は、加重平均値で「非訪問型営業を導入している組織の成約率:42.2%」「非訪問型営業を導入していない組織の成約率:39.1%」だった。営業スタイルによって成約率に大きな差は出ないが、前回調査と異なって非訪問営業を導入している組織がわずかに成約率が高いという結果になった。

 買い手に「どのような営業担当者が買い手にとって誠意のある営業担当者であると思うか」を尋ねると、回答率が最も高かったのは「できないことを明確に伝えてくれる」(47.9%)だった。「足を運び、対面で話してくれる」は23.9%に過ぎなかった。

買い手にとっての「誠意ある営業担当者」とは(出典:HubSpot Japan)

 買い手に「営業担当者から自社への訪問の代わりにリモートでの打ち合わせを提案されたときに感じるマイナスの印象」を尋ねると、「特にマイナスの印象は抱かない」との回答が38.8%を占めた。マイナスの印象を抱く理由として多かったのは「ビデオ会議や電話での商談は不安」(27.2%)、「ビデオ会議などの事前セットアップが面倒である」(23.6%)などだった。

仕事中の「ムダ時間」で6650億円の損失

 HubSpot Japanは「働く時間のうちムダだと感じる時間の割合」も調べた。結果は、回答者全体の加重平均で働く時間の20.2%となった。同社によれば、これは年間6650億円に相当する。具体的に営業に関する業務の中でムダだと思うものを聞くと、「社内会議」(50.3%)や「社内報告業務」(39.3%)といった社内の情報共有に関する業務が上位に挙がった。これらの業務に対しては、「会議のための会議」や「似たような書類の複数入力」といった意見があった。

 今回の調査結果についてHubSpot Japanの共同事業責任者を務める伊佐裕也氏は、「日本の営業組織は2020年の1年間で働き方や営業手法の急速な変更を試みてきたものの、社内での情報共有に対する高いムダ意識やテレワーク環境での社内コミュニケーションに不満を持つ声が目立った。これは営業組織が顧客と対面する前段階として、情報管理やレポーティングなどの社内インフラ整備や、一体感のある組織づくりを推進する必要性を示唆している。また『好ましい営業スタイル』について買い手と売り手の意識ギャップが広がっていることに対しては、売り手が一層『買い手の現状に合わせた売り方』の探究に努め、ITの活用などを通じて顧客体験を日々細やかに調節していくことが重要だ」と述べている。

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