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「折り紙」がPC、スマホの性能を数千倍に爆上げするってどういうこと?:603rd Lap

さまざまな業界から期待が寄せられる素材が世界中で生まれている。その一つにPCやスマホの性能を数千倍にまで“爆上げ”する素材があるという。

» 2021年03月12日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 日々、世界中で数えきれないほどの新素材が開発され、それらは多方面から注目を集める。今、期待の新素材の一つに「グラフェン」がある。

 1991年に発見された「カーボンナノチューブ」に遅れること十数年、グラフェンは2004年に発見された。いずれもナノサイズの炭素物質であるが、カーボンナノチューブよりも応用性が高い。

 そんなグラフェンの可能性がまた一つ明らかになった。何でも、PCやスマートフォンの性能を数千倍にまで爆上げするという。しかも、キーワードが「折り紙」だというのだが、グラフェンと折り紙がどう関係するのか?

 まず、グラフェンについて説明しよう。そもそもグラフェンとは、炭素原子がハニカム(六角形)状態で共有結合した単原子シート状の物質を指す。原子1つ分の厚みなので、シートの厚さは1ナノメートル(10億分の1メートル)と極めて薄い。

 グラフェンは炭素原子同士の結合力が非常に強力で、単層状態ではダイヤモンドよりも硬く、引っ張る力に対しても圧倒的な強さを誇りながら、柔軟に折り曲げることもできる。また熱伝導および電気伝導も世界最良クラスの物質である。グラフェンが積層化したモノがグラファイト、いわゆる黒鉛だ。

 そうした特性を持つ素材であるため、発電・蓄電分野や再生エネルギー分野、医療分野、環境分野に宇宙工学分野など、多方面での応用が期待されている。そして今回注目されているのが、マイクロチップ製造分野における応用だ。

 グラフェンの新たな可能性について、2021年1月25日に英サセックス大学の研究チームが論文を発表し、幾つかのニュースサイトがそれを報じた。技術者向け情報サイト「IMechE」(Institution of Mechanical Engineers)に至っては、「Graphene ‘nano-origami’ could make smallest microchips ever」(グラフェンの「ナノ折り紙」によって、これまでで最小のマイクロチップを作ることができる)などというタイトルでこの件を報じた

 タイトルに「ナノ折り紙」とあるように、新技術のキモは、グラフェンのシートを“折り紙のように”折り畳むことにある。

 記事によれば、研究チームはグラフェンを折り畳んで独特の「ねじれ」を作り出すことで、トランジスタに似た電気特性を持たせることに成功したという。グラフェンのようなナノシート物質の構造を変化させることで電気特性の変化を生じさせることは知られていたが、その手法の一つが新たに判明した形だ。

 研究チームのアラン・ダルトン氏によれば、このねじれ構造を伴った「折り紙グラフェン」はマイクロチップ的な機能を持つという。そのサイズは従来のマイクロチップの100分の1ほどだ。ダルトン氏は「PCやスマートフォンに搭載するチップをより小型化、高速化できる。従来の半導体技術はすでに限界に達しているので、この技術は今後必須となるだろう」と話している。PCやスマートフォンの性能を、今の数千倍も高速化が可能だという。

 しかもこの折り紙グラフェンは、グラフェン以外の素材を必要とせず、室温下で加工が可能で、しかも無駄なエネルギーを必要としない。環境に優しい技術革新といえる。企業でのSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを阻害しない理想の新技術となると研究チームは主張する。

 ただ、技術として確立するまでにはまだまだ時間がかかるだろう。2021年には限界が訪れると予想されている「ムーアの法則」についても、グラフェンはその限界を突破する一手になると期待できる。早めの実用化に期待したいものだ。


上司X

上司X: 「グラフェン」がPCやスマホにさらなる革新をもたらすんじゃないか、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: おお、久しぶりに素材系の話は萌えますね。しかも「nano-origami」というのがまたいいじゃないですか。


上司X

上司X: グラフェンにトランジスタ的な機能を持たせられるということは知られていたのだけれど、高温にしたりガスが必要だったりとそこそこの手間がかかる手法だったんだ。


ブラックピット

ブラックピット: そこを“折り紙”で解決ですからね。しかし、どう折ったらいいんでしょう。


上司X

上司X: さあ、そこは分からん。そもそもシート状とはいえ、ナノレベルの物質なんだろうから、折り紙を買ってきて鶴を折るみたいにといった簡単な話ではないだろうな。


ブラックピット

ブラックピット: そりゃごもっともですけどね。


上司X

上司X: ともかく、行き詰まりつつあるムーアの法則がこれからも続く礎となるかもしれないというのだから、期待するしかないだろう。


ブラックピット

ブラックピット: 「なんとかしてムーアの法則を続けていこうじゃないか」というのもちょっと違う気もしますが。法則が崩れるときは崩れるでしょうし。あの「マーフィーの法則」もいつの間にか世間では忘れ去られましたし。


上司X

上司X: 「マーフィーの法則」は関係ないだろ。でも、ムーアの法則が終息を迎えないということは、半導体技術、ひいてはPC全体が発展し続けるということだから、法則維持に必死になるのは当然のことだろう。それにグラフェンが貢献するかもというのなら成功を祈るばかりだよ。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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