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リモートアクセス環境の整備状況(2021年)/後編

業務のリモート化が進む中で、リモート環境による働きにくさ、不便、不満の声も聞かれる。リモート環境下で業務を進める従業員はどういうところに、ストレスを感じているのか。アンケート回答から、3つの不満ポイントが見えてきた。

» 2021年05月27日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2021年4月16日〜5月7日にわたり「リモートアクセス環境の整備状況」に関するアンケート調査を実施した。調査結果から得られた回答を基に後編では、今利用しているリモート接続環境の「満足度」と「不満に感じるポイント」、リモート接続ツールの「リプレース予定」や「リプレース理由」などを紹介する。

 全回答者数267人のうち、情報システム部門が30.7%、製造・生産部門が15.4%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が15.3%、総務・人事部門が10.9%、経営者・経営企画部門が7.8%といった内訳であった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

今後リモート環境を整備予定が3割弱、その施策とは

 前編では、自宅やサテライトオフィスなど社外から社内環境にリモート接続する機会の有無や、社内環境への主なリモート接続手段、リモート接続時のセキュリティ被害経験の有無と被害内容について、アンケート回答を基に現状と傾向を解説した。

 業務におけるリモート接続機会の有無については、企業規模別に見るとばらつきがあり、従業員数100人以下の中小企業においては、状況を見ながらオフィス通勤とテレワークの切り替えを判断しながら業務を継続している様子がうかがえた。

 前編では業務のリモート化の状況を概観したが、後編では、リモート接続環境の不満と課題を掘り下げ、従業員がリモート環境に不満を感じる3つのポイントについて解説する。

 まず、前編で取り上げた質問項目において、業務でリモート接続する機会が「全くない」とした人を対象に、今後、リモートアクセス環境を整備する予定があるかどうかを尋ねた。その結果「予定はない」が63.3%で最も高く、「検討中」が20.4%、「予定がある」は6.1%にとどまった。

 2021年に入って緊急事態宣言の再発令や延長が繰り返される不安定な状況を受けてか、リモート接続機会が「全くない」としながらも、そのうちの3割弱がリモートアクセス環境の整備を予定、検討していると回答した(図1)。

図1 今後のリモートアクセス環境の整備予定(リモートワーク接続機会が「全くない」とした人を対象)(n=49)

 この項目に関連して「検討中」「予定がある」と回答した人に対して、具体的にどのようなツールを検討しているかを聞いたところ、「リモートデスクトップとSSL VPNとを検討中」「セキュアLTE」といった意見が挙がり、VDIなどと比較して短期間かつ低コストで実現できる施策が検討されやすい傾向にある。

リモート環境の不満は中堅〜大企業に集中? 3つの不満ポイント

 次に、現在リモート接続での業務機会がある人に対して、接続環境に対する満足度を尋ねた。

 その結果「満足している」19.7%、「やや満足している」28.9%で、これを合計すると48.6%がおおむね満足と感じているようだ。

 この結果を従業員規模別に見たものが図2だ。中小企業よりも中堅・大企業に属する人が「不満」を感じている傾向にあり、特に従業員規模5001人〜10000人の企業では「やや不満を感じる」が6割に上った。利用者数が増えれば接続が不安定になりやすいといった問題も起こりがちで、従業員数が多い企業ほど不満を感じる人の割合が高いのは、そうしたことも理由の一つとして考えられる。

図2 リモート接続環境の満足度(n=218)

 「やや不満を感じる」「不満を感じる」と回答した人たちが不満を感じるポイントはどこにあるのだろうか。寄せられた“不満ポイント”を整理すると、大きく3つに分類できる。

 1つ目は接続やレスポンスに関するもので、リモート接続環境における代表的な不満だ。「週初めや月末などの業務が集中するときに動作が重くなる」「18時を過ぎると通信速度、レスポンスが遅くなる」「画面転送方式のため,レスポンスに多少の遅延が生じる」などだ。中には「国内接続拠点の接続数が限界に達し、海外の接続拠点を経由しなければならない」といった悲痛の声もあった。

 2つ目はツールの使い勝手や、リモート接続環境での働きにくさだ。「リモートアクセス環境に制約があり、操作しにくい」「利用する都度、認証して接続するのが面倒」「画面のスクリーンショットが使えない」などが挙がった。

 3つ目は勤務先のセキュリティポリシーに関連する不満で、「当社ではリモート接続は、専用PCからの接続に限られているため、面倒くさい」「調達や経理システムなど、一部のシステムはリモートアクセスできないようになっている」「内部的な問題でアクセス制限がある」といった声が上がった。

 リモート接続は、緊急事態宣言の発令などオフィス外での業務を余儀なくされた場合に有用な業務遂行手段だが、勤務先のセキュリティポリシーのため社外からは接続できないシステムがあるなどといったことが、政府が要請する「出勤者7割減」を難しくさせている要因の一つなのかもしれない。

リプレース予定者に聞く、「理想のリモート環境」とは

 こうした不満の声が上がる中で、企業は改善につなげられているのだろうか。特に「使い勝手が悪い」といった不満はツールに起因するところもあり、従業員からこうした不満が多く寄せられれば、リモート接続ツールの見直しを検討する必要があるだろう。

 そこで、リモート接続ツールのリプレース予定はあるかどうかを尋ねたところ、「予定がある」としたのは5.0%にとどまり、43.1%が「予定はない」と回答した(図3)。

図3 リモート接続ツールのリプレース予定の有無(n=218)

 リプレースの予定があると回答した人に対して理由を聞いたところ、最も多いのが「使い勝手が悪いため」43.8%で、次いで「セキュリティ面に不安があるため」41.7%、「頻繁に接続が切れる/不安定になるため」33.3%と続いた(図4)。このポイントは、前項で説明した不満ポイントとも合致する。

図4 リモート接続ツールのリプレース理由(n=48)

 リプレースを予定していると回答した人に対して、どのようなツールやサービスを検討しているかを尋ねたところ、使い勝手の面では、「接続が簡単で快適に利用できるもの」「分かりやすいログイン認証」など従業員が戸惑わずに利用できるものが多く寄せられた。

 パフォーマンスやレスポンス面においては、「他のVPNサービスに切り替える」「社内ネットワーク機器のリプレース」などの対応策が上がった。他にも「WVD(Windows Virtual Desktop)ツールの活用」といったDaaS(Desktop as a Service)を用いた環境構築を検討している声も複数上がった。

 セキュリティ面では「ゼロトラストモデルのネットワークへの移行」「IDaaS(IDentity as a Service)と連携させる予定」など、ゼロトラストセキュリティへの移行を挙げる企業も少なくなかった。

 中堅〜大企業を中心に整備が進められてきたリモート接続環境だが、一部ではリモート接続機器のリプレースを検討する企業も見られ、使い勝手やレスポンス、セキュリティ面を意識した環境整備が進む傾向にあることが、今回の調査から見て取れた。今後はコストや導入のしやすさだけでなく、従業員満足度も考慮した環境整備が新たな課題となるだろう。

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