製薬企業の第一三共は、第4期中期経営計画(2016〜2020年度)で、事業の中核となる疾患領域を『循環器』から『がん』へとシフトする方針を掲げ、2025年に向けて製品の研究開発から販売までのバリューチェーン全体にわたる大きな転換を進めているところだ。
その中で、がん領域における高度かつ統合的なデータ分析の対応が重要な経営課題となっていた。また、分析部門においても、プログラマーの人材不足やデータの分散管理、データガバナンスなどデータ利活用に関するさまざまな課題を抱えていた。こうした課題を解決するためには、全社的なデータ分析基盤が必須になると同社は考えた。第一三共の上野哲広氏(DX推進本部 DX企画部 DX企画グループ長)が、全社データ分析基盤構築に着手した背景と構築までのプロセス、足かせとなった問題について語った。
新たなデータ分析基盤では、「社内外のさまざまなデータを効率的にデータレイクに統合、管理し、先進技術を用いて分析することで、顧客価値の最大化(製品開発の成功確率の向上と期間短縮、製品の安全性と品質の適切なコントロール、新たなLCM戦略など)に貢献する」ことを目指し、システム構想を練っていった。しかし、データ分析基盤の構築に当たって、プラットフォームのテクノロジーや分析技術、コンプライアンスに関して多種の課題に直面した。
まず、プラットフォームの評価と分析技術に関するPoC(概念実証)を、IT部門とデータサイエンス部門の協働で実施した。プラットフォームについては、技術要件やセキュリティ要件への適合性を複数製品に対して評価し、分析技術のPoCでは、ノンプログラミングツールによる臨床データの統合分析の実現可能性および効率性を検証した。
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