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SFA(営業支援システム)の利用状況(2021年)/後編

ビジネス環境においても厳しい情勢が続くが、そのような状況下でも何とかビジネスを回して前に進まなければならない。営業部門を支えるツールとしてSFA(営業支援システム)があるが、現場での導入、利活用はどこまで進んでいるのか。活用できてないのであれば何が問題か。

» 2021年07月29日 09時30分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは、営業部門のデジタル化の進捗(しんちょく)を探るために「SFA(営業支援システム)の利用状況」と題してアンケート調査(実施期間:2021年6月21日〜7月2日、有効回答数:87件)を実施した。

 後編となる本稿では、SFAを導入する主幹部門や勤務先でのSFAの活用状況と有効活用できていない理由、これからの時代に起こり得る営業課題について尋ねた結果を紹介する。非対面営業が困難になった今だからこそ、あらためて考えるべきポイントが見えてきた。

情報シス頼みの時代じゃない? 導入の裁量は営業部門に移行か

 前編ではSaaS型SFAを中心に、全体の導入率が5年で1.5倍に増加していることなどを紹介した。後編では、SFAを活用するにあたり気を付けたいポイントを紹介しよう。

 まずSFAを「導入済み」もしくは「検討中」と回答した人に対して、SFAを導入、検討する主幹部門はどこかと尋ねたところ、最多が「営業部門」で48.1%、「情報システム部門」が35.2%、「部署、部門を横断して決定する」が22.2%、「経営企画・財務部門」が16.7%、「社長・役員」が13.0%と続く結果だった。

図 SFAを導入、検討する主幹部門はどこか

 2016年5月に実施した前回の調査では「情報システム部門」が35.3%、「営業部門」が25.9%と、情報システム部門が中心だったが、状況は一変しているようだ。この背景には、前編でも触れた導入形態の変化があるとみられる。自社開発型やパッケージ型からSaaS型への移行、利用が進んだことで、利用主体である営業部門にサービス選定やIT予算の裁量も移管されるようになってきたのだろう。

3社に1社が「SFA活用できていない」 現場が抱える問題とは

 どのような導入形態にしろ、決して安くはない予算を投じてSFAを導入している企業は、コストに見合った成果を創出できているのだろうか。続いて、勤務先でのSFAの活用状況を深掘りして調査した。

 SFA導入済みと回答した人に対して、勤務先ではSFAを有効活用できているかどうかを尋ねたところ、「まぁ活用できている」(59.0%)、「あまり活用できていない」(30.8%)、「とても活用できている」(10.3%)となった。有効活用できているとした割合は、2016年の前回調査時から20ポイント近く上昇している。

 一方、「活用できていない」とした人に対しその理由をフリーコメント形式で理由を聞いたところ、「他システムとのデータ連携がないため、入力内容の重複が発生し、手間がかかる」「備忘録的な使い方しかできていない」や「システムが分断されており、統合的な運用ができていない」といった他システムとの連携ができていないがために、データの活用はおろか運用すらできていないといった課題が見えてきた。

 その他の回答として「アクセス制限が強固で、利用頻度が低い」「入力項目が最適化されておらず、顧客情報が整備されていない」なども挙がり、データを入力する現場に合わせた環境整備ができていないことが問題となっているようだ。

 なぜこうしたことが起こるのだろうか。「活動入力はしているが、それらのデータを分析されていない」などの声から推察するに、まずはデータを管理、分析する営業責任者や管理担当者がSFAの利用を通じてどのような営業課題を解決したいのかを明確にしておく必要があるだろう。

 自社にはどのような課題があり、どのような仮説を持っているのか。収集データによって、どのような改善策や打ち手の仮説検証を考えているのか。こうした点をしっかりと設計し、営業現場とも認識を合わせた上で実行しなければ、当初の目的と反し、データを入力することや管理することが目的となってしまい、有効活用とは程遠い結果となってしまうのではないだろうか。

コロナ禍で一変する営業課題、コミュニケーションの見直しが鍵

 ここまでは前回調査との比較からSFAの導入や活用の実態を見てきたが、この5年で企業活動や営業現場に一番の大きな影響を与えた事象としてCOVID-19の影響がある。そこで最後に、コロナ禍によって変えざるを得なくなった営業活動において、今後どのような点が営業課題となり得るかをフリーコメントで聞いた。

 最も多く寄せられた回答は「対面機会が減りコミュニケーションで新たな工夫が必要になる」といった意見だった。具体的には「来訪などではなく、顧客とのコミュニケーションをいかにして取るかが課題となるだろう」や「客先に訪問して雑談の中から仕事を探すことで商談発掘のキーになることもある」「電話やテレビ会議ではなかなか難しい。既存顧客の商談チャンスが減っていると感じる」「プレゼンの仕方を変える必要がある」など「対面での訪問や定期的な客先常駐による信頼獲得に代わる案件獲得方法を探す必要がある」との回答が目立った。

 また、このような課題から「全社レベルでの情報共有と分析」や「担当者間での情報共有の手段」といった情報共有の必要性をあらためて感じているとの声や「デジタルツールを使った営業活動への移行を早急に進める」と考える企業もあった。

 一方、営業活動をオンラインシフトするに当たり、対面営業で培ったノウハウをどう生かすかにも関心が寄せられているようで、「過去の営業財産を将来に生かすツールが必要だ」「若い人は慣れの問題で、世界が変わりつつあることを実感し変化していけるか、今まで培ってきたベテラン世代のノウハウの蓄積をどう引き出すかが問題」などがあった。

 こうした環境変化と変わりゆく営業課題がありながらも、SFAは利用率を伸ばし、活用企業も増やしてきた。この事実から言えることは、変化の激しい時代だからこそ営業課題を捉え続ける仕組みが重要であり、課題解決のための営業手法を柔軟に変えていく必要があるのではないかということだ。そのためにも、今後もSFAを活用した企業事例などを追っていきたいところだ。

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