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これから始める「Power Automate Desktop」 無償版と有償版の違い、習得ステップを解説

Power Automate Desktopを使い始めるに当たって、無償版と有償版の違いなど事前に知っておくべきこと、今までRPAに触れたことがないユーザーは何から始めればよいのかなどを解説する。

» 2021年08月23日 07時00分 公開
[吉村哲樹オフィスティーワイ]

 本特集は、Power Automate Desktopをこれから使いたいと考える読者に向けて、無償版/有償版でできること、できないことや、習得のためのステップ、注意したいガバナンスリスクについて解説する。

Power Automateと「Desktop版」の違い

 2021年3月、MicrosoftはRPA(Robotic Process Automation)ツール「Power Automate Desktop」の無償提供を開始した。本稿公開時点(2021年8月23日)では、Microsoftの配布サイトから無償版をダウンロードでき、「Windows 10」のHome/Pro/Enterpriseで利用できる。

 2021年3月に公開されたWindows 10 Insider Preview ビルド21337には、Power Automate Desktopが標準搭載されている。また「Windows 11」初のプレビュー版「Windows 11 Insider PreviewのBuild 22000.51」にもPower Automate Desktopが搭載され、「Windows 11」に標準搭載されるものとみられる。

 「Microsoft製のRPAツールが無料で利用できる」ということで大きな話題を呼んだが、Power Automate Desktop自体はもともと同社のプロセス自動化ツール「Power Automate」の一機能として有償で提供されていた。無償版の提供開始後も有償版は引き続き提供されているが、この両者の間には違いがある。

 Power Automateは、主にクラウドサービスやアプリケーション同士をAPI連携させる「クラウドフロー」によってプロセスの連携、自動化を実現するサービスだ。本来ならこのクラウドフローだけで全ての業務プロセスの自動化を実現できれば理想的なのだが、場合によってはAPIを公開していないレガシーシステムが使われていたり、ローカルマシンで稼働するデスクトップアプリケーションが業務プロセスの中で利用されていたりするケースもある。

 そのような場合はクラウドフローだけではプロセス全体の自動化が実現できないため、やむなくデスクトップ操作を自動化するRPAの機能、いわゆる「デスクトップフロー」を取り入れる必要があり、そのために登場したのがPower Automate Desktopだった。

 Microsoftが提唱する理想的なプロセス連携のシナリオにおいては、あくまでもPower Automateで実現するクラウドサービス、アプリケーション間連携が“主”であり、Power Automate Desktopが提供するデスクトップ操作の自動化、つまりRPAの機能は“従”と位置付けられる。

図1 Power Automate Desktopを用いた業務自動化の一例(出典:内田洋行 太田浩史氏作成の資料)

無償版と有償版の一番の違いはどこにある?

 Power Automateのクラウドフローとの連携機能は、実は有償版のPower Automate Desktopでのみ提供され、無償版のPower Automate Desktopでは提供されない。つまり無償版ではPower Automateで構築するプロセス連携の中にRPAの機能を組み込むことはできず、あくまでもデスクトップ操作の自動化を単独で実行できるだけだ。

 さらに言えば、Power AutomateのプロセスからPower Automate Desktopのプロセスを呼び出したり起動したりすることもできないため、プロセスを実行するたびに人手で起動しなければならない。無償版と有償版の機能差、および利用に必要なハードウェアの最低要件をまとめたものが図2だ。

図2 無償版と有償版の比較図(出典:内田洋行 太田浩史氏作成の資料)

 まとまった業務プロセスを完全自動実行するような用途において無償版は向いておらず、やはり有償版が必要になる。ただしRPAツールとしての機能は無償版も有償版も基本的に同じなので、ちょっとした定型作業を単発で自動化するような目的であれば無償版でも十分事足りるだろう。他のRPAベンダーで使われている用語を借りれば、無償版が「Attended Robot」、有償版が「Unattended Robot」に相当すると言える。

 なおPower Automate DesktopのRPAツールとしての基本機能は、他のRPAベンダーのものとそう大きな違いがあるわけではない。細かな機能や使い勝手の面ではもちろん差はあるものの、一般的なRPAツールと同じようにGUIの簡単な操作だけで定型業務を簡単に自動化して業務効率化を図ることができる。

 しかしPower Automate Desktopの最大の強みは何と言っても、Power Automateのクラウドフローと連携することで、これまで自動化できなかった業務プロセスも完全自動化できる点にある。

 申請業務の自動化の場合、メールの添付ファイルで送られてきたExcelの申請書を自動保存したり、申請内容の承認を承認者に依頼したりといったプロセスはPower Automateのクラウドフローで自動化できる。しかし「デスクトップでExcelを開いて申請書の内容を取得」「デスクトップの顧客管理アプリに情報を登録」といったプロセスの自動化は、Power Automateだけでは実現できない。

 そこでこれらデスクトップの作業をPower Automate Desktopのデスクトップフローとして自動化し、かつクラウドフローと連携実行させることで申請業務全体の完全自動化が可能になる。

図3 ある申請業務自動化のフロー(出典:内田洋行 太田浩史氏作成の資料)

Power Automate Desktopを使ったRPA習得のステップ

 Power Automate DesktopのUIや操作性は極めてシンプルで、一般的なRPAツールが備える基本機能は一通り網羅しているので、既に他のRPAツールを使ったことがあるユーザーであれば利用に当たって戸惑うことはあまりないだろう。

 一方、無償で手軽に利用できるということから、これまでRPAに触れたことがない初心者ユーザーが「初めてのRPA」として利用を始めるケースが今後増えてくるかもしれない。そのような場合は、まずは「デスクトップレコーダー」という機能を使って、デスクトップの操作を自動記録するところから始めることをお勧めする。

 デスクトップレコーダーを使ってユーザー操作を記録すると、一連の操作に対応したPower Automate Desktopの処理フローがツールで自動的に生成される。まずはこれらの処理フローの中身を一つ一つチェックしながら、実際に行った操作と処理フローとの対応を確認していき、徐々にツールに慣れていくのが第一歩だ。

図4 デスクトップレコーダーを使って操作を記録(出典:内田洋行 太田浩史氏作成の資料)

 徐々に慣れてきたら、次はデスクトップレコーダーで自動生成された処理の内容に自身で手を加えて、少しずつ思い通りの処理に近づけていく。さらにこれに慣れたら、今度はループ処理や条件分岐などのロジックを加えて、より本格的な自動処理の実装にチャレンジしてみる。

 一般的なプログラミングスキルを習得する際も、まずはサンプルコードの読解から始めて、次にそれに手を加えながらプログラムの動作に関する理解を深め、高度な処理の習得に進んでいく。Power Automate Desktopを使ってRPAを学んでいく際にも、同様のステップを踏むことでより効率的にスキルを習得できることだろう。

RPAが身近になることで持ち上がるガバナンスリスク

 無償で誰でも手軽に利用できるPower Automate Desktopは、RPAをビジネスユーザーにとってより身近なものにしてくれる半面、その手軽さ故に企業に新たなリスクを招き入れる恐れもある。

 かつて、業務部門のエンドユーザーが独自に開発したExcelやAccessのアプリケーションがブラックボックス化してしまい、業務継続のリスク要因となってしまう問題が多くの企業で発生した。Power Automate DesktopはWindows 10ユーザーであれば誰でも利用でき、ExcelやAccessと同じぐらいエンドユーザーにとってハードルが低いため、かつてと同じ問題がまた引き起こされる可能性は決して低くない。

 業務現場のさまざまなユーザーが無秩序に開発したRPAのロボットに業務が依存するようになると、それらを開発したユーザーが異動や退職で職場からいなくなった途端にロボットのメンテナンスや不具合対応ができなくなり、業務の継続性や透明性が大きく損なわれてしまう。

 それ以上に深刻なのが、ガバナンスのリスクだ。RPAのロボットはサーバにログインして作業を行うことも多く、もし不適切な設計や不具合によりサーバに過度な負荷を掛けてしまうと、業務に支障を来す可能性もある。あるいは、一般ユーザーによるアクセスが本来許されていない重要な情報資産に対してロボットが意図せずアクセスしてしまった場合は、セキュリティインシデントに発展してしまうことも考えられる。

 また、社外のサイトから商品やサービスの価格情報などを取得してExcelにまとめるような作業をRPAで自動化することはよくあるが、最近では自社のサイトに対するロボットのアクセスを禁止している企業も多い。そのため、業務部門のエンドユーザーがこうした事情を考慮せずにロボットを開発し、他社のサイトにアクセスさせてしまうと、他社の規約に抵触するばかりか、最悪の場合は訴訟沙汰にまで発展しかねない。

 こうしたリスクを回避するためには、IT部門が中心となってRPAにまつわるリスクを社内に十分周知させるとともに、何らかの方法を用いてRPA開発のガバナンスを効かせる必要があるだろう。特に今後Windows 10やWindows 11にPower Automate Desktopが標準搭載された際にはこうしたリスクが一気に高まる可能性があるため、今から有効な対策を検討しておくとより安心だろう。それには、ユーザー部門とIT部門が協力しながら利用を進めていく必要がある。

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