RPAと聞くと大きな期待を抱いてしまいがちだ。その期待が大きな理想を作り上げ、届かぬ夢で終わってしまう。RPAの成功軌道から転落せず、夢を現実のものとするにはどのような工夫が必要なのか。成功企業と失敗企業の後日談からコツを探る。
RPA(Robotic Process Automation)は、2020年には幻滅期の底を脱して普及期に移ったとされる。今後はAI(人工知能)などのテクノロジーを組み合わせた「ハイパーオートメーション」分野でのさらなる需要拡大が期待される。
本連載(全5回)では“RPA活用の現在地”を探るため、キーマンズネット編集部が実施したアンケート調査(2021年9月16日〜10月8日、有効回答数378件)を基に、RPAの導入状況と社内各部署への展開状況、問題点や得られた成果など、RPA活用の実態を分析する。
第4回となる本稿では、RPAの推進状況と、導入企業の声からRPA導入における“転落ポイント”を探る。
RPAは自動化対象を拡大させ、利用をスケールさせてこそ投資効果が得られる。それには、ロボット開発の内製化を進めて長期的にRPAを“育てる”ことが一つのポイントになる。その過程で課題に挙がりがちなのが、「ヒト」と「カネ」の問題だ。
「ヒト」はRPA人材だ。RPAはユーザー部門でも比較的扱いやすいツールとされているが、自動化対象業務の選定やシナリオ設計から始まり、開発には最低限のプログラミング知識が求められる。これらのノウハウを持つ人材の確保は、RPA運用における代表的な課題として挙がる。自社で人材を確保できなければSIerなどに頼ることになるが、そこで生じるのが「カネ」の問題だ。
こうした点を踏まえて、ロボット開発内製化の状況を探るために、RPA導入企業または検討企業に対して「パートナー企業にコンサルティングやシナリオ開発などを依頼しているかどうか(その予定があるか)」について尋ねたところ、「いいえ」(58.7%)、「はい」(19.6%)となり、回答者の半数以上が自力でRPA運用を推し進めようとする姿が見て取れた(図1)。
こうしたRPAプロジェクトをけん引する主幹部門については、「情報システム部門」(51.9%)、「利用部門」(30.6%)、「RPA推進部門」(22.8%)と続いた(図2)。近ごろは、スピーディーに現場課題を解決しようとユーザー部門の従業員が中心となって開発を行う「市民開発」に目を見けられつつあるが、RPAに関してはまだ情報システム部門に頼るところが大きいのだろう。
RPAの運用状況に視点を当て調査結果を振り返ったが、ここからはRPAを導入して成果が得られたかどうか、また成果を上げている企業とそうでない企業の違いについて探る。
まず、RPA導入しているとした回答を対象に、「期待通りの成果を上げられているかどうか」を聞いたところ、「おおむね想定通りの成果を上げている」(71.8%)と7割が一定の効果を得られいると回答し、「想定をやや下回る結果だった」(18.4%)、「想定を大幅に下回る結果だった」(3.9%)とした人は合わせて3割に満たなかった(図3)。
効果を得られた企業とそうでない企業では、取り組みや成果にどのような違いがあるのだろうか。回答者に対して「効果を得られた理由」「効果を得られなかった理由」を聞いたところ、以下のコメントが寄せられた。
これらの声から考えると、導入後の運用シナリオも含めた全体像を事前に設計できているかどうかが肝となるようだ。RPAで期待通りの成果を得るためには、導入前から開発、運用、拡大と、各フェーズで指針を決め、情報システム部門に加えてユーザー部門も巻き込みながら、青写真を描くことがRPA導入の成否を分ける一つのポイントと言える。
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