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自治体特有の“DXの障壁”とは 民間企業との比較から見える突破の糸口

自治体がDXを推進する際、民間企業に比べて特有の障壁が存在するという。その障壁とは何か。そして、克服するために必要なこととは。シー・システムの田方氏がそのヒントを語った。

» 2022年01月26日 07時00分 公開
[元廣妙子キーマンズネット]

 コロナ禍や頻発する自然災害に伴う事務手続きにより、自治体職員の負担が増加している。突発で大量の事務作業を処理する手段として注目を集めるのが、AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)などのデジタル技術だ。

 2021年10月21日に開催されたRPA総研主催のイベント「オンラインイベントリレー 2021 AUTUMN」に、シー・システムの田方和郎氏(システム開発事業部 SE・チーフエンジニア)が登壇し、“自治体DXを阻む課題”と“自治体DXを推進するヒント”を語った。

行政サービスでAIやRPAが期待される役割

 2020年12月に「デジタル・ガバメント実行計画」が閣議決定され、総務省は「自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)推進計画」を策定した。

 「自治体DX推進計画」では、「自治体の情報システムの標準化・共通化」「マイナンバーカードの普及促進」「自治体の行政手続きのオンライン化」「自治体のAI・RPAの利用促進」「テレワークの推進」「セキュリティ対策の徹底」が重要項目として挙げられる。

 少子高齢化社会で税収や自治体職員数が減るとされ、行政サービスの質を保つのが難しいと予想される。限られた経営資源の中で、持続可能な行政サービスの提供を支援することを、AIやRPAは期待される。

 「職員が人にしかできない作業に集中するため、人の代わりに単純作業をするAIやRPAは、今後必要になると考えています」(田方氏)

デジタル技術を導入する課題とは

 田方氏はデジタル技術導入の経験から、「自治体にAIやRPAを導入する際に事前に検討すべき課題がある」と指摘し、「民間企業と自治体に見られる課題」と「自治体特有の課題」に分けて紹介した。

民間企業と自治体両方に見られる課題

 民間と自治体関係なく見られる課題として、「デジタル技術への先入観と抵抗」「RPA開発時の完璧主義」などが挙げられた。

 前者は情報システム部門が現場を逐一サポートする、または現場に任せつつ必要に応じてサポートするという方法で解決できる。後者は全ての作業をロボットで自動化せず、人のアシスタントとして定型パターンの処理を任せ、複雑な判断が必要な場面は人が処理するという人とロボットの分業で解決できる。

 以降で、自治体特有のAIやRPA導入の障壁や、その課題を克服するヒントや具体的な方法を紹介する。

自治体特有の課題

 自治体特有の課題として、「RPA導入時の製品選定」「閉鎖的なネットワーク」「膨大な量の手書き帳票」「持ち出し禁止のマイナンバー」などが挙がった。

 自治体でRPAを導入する際、コストなどの理由からRDA(Robotic Desktop Automation)が採用されるが、横展開でツールを乗り換える可能性がある。田方氏によると、開発済みの数十体のロボットを新しいツールに合わせて開発し直す自治体がある一方、負担の大きさに耐え切れずにツールの移行を断念した自治体もある。RDAツールは導入のハードルが低いが、横展開時に身動きが取れない可能性も意識するべきとのことだ。

 自治体のネットワークは三層分離で、インターネット接続系ネットワーク、業務用のLGWAN系ネットワーク、個人情報などを扱うマイナンバー利用事務系ネットワークの3つに分けられる。外部との接続が難しく、ロボットの開発支援やシステムサポートは原則的に現地訪問が必要だ。各種システムはオンプレミス環境で動き、サーバなど追加設備が必要な可能性が高い。

 自治体特有の課題として特に挙げられるのは、膨大な量の手書き帳票の対応だ。帳票の様式が多種多様な上、処理の間違いが許されず、帳票によっては発行される繁忙期があるなど課題が多い。

 「自治体DX推進計画」の重点的な取組事項としてマイナンバー活用が挙げられるが、一般的なクラウドAI-OCRはセキュリティ上使用できない。LGWAN系ネットワークでの利用が可能ならLGWAN-ASPサービスを使えるが、その場合も12桁のマイナンバーを3つに分割しシャッフルして送信する必要がある。帳票は読み取るがマイナンバーは読み取らず後から手入力するなどの運用上の工夫が必要になる。LGWAN-ASPサービスも利用できない場合はオンプレミス型のAI-OCRが候補になるが、製品や動作環境が高価で現実的ではない。

オンプレミスで利用でき、PC上で動作するAI-OCRの活用

 田方氏は、自治体特有の課題を克服するためのAI-OCR製品「AI JIMY OCR」を紹介した。「AI JIMY OCR」は2021年7月に提供開始し、オンプレミスで使用できPC上で動作する、エッジコンピューティングのAI技術を用いた次世代AI-OCRだ。自治体のLGWAN系ネットワークのように外部と接続できない閉鎖的な環境で利用でき、機密書類をセキュアに処理できる点が注目を集める。

 「AI JIMY OCR」は端末1台で動作するスタンドアロン型のAI-OCRで、PC1台で設定ができるためサーバ環境が必要がなく、バージョンを更新すると文字認識精度が向上する。操作画面の見やすさや操作の容易さ、自動で帳票の位置ずれを補正する機能や文字認識後の一括修正機能などが特徴で、従量課金制ではなく定額制を採用している。「AI JIMY OCR」はMicrosoft Storeで無料公開され、インターネット環境のあるWindows 10ユーザーであればすぐに利用できる。

 「従来のオンプレミス型のAI-OCRを動かすには強力なサーバが必要で、『PC上で動作するAI-OCRがあれば』という思いがありました。『AI JIMY OCR』は可能な限りシンプルな設計でPC上での動作が可能です。何といっても導入のしやすさが強みですね」と語る田方氏。

 すでに官公庁での利用計画が進んでいる「AI JIMY OCR」は、自治体DXを推進するきっかけになるだろうか。今後の動向に注目したい。

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