IDC Japanが発表した最新の国内情報セキュリティソフトウェア市場予測では、SaaS型製品の高い成長率が明らかとなった。その背景にはデータセキュリティやデータガバナンスの確保といった企業の社会的責任もあるようだ。
IDC Japan(以下、IDC)は2022年2月9日、最新の国内情報セキュリティソフトウェア市場予測を発表した。IDCでは、国内情報セキュリティソフトウェア市場を、「アイデンティティー/デジタルトラストソフトウェア」「エンドポイントセキュリティソフトウェア」「ネットワークセキュリティソフトウェア」「サイバーセキュリティ分析/インテリジェンス/レスポンス/オーケストレーション(CAIRO)」「その他のセキュリティソフトウェア」のソフトウェア群に分類して市場定義している。
IDCによると、2021年上半期の国内情報セキュリティソフトウェア市場は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によってテレワークシフトとデジタルシフトが進み、従業員が利用するクライアント端末へのマルウェア感染や企業システムへのセキュリティ侵害などのリスクに対する警戒感が強まった。また、インターネットを経由して企業システムやクラウドサービスへのアクセスが増加し、エンドポイントセキュリティやID管理の厳格化によってアクセスコントロールを実現するアイデンティティー/デジタルトラストへのニーズが急速に高まっているという。
このような需要の高まりの結果、IDCは2021年の同市場は前年比成長率14.8%の3585億3800万円になると予測する。特にアイデンティティー/デジタルトラストソフトウェア市場は前年比成長率19.6%で、エンドポイントセキュリティソフトウェアは同15.9%と、2020年の前年比成長率を上回る成長を遂げると予測される。
また、COVID-19の影響で、企業が自宅やサテライトオフィス、リモートサイトからの業務遂行を進めたことで、SaaS型製品への需要も高まっている。テレワークではVPNを経由した社内システムへの接続や、インターネット経由での社内システム接続の際、ID確認に二要素認証などを利用してセキュリティを確保していた。しかし、VPN機器の脆弱(ぜいじゃく)性を狙った攻撃によってVPNを突破される事例や、二要素認証までも突破される事例も発生し、インターネット経由での社内システム接続による侵害リスクが拡大している。
さらに現在の企業システム環境は複雑になっており、複数のクラウド環境に対するセキュリティ対策が求められ、リスク軽減対策としてSaaS型情報セキュリティソフトウェアの需要が高まる。IDCでは同市場は2021年には前年比成長率21.4%、2236億8800万円になると予測している。
IDCは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)進展によるデジタルシフトや、COVID-19後のハイブリッドワークの拡大などが後押しし、国内情報セキュリティソフトウェア市場の拡大は今後も継続するという。2020〜2025年のCAGR(Compound Average Growth Rate:年間平均成長率)は10.5%となり、2025年の市場規模は5138億6000万円になると予測する。またSaaS型情報セキュリティソフトウェア市場はCAGR14.4%の高い成長率となると予測される。
IDC Japanのグループディレクターの眞鍋 敬氏は「企業はステークホルダーからデータドリブンな経営を求められている。データセキュリティやデータガバナンスの確保は、企業の社会的責任となっており、ITサプライヤーはユーザー企業に対して、アプリケーション保護、機械学習を応用したリスクアセスメント/セキュリティ侵害検知の迅速化の訴求が重要なトレンドとなる」と述べる。
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