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» 2022年06月22日 07時00分 公開

凸版印刷「紙からデータへ」 紙産業「斜陽」時代の事業変革とリスキリング事例

印刷産業の市場規模はピーク時の6割に減少し、今後も縮小が見込まれる。その中で「大蔵省発ベンチャー」だった凸版印刷が「印刷業」から「データビジネス業」への変化に取り組んでいる。イノベーションの中核を担うのは既存の人材を対象としたリスキリングだ。

[福永理美,キーマンズネット]

 ビジネスのデジタル化を進めるに当たって、業界のドメイン知識や社内事情に精通したデジタル人材の需要が高まっている。社内人材のデジタルスキルを向上させる「リスキリング」が注目されるが、リスキリングやデジタル人材の育成そのものが目的化してしまうと、ビジネスゴールと乖離(かいり)して本来必要だったはずの効果が得られない。

 2022年5月25日に開催された「AWS Summit 2022」で登壇した凸版印刷の柴谷浩毅氏(執行役員DXデザイン事業本部長 ※講演時)が「リスキリングに関する市場動向と成功事例」と題したセミナーの中で「企業変革なくして、リスキリングなし」と語り、同社の取り組みと事業変革の経緯を語った。

リスキリングの定義と難しさ

 リスキリングには明確な定義がある。日本においては経済産業省が「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」で述べた「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」がそれだ。アマゾン社内でもリスキリングの取り組みは進められており、物流業務の従業員を対象としたITサポートスキルのプログラム「アソシエイトツーテック」や非IT職の従業員を対象としたソフトウェア開発スキルのプログラム「アマゾンテクニカルアカデミー」などがある。同社が「業務の中でスキルアップできる会社」として注目されるゆえんだ。

 国内企業でもリスキリングの需要は高い。一方で、リスキリングが目的化してビジネスゴールと乖離(かいり)してしまったり、人事部への丸投げなどで全社的な体制ができなかったり、リスキリングの効果を測定できずに「学んだだけ」で終わってしまったりといった課題から、本来の目的であった「自社のビジネス知識を持つ人材によるビジネス変革」を達成するのが難しくなりがちだという。凸版印刷はこれらの課題に「ビジネス部門の経営層による、リスキリングへの深い関与」で対応した。

紙メディア苦境時代に挑む「大蔵省発」の老舗

 凸版印刷は2022年に創業122年を迎える老舗の総合印刷企業だ。もともとは大蔵省印刷局にいた技術者がスピンアウトして立ち上げたベンチャー企業で、現在は印刷テクノロジーをベースとした情報やエレクトロニクス事業を展開する。

印刷市場の縮小が続く(出典:「AWS Summit 2022」での柴谷氏の講演資料)

 同社は前述の通り印刷業をルーツとするが、紙媒体の市場は1991年をピークに減少が続く。経済産業省が発表した調査結果によれば、2019年時点で印刷産業の出荷額はピーク時の6割程度だ。今後も続落が見込まれるため、同社は事業を大幅に見直す必要に迫られた。

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