キーマンズネットは「経費精算システムの利用状況」に関する調査を実施した。前編となる本稿では、経費申請時の「領収書の形態」や「精算方法」「電子帳簿保存法への対応状況」などを紹介する。
キーマンズネットは2022年9月2〜16日にわたり「経費精算システムの利用状況」に関する調査を実施した。
前編となる本稿では、経費申請時の「領収書の形態」や「精算方法」「電子帳簿保存法への対応状況」を紹介する。企業の電子帳簿保存法への対応状況や“対応できない理由”が見えてきた。
まず、「自社の経費申請方法」について聞いたところ「クラウドの経費精算システムで申請する」(31.3%)、「自社で開発した経費精算システムで申請する」(20.2%)、「オンプレミスの経費精算システムで申請する」(14.9%)と、約7割が経費精算システムを利用していることが分かった(図1)。
2021年7月の前回調査と比較すると、自社開発システムの利用が43.8%から23.6ポイント減と半減している代わりに、クラウド形態での利用が4.8ポイント増加した。
2022年1月施行の改正電子帳簿保存法で電子保存が推進されたことや、受領した領収書や請求書が電子データか紙形式かで対応が変わるなど、システム要件が複雑化した。その影響か、法改正に対応済みのクラウドサービスを利用したほうがコストパフォーマンスが良いとの判断があった可能性がある。
経費申請時の領収書の形態は「領収書の原本のみを提出している」(35.1%)が最も多く、次いで「領収書の原本と電子データの両方を提出している」(29.8%)、「電子データのみを提出している」(17.3%)と続く(図2)。
全体の約6割が電子データの領収書で経費申請をしている。飲食店やフードデリバリーなどでも電子決済が普及したことで、領収書もデータで受領するケースが増えた。こうした環境変化も少なからず影響を与えていると予想される。
次に、「どのような方法で経費申請しているのか」を調査したところ「出勤して手続きしている」(58.2%)と「普段は在宅勤務だが、精算手続きがある時は出社して手続きをしている」(11.5%)を合わせ、69.7%が「出社を伴う経費申請」をしていることが分かった(図3)。
2021年の前回調査に比べて「自宅」が10.8ポイント減少する代わりに「出勤」が14.8ポイント増加しており、コロナウイルスの世界的流行による混乱が少しづつ通常に戻りつつあるのが分かる。
「コロナ禍で申請手続きに変化があったかどうか」を聞いた設問でも「変化なし」が63.9%と最も多く、関心は「電子帳簿保存法への対応および、対応の検討」(17.3%)に向いているのが分かる(図4)。
2022年1月施行の改正電子帳簿保存法では、帳簿類の保存における大幅な規制緩和が定める代わりに罰則も強化している。2022年の対応が難しい企業は2年間の宥恕(ゆうじょ)措置が設けられたものの、帳簿書類や電子取引の電子化(磁気的記録)の義務化は避けられない。
電子帳簿保存法に対応している企業は多くはない。調査の結果「対応済み」の企業は全体の34.1%にとどまり、2021年の調査に比べて5.3ポイント増加した程度だった(図5)。
対応方法は「電子帳簿保存法に対応したクラウド経費精算システムの導入」(46.9%)が最多で、次いで「導入済みの経費精算システムの追加開発」(23.4%)、「電子帳簿保存法に対応したオンプレミスの経費精算システムの導入」(17.2%)と続く(図6)。
注目なのは、「対応済み」に次ぐ2位に「対応は未定である」(32.2%)が挙がっている点だ。前回調査時の24.3%からも7.9ポイント増と伸び幅も大きく、前年と比較しても企業側の対応に対する温度感が下がった様子が見て取れる。
対応は未定であると回答した人にフリーコメントで理由を聞いたところ、大きく3つの課題が見えてきた。1つ目は「予算が取れないため」「人的余裕がない」「導入・保守工数が無い」といった、予算の優先順位が他事項と比べて低いため着手できないという声だ。
2つ目は「上層部の理解不足」や「会社としての判断が示されていない」「経営者次第」など、予算決定と執行権を持つ上層部の理解不足や方針の曖昧さが挙げられた。
3つ目は、「電子帳簿法の改定内容がよく分からない」「法改正自体よく分かっていないため」などにみられる、電子帳簿保存法への理解の薄さが挙げられた。
前項で触れたように、対応が難しい企業は2024年12月までの宥恕措置が設けられている。しかし、改正電子帳簿保存法に対応するためにはワークフローを見直し環境を整備するなど準備期間が必要だ。対応すべき内容を認知・理解できていない人は早期のキャッチアップが必要だろう。
なお全回答者数208人のうち、情報システム部門が29.3%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が16.3%、製造・生産部門が15.4%、経営者・経営企画部門が8.6%などと続く内訳であった。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
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