地下室で偶然見つけたガラクタにPC愛好家たちは大歓喜：688th Lap

ある家の地下室から大きな机のようなものが発見された。見つけた本人もその価値が分からず、ソーシャルサイトで尋ねてみたところ……。

[キーマンズネット]

　自分にとってはガラクタでしかないモノが、他の人にとってはとてつもない宝物だということはままあることだ。

　あるニュースサイトで、家の地下室から“古代の遺物”ともいえるものが発見されたと報じられ、PC愛好家たちは大歓喜した。彼らはなぜ、そんなに興奮したのだろうか？

　発端は、ソーシャルニュースサイトRedditにユーザーのc-wizz氏がある投稿をしたことだった。それを見たTech系ニュースサイトのarsTECHNICAはすぐさまそれを取り上げ、2022年11月9日の記事でc-wizz氏の投稿内容を紹介した。

　記事によると、ドイツに住むc-wizz氏が祖父母の家を訪れ、その地下室で眠っていた往年のPC「LGP-30」と「PDP-8/e」を発見したという。c-wizz氏にとってはそれほどのこととは思えなかったようで、軽い気持ちでRedditにそのことを投稿したようだ。すると、PC愛好家たちが一斉に反応し、大きな話題となった。

　PDP-8/eとは、1965年に発売され商業的に成功を収めた12ビットPCとされている。発売当時は5万台を売り上げた。PC愛好家たちが注目したのは、LGP-30の方だった。

　LGP-30は、1954年にカリフォルニア工科大学のスタン・フランケル氏によって開発されたPCで、製品名の「LGP」は「Librascope General Purpose 30」の頭文字をとったものだ。当時の小売価格は4万7000ドルだった。現在の物価で換算すると約51万2000ドルと、なかなか高価なものだ。

　サイズは33×44×26インチ（約84×約112×約66センチ）と、ちょうど小さな机ぐらいの大きさだろう。重量は800ポンド（約360kg）。発売当時は“小型なPC”の部類だったという。内部には真空管が113本とダイオードが1450個内蔵され、搭載された磁気ドラムメモリの記憶容量は4069ワードだったそうだ。なお、4969ワードは今でいうところの15.8kB（キロバイト）に相当する。

　LGP-30はわずか45台しか製造されず、お世辞にもPDP-8/eのような“ヒット機”ではない。では、なぜそこまで愛好家たちが注目したのかと言えば、LGP-30を使った「伝説的なプログラマー」の存在が大きいという。

　その伝説のプログラマーとは、メルヴィン・ケイ氏（通称、メル）だ。メルはスゴ腕のハッカーだったという。悪さをするハッカーではなく、とにかくプログラマーとして優れた腕の持ち主、という意味でのハッカーだ。

　メルはLGP-30で動いていたブラックジャックのソフトを他のPCへ移植するに当たって、常人には到底思い付かないような天才的かつ独創的なプログラムを書いた。『メルの物語』の著者であり、当該プログラムのデバッガーだったエド・ナサー氏は、その技術に舌を巻き、デバッグを途中で辞めたほどだったという。

　他にも、LGP-30を使った人物として、エドワード・ローレンツ氏の名が挙がる。ローレンツ氏は、有名なバタフライ理論とカオス理論の検証にLGP-30を使ったという。これらのことをRedditユーザーの有志がc-wizz氏に伝えたことでc-wizz氏もその価値を認識した。

　いつ、どこで、そのようなお宝にめぐりあうかは分からない。しかし、お宝がガラクタ扱いされ、歴史の闇に埋もれてしまうのは悲しいことだ。何かを発見した時は、c-wizz氏のようにまず周囲に尋ねてみた方がいいかもしれない。

上司X：　おじいちゃんとおばあちゃん家の地下室から、トンデモないお宝PCが見つかった、という話だよ。

ブラックピット：　へえ、そんなに価値のあるPCなんですねえ。

上司X：　ずいぶん素っ気ないけど、価値はかなりのものだよ。

ブラックピット：　まあ、そもそも作られた数が少なくて、それを使った人が伝説的なハッカーだった、ということによる「価値」ですもんね。

上司X：　うん。まあそうだけどさ。それを伝えたPC愛好家たちもすごいじゃないか。もしかしたら博物館に新しいLGP-30が追加されるかもしれないよ。

ブラックピット：　確かに、周りに聞いてみるのは正しい行動かもしれませんよね。今みたいに皆がつながっている時代だと特に。

上司X：　ああ。知らなかったら「なんだこの古い箱」とLGP-30がごみ扱いされていた可能性もある。

ブラックピット：　ですよね。まったく運がいいことです。いや、Redditに投稿しなければ、誰にも注目されないままだったかもしれませんよね。

上司X：　ま、そういうことだ。俺たちも今後なにか「これって……？」みたいなモノを祖父母の家の地下室で見つけたら、まずはどこかで尋ねてみよう。と言いながら、俺の祖父母の家に地下室なんてないけどな！

ブラックピット（本名非公開）

年齢：36歳（独身）
所属：某企業SE（入社6年目）

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ（中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった）。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X（本名なぜか非公開）

年齢：46歳
所属：某企業システム部長（かなりのITベテラン）

中学生のときに秋葉原のBit-INN（ビットイン）で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR（でも中古らしい）。人懐っこく、面倒見が良い性格。