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「Microsoft OneDrive」の使い方がザンネンな企業はAI時代で損をする?

ExcelやWord、PowerPointなどのOfficeアプリがパッケージ化された「Microsoft 365 Apps」。これらのアプリの中でも今後特に重要となるのが「OneDrive」だという。AI機能「Microsoft 365 Copilot」とも関係があるというが、それはなぜか?

» 2023年04月26日 07時00分 公開
[太田浩史内田洋行]

 「Microsoft 365」を導入したばかりで、組織でどう活用すべきかと悩んでいるお客さまに「まずは『OneDrive for Business』の活用から始めてみてはどうでしょう」と提案すると、多くの場合「いまさらOneDrive?」という反応が返ってきます。「いまさら」と思える機能だからこそきちんと理解して使う必要があるのです。

「OneDrive」の使い方で分かるM365活用の成否

 Microsoft 365の導入目的の一つに、「Microsoft Office」(以下、Office)があります。Officeと言えば、WordやExcel、PowerPointなど、なじみのある業務アプリケーションのスイート製品です。ですが、いざ利用を始めると肝心のOfficeアプリの存在が忘れ去られ、有効活用できていないことも珍しくありません。Microsoft 365のメリットを享受するには「Microsoft Teams」や「Microsoft SharePoint」などの人気サービスだけでなく、最も基本的なOfficeアプリをどう活用すべきかも併せて考える必要があります。

 Officeアプリの活用で特に重要なのが、実はOneDrive for Businessなのです。「ただのファイルの保存場所」とも思われがちですが、Microsoft 365を有効活用するためにはOneDrive for Businessを正しく理解する必要があります。そして、先日発表されたばかりのMicrosoft 365のAI機能「Microsoft 365 Copilot」にも大きく関わってきます。今回は、その理由について著者の考えを説明します。

Microsoft 365活用の基本は「OneDrive」にある(出典:太田浩史氏の作成資料)

OneDriveの利用で学ぶMicrosoft 365活用の基本3ステップ

 まずはOneDrive for Businessの基礎を解説しましょう。

 「Microsoft 365 Business Standard」や「Office 365 E3」「Microsoft 365 E3」などのライセンスでは、WordやExcel、PowerPointなどのOfficeアプリは「Microsoft 365 Apps」として提供されています。Microsoft 365 Appsは単にクラウドからソフトウェアをインストールできるだけではありません。OneDrive for BusinessやSharePointなどクラウドに保存されたファイルを直接開いて編集する時に、提供される全ての機能を利用できるようになっています。Microsoft 365を利用するユーザーにとって、手軽にファイルを保存できるクラウドサービスがOneDrive for Businessです。

 OneDrive for Businessに保存したOfficeファイルをローカルに落として、Microsoft 365 Appsのデスクトップアプリで編集すると、自動保存やバージョン履歴などの機能が使えます。誤ってデータを削除しても自動保存機能で過去のバージョンまでさかのぼれるため、これだけでも十分に便利と言えるでしょう。

 OneDrive for Businessに保存されたファイルは、アクセスリンクを共有するだけで同僚など他のユーザーとファイルを共有できます。従来のようにファイルのコピーをメールに添付して送信する必要はありません。常にオリジナルのファイルを他者と共有でき、そのファイルを複数人が同時に開いて参照し、共同編集することも可能です。また、同僚と共同でWordの書類を作成したり、PowerPointで提案書を作成したりといったことも可能です。誰かがファイルを編集していても作業が終わるまで待つ必要はなく、後で他の人が編集した箇所をマージする必要もありません。

 「OneDriveに保存したファイルを同僚に共有し、共同編集する」この3つの操作は、Microsoft 365を利用する上での基本です。

 OneDriveの基本となる3つの操作は、ファイルの保存場所がSharePointやTeamsに変わったとしても簡単に応用ができます。例えばTeamsの場合は「チームに保存したファイルをメンバーと共有し、そのファイルを共同編集する」といったように、基本となる3つの操作を応用しているだけです。

Microsoft 365活用、基本の3ステップ(出典:太田浩史氏の作成資料)

 OneDriveの基本操作から学ぶMicrosoft 365活用の基本3ステップで最も重要なのが、「ファイルがOneDriveなどのクラウドに置かれていること」です。ファイルがユーザーのローカルに置かれたままでは、Microsoft 365ならではのメリットを得られません。まずは作業中のファイルの保存場所をローカルからOneDriveに変えて、ローカル中心の考え方からクラウド中心の考え方にアップデートしましょう。冒頭で「OneDrive for Businessをきちんと使う」と述べたのは、こういうことです。

これからは「Microsoft 365」にデータがあることが最重要

 今後はさらに、OneDriveの活用が業務の生産性向上に大きく影響するでしょう。その理由の一つに、2023年3月17日に発表されたMicrosoft 365 Copilotがあります。Microsoft 365 Copilotは、今話題の「ChatGPT」で知られるOpen AIのAI技術を、WordやExcel、PowerPoint、OutlookやTeamsなどに組み込んだものです。AIが資料の作成などユーザーの作業を支援し、AIと共同作業しながら業務を進められるようになります。例えば、Outlookに届いたメールの返信文をAIが提案してくれたり、OneNoteに記録した顧客との打ち合せメモに従って提案書の下書きを代わりに作成してくれたり、さらには、その内容をPowerPointのスライドでも作成してくれたりといった具合です。

 Microsoft 365 Copilotの最大の特徴は、「Microsoft Graph」を介してMicrosoft 365に保存された情報を参照し、それを基に最適な情報をユーザーに提示してくれることです。Microsoft Graphとは、Microsoft 365に蓄積されたデータやコンテンツにアクセスできるAPIであり、ドキュメントや人、会議などとの関連性分析も可能にします。

 多くのデータをMicrosoft 365に蓄積することで、資料の作成やデータ分析、会議など、より多くのシーンでMicrosoft 365 Copilotの恩恵を受けられるようになると筆者は考えています。そのためには、AIがアクセスできる場所にちゃんとデータを保存する必要があるのです。ユーザーにとっては手軽なOneDrive for Businessの活用が重要になり、できるだけ多くのファイルをMicrosoft 365に保存しておくことが今後のAI活用に向けて今できる準備の一つです。

Microsoft 365 Copilotのデータ参照の仕組みについて(出典:太田浩史氏の作成資料)

クラウド中心の考え方にシフトしよう

 Microsoft 365の活用を考える時、TeamsやSharePointなどは話題に上ることはありますが、OneDrive for Businessについてはあまり語られません。OneDrive for Businessを生かした使い方が日常的にできているユーザーは少ない印象です。OneDrive for Businessを中心に据えて他者とコラボレーションをしながら作業を進めるのが、Microsoft 365の使い方の基本なのです。TeamsやSharePointなど他のサービスの活用を進めるときにも、この基本を身に付けられているどうかが大きな違いを生みます。ローカル中心の考え方をクラウド中心の考え方に変えようと言っても、それを理解して行動に移すのは難しいものです。まずは、先に行動を変えましょう。とにかくファイルはOneDriveに保存することです。こうして行動を変えることで、考え方もクラウドを中心としたものに変わっていくでしょう。

 今後、Microsoft 365 Copilotが正式にリリースされたとき、さらにOneDrive for Businessの価値と重要性が高まるのではないかと考えています。AIと共同作業するには、AIがアクセス可能な場所であるクラウドに情報を保存しておく必要があります。Microsoft 365に多くの情報を保存しておくことが、将来の生産性向上に関わってくるのではないでしょうか。そのためにもまずは、ユーザー一人一人のOneDrive for Businessの使い方を見直してみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール:太田浩史(内田洋行 ネットワークビジネス推進事業部)

2010年に内田洋行でMicrosoft 365(当時はBPOS)の導入に携わり、以後は自社、他社問わず、Microsoft 365の導入から活用を支援し、Microsoft 365の魅力に憑りつかれる。自称Microsoft 365ギーク。多くの経験で得られたナレッジを各種イベントでの登壇や書籍、ブログ、SNSなどを通じて広く共有し、2013年にはMicrosoftから「Microsoft MVP Award」を受賞。


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