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「Zoom Phone」利用前の確認ポイント 取得できる電話番号、3つの接続方式と違い

2021年にZoom Phoneが発表され、国内でも利用が始まった。PBXの運用を必要とせず、ハードウェアの運用保守から解放されるなどのメリットがある一方で、導入に際して注意したいポイントもある。

» 2023年07月03日 07時00分 公開
[岡垣智之キーマンズネット]

 業務システムのSaaS(Software as a Service)への移行や会議のオンラインシフトに伴って、オフィスの電話環境も見直されようとしている。これまでは社内に電話交換機(PBX)を設置して固定電話機とつなぐことで、内線や外線の発着信を制御してきた。それがインターネット回線を利用したIP-PBXに代わり、現在はクラウドPBXに企業の関心が向きつつある。

 クラウドPBXサービスとして、ZVC JAPANは「Zoom Phone」を提供する。固定電話機やPBXなどのハードウェアを必要とせず、オフィスにかかってきた電話をPCやスマートフォンで着信可能な、いわゆるクラウド電話と呼ばれるものだ。主な利用ケースとしては、特に外出が多い営業職での利用などが考えられる。メリットがある一方で、電話番号が変わるケースもあるなど、導入に際して注意すべき点もある。

 ZVC JAPANの吉田馨一氏による解説を基に、接続方式やクラウドサービスとの連携など、Zoom Phoneの利用検討段階で確認したいポイントをまとめた。

心配なのはサービス障害とダウンタイムの発生

 サービスを利用する上で懸念されるのが、データセンターなど運用環境で障害が発生した場合だ。サービス提供側で十分な冗長構成をとっていなければ、ダウンタイムが長時間に及ぶ恐れがある。

 吉田氏は、一般的なクラウドPBXサービスとZoom Phoneの設計上の違いを以下の図を基に説明した。

Zoom Phoneのデータセンターの運用方法と障害時の対応(出典:ウェビナー投影資料のキャプチャー)

 Zoom Phoneはリージョンごとに専用のデータセンターで運用されている。運用環境は、Web会議サービスの「Zoom Meeting」(以下、Zoom)と切り離されている。データセンターは東京と大阪にあり、さらにそれぞれでメインとサブに分かれている。東京と大阪のデータセンターで相互補完することで、ダウンタイムが生じにくい環境を維持している。東京と大阪の双方がダウンした場合は、海外のデータセンターに切り替える。

既存の電話番号はそのまま使える? 3つの接続方式とその違い

 クラウド電話には、既存の代表番号を継続して利用できるかどうかなど、導入に際して気になるポイントもある。Zoom Phoneには、公衆交換電話網への接続パターンとして「Zoom ネイティブ接続」「クラウドピア接続」「プレミスピア接続」の3つがあり、それぞれで利用方法や取得できる電話番号が異なる。

Zoom ネイティブ接続とクラウドピア接続、プレミスピア接続の違い(出典:ウェビナー投影資料のキャプチャー)

Zoom ネイティブ接続

 Zoom Phoneを契約するだけで済む、3つの中で最もシンプルなパターンだ。契約と同時にZVC JAPANが持つ電話番号がユーザーに付与される。「06」「03」などから始まる0ABJ番号(全10桁の電話番号形式)が取得可能で、契約から2〜3営業日ほどで取得できる。ただし、Zoom ネイティブ接続ではフリーダイヤル「0120番号」は取得できないため、その点は注意したい。

 次の2パターンはBYOC(Bring Your Own Carrier)モデルと呼ばれ、契約している通信キャリアの環境や0ABJ番号をそのまま利用できる。

クラウドピア接続

 ZVC JAPANと提携する通信キャリアやクラウドVoIPプロバイダーのサービスを利用するパターンだ。電話番号も現在利用しているものをそのまま利用できる。国内ではKDDIと提携しており、「KDDI Cloud Calling dor Zoom Phone」としてサービスを提供している。対応エリアであれば、OABJ番号に加えて、0120番号や0800番号も取得可能だ。

プレミスピア接続

 契約している電話回線を利用して、SBC(Session Border Controller)と呼ばれるゲートウェイ装置を介してZoom Phoneと接続する方式だ。クラウドピア接続とは異なり、通信キャリアを限定しない。利用している電話番号をそのまま利用可能だ。SBCを社内に設置する必要があるため、その点も他の2つの接続方式とは異なる点だ。

Zoom Phoneと連携可能なクラウドサービス

 Zoom Phoneは「Microsoft Teams」(以下、Teams)や「Salesforce」などのクラウドサービスとのインテグレーションも可能だ。音声コミュニケーションの見直しに加えて、情報連携や営業部門の業務効率化などにも活用できる。

Microsoft Teams

 Zoomのアドインを入れることで、TeamsでZoomやZoom Phoneを利用できる。日本では未対応だが(本稿公開時点)、Zoomの音声インフラを使いながらTeamsで会議や通話が可能な「Zoom Phone for Microsoft Teams Direct Routing as a Service」も提供されている。

Microsoft Teamsとの連携でできること(出典:ウェビナー投影資料のキャプチャー)

Salesforce

 Teamsと同様に、Zoom Phoneの専用アドインが提供されている。通話の録音データをCRMのデータベースの一部として利用でき、商談や営業管理に活用できる。

 Zoom Phoneはインターネットに接続可能な環境さえあれば利用できる手軽さがある一方で、以上のような導入、運用において確認すべきポイントも幾つかある。単に固定電話のリプレースというだけではなく、意義ある投資にするためにも音声コミュニケーションを起点にした業務改善につなげたい。

本稿は、ZVC JAPAN主催のウェビナー「Zoom Phoneに関する記者勉強会」の講演内容を基に、編集部で再考した。

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