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ノーコード/ローコード開発ツールの統制は誰がすべき? 調査から学ぶノーコード/ローコード開発ツールの利用状況(2023年)/後編

開発の裾野を広げるとして期待を集めるノーコード/ローコード開発ツール。開発作業者の「所属部門」や「コーディングスキルのレベル」「開発スキルの教育・習得方法」の他、「開発の統制状況」などを調査した。

» 2023年08月10日 09時00分 公開
[キーマンズネット]

 市民開発の鍵と言われるノーコード/ローコード開発ツール前編では、「ノーコード/ローコード開発ツールの利用状況」(実施期間:2023年7月4日〜25日、回答件数:260件)の調査結果から、企業において同ツールの導入が着実に進んでいる様子が見て取れた。一方、「事業部門にも開発の裾野を広げる」メリットの裏返しとして、開発の統制やアプリケーションの管理、さらに開発者の確保に課題があることが明らかになった。

 そこで、後編では企業がどのようにノーコード/ローコード開発ツールによる開発や、その運用を進めているのかを考察する。具体的には、開発作業者の「所属部門」や「コーディングスキルのレベル」「開発スキルの教育・習得方法」の他、「開発の統制状況」などを取り上げる。

 なお、本稿で取り扱うノーコード/ローコード開発ツールは、ドラッグ&ドロップなどのGUI操作によって、コーディング作業なしに(あるいはわずかなコーディング作業で)アプリケーションのUIデザインから開発、テスト、デプロイ、実行、管理などを実現するものを指す。

ノーコード/ローコード開発ツールの統制は誰がすべきか

 はじめに、ノーコード/ローコード開発ツールを利用する開発人材について調査した。

 ノーコード/ローコード開発ツールを導入、または検討している企業では「情報システム部門の担当者」(58.3%)、「事業部門の業務担当者」(56.3%)、「開発部門のエンジニア」(30.1%)がトップに上がった(図1)。

 従業員規模別でみると、100人以下の企業においては事業部門の開発割合が高いが、企業規模が大きくなるにつれて情報システム部門や開発部門の割合が高くなる傾向にあった。規模が大きい企業ほど、ガバナンスや全体最適を見据えたシステム運用に配慮する必要性が増すため、システムの専門部署が関与するケースが増えると考えられる。

図1 ノーコード/ローコード開発ツールでの開発人材の所属部門

 ノーコード/ローコード開発ツール利用の統制部門については、「情報システム部門」(61.2%)が圧倒的に多く、「開発部門」(18.4%)、「情シス以外の管理部門」(16.5%)が続いた(図2)。一方、割合は少ないものの、「CoE(Center of Excellence)などの専門組織」(6.8%)を設けて、ノーコード/ローコード開発ツール運用のルール決めやモニタリング体制を構築するケースもあるようだ。

 ノーコード/ローコード開発ツールは万能ではないため、導入時には利用戦略を策定して「どのように活用するのか、どのような場合には使用すべきではないか」を明確にする必要がある。さらに、どの程度のスキルレベルの人々が使用するのか、それら市民開発者の人々をどのように支援するのか、さらに開発されたアプリケーションをどのように管理するのかといったさまざまな観点から方針を決めて、施策を実施することが求められる。今回の調査の結果からは、過半数の企業においてはそうした役割を担う部署として情報システム部門が活躍している状況が見て取れた。

 一方で、19.4%は「特に統制していない」と答えている。特に規模の小さい企業では、まずは小規模でツールの利用をはじめて、成功体験を積むという方針をとる場合もあるが、全社的な活用を見据える場合にはいずれ統制や管理を考える必要が出てくるだろう。

図2 ノーコード/ローコード開発ツールの統制部門

どのように開発スキルを身に付けるのか

 続いて、ノーコード/ローコード開発ツールを使う開発人材のコーディングスキルのレベルを調査した。「全くない」(33.0%)が最多で、これに「初学者程度に持っている」(29.1%)が続いた。これらを合わせた62.1%は「Java」や「Python」「C#」のようなコーディングのスキルをほぼ持ち合わせていないようだ(図3)。

図3 ノーコード/ローコード開発ツールを利用する開発人材のコーディングスキル

 また開発者の「所属部門」とクロス集計した結果、事業部門に所属する開発人材の64.1%が「初学者程度」「(スキルが)全くない」のレベルであることも分かった。

 ただし、いくら高度なプログラミングスキルが不要だといっても、ツールを操作するには一定の学習が必要だ。操作方法に関する情報源や学習方法については、「Webで公開されている情報や動画」(52.4%)や「公式のオンラインマニュアル」(44.7%)などが上位に上がり、自己学習のケースが多いと分かる。その他、「社内独自の研修や勉強会」(38.8%)や「ベンダーやパートナーによるオンサイトあるいはオンライン研修」(35.9%)、「セミナーやユーザーコミュニティーなどのイベント」(37.9%)への参加、「ITスキルを持った従業員とのコラボレーション開発によるOJT」(32.0%)「ハッカソン」(4.9%)が順に挙がった。

「生成AI」や「予測分析AI」との連携に期待が集まる

 最後に、ノーコード/ローコード開発ツールに連携させて活用しているツールについて聞いたところ、「RPA」(50.6%)や「AI-OCR」(14.8%)、「チャットbot」(14.8%)が上位に挙がった(図4)。 一般的にノーコード/ローコード開発ツールは、定型的な基幹システムでは処理しきれないスキマ業務を効率化するアプリケーションを開発する目的で使われることが多い。タスクや案件の管理や在庫管理、ワークフロー自動化といった用途が考えられる。こうした”個別業務の効率化”と相性が良いRPAやAI-OCRを活用して、自動化の仕組みを構築しているケースが多いと考察できる。

図4 現在ノーコード/ローコード開発ツールと連携させているツール

 今後連携させたいツールとしては、「ChatGPTなどの生成AI」(36.9%)や「推論・予測分析AI」(19.4%)が上位に挙がり、これらと組み合わせることで定型業務ではない判断が必要な領域での活用も期待されている。

 現状ではシステム開発におけるノーコード/ローコード開発の割合は「30%以下」と回答する企業が約8割だが、急速に進むDX推進の潮流も背景に今後はその割合が増えることも予想できる(図5)。

図5 ノーコード/ローコードによる開発の割合

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