RPAの導入と成功のカギは開発、運用人材だ。最新の調査データを基に、RPA人材の現状と調達、育成の実態を深堀りする。
業務自動化の現在地を探るために、キーマンズネットは「業務自動化に関する意識調査2023年」と題してアンケート調査を実施した(期間:2023年7月20日〜8月31日、有効回答数:606件)。本連載は、全8回にわたってアンケート調査から得られた結果を紹介する。
近年は全社的なプロセス変革の一手段としてRPAを導入するケースもあるが、長期的なプロジェクトを遂行するにはRPAのロボットを開発、運用する人材の育成や調達が不可欠だ。企業は、どのような人材を求めているのだろうか。
第4回となる本稿では、「RPAの開発・運用人材」について紹介する。
RPA運用の障壁を紹介した前回の記事では、RPAプロジェクトの課題として多くの企業が開発、運用人材の不足を感じていることが分かった。一方で、RPAのトライアル、導入フェーズでも、人材不足が大きな障壁になることは想像に難くない(図1)。
では、導入企業はどのような人材を集めているのか。
勤務先でRPAをトライアル導入、または導入していると回答した人に対して、ロボット開発を担当する人数を尋ねたところ、「0〜5人」(54.7%)が最も多く、「6〜10」(13.7%)、「11〜20」(8.1%)、「21〜30」(4.9%)が続いた。この結果を従業員規模別で見ても、ほとんどの企業規模グループで「0〜5人」が最も多い回答を集めている(図2、回答割合順)。
一方、5001人以上の企業では「100〜499人」(22.4%)が最も多く、「0〜5人」(19.7%)、「6〜10人」(17.1%)、「500人以上」(9.2%)、「41〜50人」(7.9%)、と続くことから、開発人材は企業によって差があることが見えくる(図3)。
企業によって開発人数に大きな開きがある理由として、企業によって導入の段階が異なることが考えられる。RPAは、部署単位などの部分導入から初めて、徐々に適用範囲をスケールするのが定石だ。スモールスタートから始めたばかりの企業であればプロジェクト立ち上げ時点では限られた人数で対応し、フェーズが進むにつれて担当者を増員する考えだろう。
また、企業によって開発体制に違いがあることも理由の一つだろう。事業部門の従業員が自らRPAを開発する現場主導を進めている企業であれば、プロジェクトの規模にもよるが、開発人数は多くなる傾向にある。
関連して、RPAを開発している人材の職種も聞いた。情報システム部門が67.7%と最も多く、ITエンジニア(32.3%)が続き、主に情報システム部門やIT関連の職種が中心であることが分かる(図4)。RPAによる自動化はさまざまな社内システムを対象とすることから、それらのシステムを普段運用している人材が担当するという考え方が背景にありそうだ。
シナリオの開発時はシステムやRPAツールに関する知識の他、セキュリティ・ガバナンスの視点が求められるという意味でも情報システム部門が関与する割合が高いと考えられる。
一方で、3位に「総務・事務・法務」(17.9%)がランクインしている。RPAは、業務プロセスの自動化を目的としているため、業務知識を持つ「総務・事務・法務」や「製造・生産」に関わる人材も関与することが多い。これらの職種の人材がRPAの運用に関わることで、業務の効率化や品質向上が期待される。
一方、RPAを運用する人材の人数や職種はどのような状況なのか。人数については、開発人材と同様に「0〜5人」(48.4%)が最も多く、「6〜10人」(14.0%)、「11〜20人」(8.4%)、「100〜499人」(7.0%)と続いた(図5、回答割合順)。
運用にあたる人材の所属部署については、1位が「情報システム部門」で66.3%、2位が「ITエンジニア」(23.9%)、3位が同率で「製造・生産」「総務・事務・法務」「財務・会計・経理・労務」(いずれも18.2%)が続いた(図7)。開発人材の人数や所属する職種と比べても、傾向に変化は見られなかった。
前述したように、RPAプロジェクトにおいてはRPAの開発や運用を担う人材の調達が大きな課題になる。中には、人材育成の一環として勉強会や研修、コンテストなどの取り組みを実施する企業もある。
RPAの導入初期に外部のコンサルタントに依存する企業も多いが、継続的な運用やコストを考慮すると、定期的に勉強会を開催するなどしてロボットの開発、運用人材を育成しながら、プロジェクトを進めるのが得策だろう。
RPA技術の普及と共に、外部の教育機関や専門学校での研修プログラムも増えているため、これらを活用して、人材を育成するのも一つの手だろう。
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