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Dynamics 365の気になるアプリ機能とライセンスをまとめて解説

「Microsoft Dynamics 365」は、さまざまなCRMツールとERPツールを1つのプラットフォームに統合している。各種サービスの機能と値段をまとめて紹介する。

» 2023年12月27日 08時00分 公開
[Tim MurphyTechTarget]

 「Microsoft Dynamics 365」(以下、Dynamics 365)は、顧客エンゲージメント用アプリケーションと財務/業務用アプリケーションで構成された統合スイートだ。Microsoftは2016年までエンタープライズレベルのCRMソフトウェアとERPソフトウェアを別々の製品として販売していた。マーケティングやセールス、カスタマーサービス関連の機能を提供する「Microsoft Dynamics CRM」と、財務やサプライチェーン管理向けのツールを提供する「Microsoft Dynamics AX」だ。その後、同社は複数部門にまたがるデータ共有を効率的にするために、これら2つの製品をDynamics 365に統合した。

 本稿は、ERP導入を検討している企業に向けてDynamics 365の機能や価格をまとめている。

Dynamics 365の“いろは” 自社に合うか見極めよう

 Dynamics 365に含まれるCRMアプリは、営業部門やカスタマーサービス部門、マーケティング部門、財務部門などの業務を支援する。

 Dynamics 365はローコード/ノーコードツール「Microsoft Power Platform」(以下、Power Platform)で構築されており、ユーザーはDynamics 365を「Microsoft Power BI」や「Microsoft Power Virtual Agents」などのツールと統合することで、データの可視化や分析の自動化、チャットbot機能の拡張などができる。

Dynamics 365の顧客エンゲージメントアプリまとめ

 Dynamics 365の顧客エンゲージメントアプリは、マーケティングやセールス、カスタマーサービス担当者のワークフローを効率化する。以下は各アプリの解説だ。

Dynamics 365 Sales

 「Dynamics 365 Sales」は、データに基づくインサイトや自動化機能を提供するCRMプラットフォームだ。Microsoftはこのプラットフォームを「Dynamics 365 Sales Professiona」(以下、Sales Professiona)、「Dynamics 365 Sales Enterprise」(以下、 Sales Enterprise)、「Dynamics 365 Sales Premium」(以下、Sales Premium)、「Microsoft Relationship Sales」(以下、Relationship Sales)の4つの価格帯で販売しており、「Microsoft Sales Copilot」(以下、Sales Copilot)と呼ばれる生成AI(人工知能)アドオンも提供している。

  • Sales Professional: 中小企業向け。CRMの中核機能は提供されるが、上位構成に含まれる高度なカスタマイズ機能やAI機能は利用できない。営業プロセスを通じて顧客を誘導するワークフロー機能を備えており、獲得に成功した案件や失敗した案件の比較といったインサイトを、事前定義済みのダッシュボードとチャートで可視化する。また、顧客の連絡先情報や過去の連絡内容、その顧客が関わる案件のステータスを一元化されたハブで表示する「360°カスタマービュー」も提供する。価格は1ユーザー当たり月額65ドル
  • Sales Enterprise: Sales Professionalと同じ機能に加え、販売予測機能やシーケンス機能も提供する。Dynamics 365 Sales Enterpriseの予測機能で、営業担当者は「一定期間にどれだけの売上を得られるのか」を予測できる。また、連絡先やアカウント、リード(見込み客)の記録からマーケティングリストを作成し、プロモーションコンテンツで顧客をターゲティングする。価格は1ユーザー当たり月額95ドル
  • Sales Premium: Sales Enterprise全ての機能に加え、AIコーチングやリレーションシップ分析などの機能を提供する。AIコーチング機能は、生産性を高める提案を営業担当者にリアルタイムで提供する。また、顧客のヘルススコアを算出し、注意すべきリレーションシップを担当者に警告する。さらに、AIを利用したリードスコアリングで営業チームのタスクの優先順位付けを支援する。価格は1ユーザー当たり月額135ドル
  • Relationship Sales: Relationship Salesは、Sales EnterpriseとSales Premiumの機能に「LinkedIn Sales Navigator」(「LinkedIn」上で潜在的なリードを発掘し、営業担当者を支援するツール)を加えたものだ。Sales EnterpriseにRelationship Salesを加えた価格は1ユーザー当たり月額162ドルだ。Sales PremiumにRelationship Salesを加えた価格は発表されていない
  • Sales Copilot: Sales Copilotは、Microsoftが2023年9月に発表した生成AIアシスタントだ。Sales EnterpriseとSales Premiumに付属しているが、Sales Professionalユーザーも追加料金を払えばサブスクリプションに追加できる。Sales Copilotは、営業メールの作成や、メールの要約、「Microsoft Teams」からデータを取得することもできる。2024年にAIベースのダッシュボードなどが追加される予定で、営業責任者は各担当者のパフォーマンスを追跡できるようになる。また、営業担当者が適切な営業資料を迅速に顧客に提供するのに役立つ自動コンテンツ提案機能も追加される予定だ。Sales Copilotの価格は1ユーザー当たり月額40ドル

Dynamics 365 Customer Service

 「Dynamics 365 Customer Service」は、多様な機能を備えたコンタクトセンタープラットフォームで、顧客の質問に返答するなどしてカスタマーサービス担当者の仕事を支援する。Microsoftはこの製品を「Dynamics 365 Customer Service Professional」(以下、Customer Service Professional)と「Dynamics 365 Customer Service Enterprise」(以下、Customer Service Enterprise)という2つの価格帯で販売している。

  • Customer Service Professional: 担当者がサポートケースを追跡、管理するのに役立つ中核的なカスタマーサービス機能を提供する。例えば、サポートケースを重要度に基づいて自動的に評価する他、顧客の地理的位置や問題の性質、問題の深刻度に基づいて最適な担当者を顧客に割り当てる。さらに、担当者がナレッジ記事を保存、検索、作成できる「ナレッジ管理機能」も提供する。価格は1ユーザー当たり月額50ドル
  • Customer Service Enterprise: Customer Service Professionalの全ての機能に加え、AIがリアルタイムで提案やインサイト提供などを行う。例えば、顧客の問題解決に取り組む担当者に対し、関連性の高いナレッジ記事や次のステップを提案してより迅速な問題解決を支援する。価格は1ユーザー当たり月額95ドル

Dynamics 365 Field Service

 「Dynamic 365 Field Service」(以下、Field Service)は、現場の技術者がより効果的なオンサイトサービスを提供できるよう支援する。これを利用する業界には製造業や公益事業、ヘルスケア業界などが想定されている。

 このアプリに用意されているダッシュボードには、サービスケースや販売注文、顧客からの電話、IoTデータに基づいた作業指示書が表示される。また、技術者が問題を解決するために必要な機器とスキルが作業指示書ごとに表示される。半自動スケジューリング機能もある。

 Field Serviceにはモバイルアプリもあり、遠隔地の技術者に作業内容を指示したり、客先までの経路を提示したりできる。また「Dynamics 365 Remote Assist」や「Dynamics 365 Guides」などのアプリと統合することも可能だ。これらを利用することで、技術者はMR(複合現実)ヘッドセットを使って遠隔地の専門家から指示を受けられる。価格は1ユーザー当たり月額95ドルだ。

Dynamics 365 Customer Insights

 Microsoftは2023年9月、マーケティングツールの「Dynamics 365 Marketing」と顧客データプラットフォームの「Dynamics 365 Customer Insights」を統合した。現在、マーケティングツールは「Customer Insights - Journeys」(以下、Journeys)、顧客データプラットフォームは「Customer Insights - Data」(以下、Data)という名前に変更され、1つの製品として販売されている。

 Journeysは、マーケティング担当者やCX(顧客体験)担当者がカスタマージャーニーを設計できるようにするものだ。例えばマーケティング担当者は、アカウント作成や製品購入などを実行した顧客に対してあいさつメールを自動で送信できる。

 Dataは、社内外のさまざまなソースにある顧客データを集約し、リアルタイムで表示する製品だ。マーケティング担当者はこのデータを利用して、顧客プロファイルやセグメントを作成し、カスタマージャーニー全体によりパーソナライズされた体験を提供できる。

 Journeysの価格は1テナント当たり月額1700ドルだ。ただし、Dynamics 365 Salesや「Dynamics 365 Customer Service、Field Service、「Dynamics 365 Finance」「Dynamics 365 Supply Chain Management」「Dynamics 365 Commerce」のライセンスを既に10ユーザー以上保有している場合は、1テナント当たりの月額料金が1000ドルになる。

Dynamics 365の財務/業務アプリ

 Dynamics 365の財務/業務アプリは、経理やサプライチェーン管理、人事担当者のビジネスプロセス改善を支援する。

Dynamics 365 Finance

 Dynamics 365 FinanceはMicrosoftの財務管理アプリだ。このツールは請求書の作成や予算策定、財務予測といった財務タスクの効率化を支援する。Dynamics 365 Financeの売掛金勘定機能を利用すれば、販売注文の請求書の作成や、クレジットカード、小切手、電子送金など複数の手段による支払金を処理できる。

 予算管理機能を「Microsoft Excel」と統合すれば、予算計画の策定や費用の追跡、支出超過を防ぐための管理を強化できる。価格は1ユーザー当たり月額180ドルだ。

Dynamics 365 Commerce

 Dynamics 365 Commerceを利用することで、小売業者はさまざまな販売チャネルで一貫した体験を提供できるようになる。顧客向けのeコマースサイトを設計はもちろん、在庫や配送管理などの業務を効率化する。

 Microsoftがこの製品に提供しているeコマースのアドオンには、顧客が好みそうな商品を過去の行動に基づいて提示するAIベースの商品レコメンデーション機能が含まれている。また、カスタマーレビューに対応したり、レビューそのものを削除したりするAIアルゴリズムも用意されている。価格は1ユーザー当たり月額180ドルだ。月額4000ドルでeコマースのアドインを購入することもできる。

Dynamics 365 Supply Chain Management

 Dynamics 365 Supply Chain Managementは、製品計画、製造、倉庫管理、フルフィルメントプロセスの管理を支援する。このツールを利用すれば、組織のサプライチェーンと在庫を包括的に把握できるため、ビジネスリーダーはより多くの情報に基づいて意思決定を下せるようになる。

 また、AIベースの予測機能を利用し、顧客需要の傾向を予測することも可能だ。Dynamics 365 Supply Chain Managementを「Dynamics 365 Remote Assist」「Dynamics 365 Guides」と統合すれば、製造現場にある設備のダウンタイムを短縮できる。Dynamics 365 Supply Chain Managementの価格は1ユーザー当たり月額180ドルだ。

Dynamics 365 Human Resources

 Dynamics 365 Human Resourcesは、従業員のオンボーディングや報酬と福利厚生の管理、勤務評定、休職管理などを効率化する。また、従業員のスキルをリストアップして追跡できるため、人事部門が人材とプロジェクトをマッチングさせるのに役立つ。

 Dynamics 365 Human Resourcesにはセルフサービスツールも用意されており、従業員はプロファイルの作成や有休休暇の残日数の確認、休暇申請などを行える。限られた機能しか必要としない中小企業はこうしたセルフサービス機能のみを割安な価格で購入できる。

 Dynamics 365 Human Resourcesの価格は1ユーザー当たり月額120ドルだ。セルフサービス機能のみの限定バージョンは、1ユーザー当たり月額4ドルとなっている。

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