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数千種類の帳票をデジタル化 5人からスタートしたトヨタ自動車東日本

自動車製造工程には部位や工程ごとに数千種類の管理帳票が存在する。トヨタ自動車東日本では、センサーで取得したデータも人間が手作業でグラフ化していた。デジタル化のポイントは製造現場の作業者でも使える操作性の高さだ。

» 2024年02月27日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 トヨタ自動車東日本は、コンパクトカーを中心としたトヨタ車の企画開発と生産を担うトヨタグループの中核の一つだ。自動車製造には組立や塗装など多くの工程があり、部位や工程ごとに満たすべき基準値の適合を数千種類の帳票で管理する必要がある。

 多くの帳票が手書きだった同社は、業務負荷を下げるために帳票のデジタル化とデータ可視化ツールの導入を進めた。ポイントは製造現場の作業者でも使える操作性の高さだ。

センサー計測の塗装データを人間が手作業でグラフ化する悩み

 トヨタ自動車東日本は、「ヤリス」や「アクア」「シエンタ」などのコンパクトカーを生産している。製造現場のデジタル化の声が高まった2016年当時、データ活用にさまざまな課題を抱えていた。

 塗装品質管理では、塗装段階で発色の差異がないようにセンサーによって発色計測データを取得し基準値との合否測定を実施している。だが測色結果のグラフ化や傾向分析が手作業で時間がかかっていた。

 同社はウイングアーク1stのBIダッシュボード「MotionBoard」を、シムトップスの帳票デジタル化ツール「i-Reporter」と連携させることで製造工程のデータ可視化と生産性向上を目指した。

ダッシュボードで示される工数比較(出典:ウイングアーク1stのリリース資料)
工程内における各部門の工数を可視化(出典:ウイングアーク1stのリリース資料)

 管理帳票業務ではi-Reporterのタブレット入力やBluetoothによる測定器との連携機能で入力業務を大幅に効率化し、MotionBoardとの連携でグラフ図の描画、データの異常傾向のアラート表示までを自動化した。確実な測色管理により不良の兆候をとらえて設備を調整することで製品のバラツキの発生を抑制し、塗装品質向上に役立てている。

 導入当初はクラウド版「MotionBoard Cloud」を利用していた。5人程度の利用で小さく始め、成果を確認してから全社展開に踏み切った。このタイミングでオンプレミス版に切り替え、利用者は2024年2月時点で約700人へと拡大した。切り替えの背景にはオンプレミス版のコストメリットの高さが挙げられる。

 全社展開後は、「生産管理版」と呼ばれる生産計画と実績管理にMotionBoardを活用している。基幹システムや生産設備のデータを連携させて、紙で掲示していた情報を現場に配置した大型モニターに投影している。トヨタ自動車東日本では、管理者が必要なデータをすぐに確認できる環境が整い、リアルタイムな生産情報の把握により稼働率の向上や生産性向上につながったと感じている。

 製造現場以外でも、出勤簿システムデータをMotionBoardと連携させた残業や年休取得率の見える化、プリンターの印刷枚数の見える化などで「Microsoft Excel」による管理業務を軽減し、業務効率化やペーパーレス化にも活用している。

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