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なぜ「使われないBIツール」になるのか? 入れて分かった反省ポイント

組織に蓄積されたデータ資産から価値を引き出しビジネスにつなげるために求められる「BI」。導入したからこそ見えてくる課題もある。

» 2024年02月07日 07時00分 公開
[岡垣智之キーマンズネット]

 キーマンズネット編集部は2024年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「コミュニケーション/コラボレーション」「生成AI(人工知能)」「システム内製化」「BI/データ活用」「Windows 11」の7つのトピックを挙げ、読者調査を実施した(実施期間:2023年11月10日〜12月8日、有効回答数424件)。

 第6回のテーマは「BI(Business Intelligence)/データ活用」だ。

調査サマリー

  • 勤務先でBIを「導入している」は合計で34.2%
  • BIの導入目的では「経営陣から求められるデータが多様化してる」などの声も
  • データ活用が行き詰まるのはBIの「使われ方」

その他、BIに求めること、製品別認知度など

BI「導入済み」は34.2% ボトムアップで導入を求める声も

 業務システムのセルフサービス化が進んだことで、多くの業務領域で現場主導によるアプローチが容易になった。データ分析もその一つだ。セルフサービスBIが広がったことでデータ分析のハードルは格段に下がった。BIも提供形態や利用環境が変化する中で、ユーザー企業における利用状況に変化はあったのだろうか。

 まず、BIの導入状況を概観するために回答者の勤務先で「BIを導入しているか」と尋ねたところ、「導入しておらず、今後も導入する予定はない」が半数(55.4%)を占めた。「導入している(リプレース予定なし)」(29.2%)と「導入している(リプレース予定なし)」(5.0%)を合わせた、「導入済み」とした割合は34.2%となった。この結果を従業員規模別でみると、従業員数1001人以上を境に「導入している」の割合が増加に転じる結果となった(図1)。

図1 従業員規模別に見る「BIの導入状況」(n=424)

 続いて、BIのニーズを探るために「今後導入予定」とした導入検討層(10.4%)に対してその理由を尋ねた。寄せられたコメントを見ると「販売促進や業務改善に生かすため」「データ資産を事業や経営に最大限活用するため」「事象の見える化により判断を迅速化するため」など、BI導入で代表的な「経営、ビジネスに生かすため」といった声が多くを占めた。

 一部では「経営陣から求められる資料が多様化しているため」といった、経営側から求められるデータが多角化している現状を映し出す声や、「ユーザー部門からの要請があったため」などビジネスの最前線に立っているからこそデータ活用の重要性を理解し、ボトムアップでBIの導入を求める声などが寄せられた。また「関連企業が導入しているため」など、関連企業全体でデータ活用を進める声もあった。

データドリブンとは言うけれど……、入れて分かったBIの導入課題

 BIを導入したはいいが「当初描いたロードマップ通りに運用できていない」「利用が進まない」など、「期待はずれ」だと感じているIT担当者も少なくないはずだ。その原因はどこにあるのだろうか。BIを「導入している」とした34.2%の回答者に対して「入れて分かったBI導入の課題と問題点」を尋ねた。現在、導入を検討している企業は、この点は事前に対策を考えておきたいところだ。

 寄せられたエピソードで目立ったのが「IT部門が“おぜん立て”しなければ利用が進まない」といった声だ。具体的には「ユーザー部門がリレーショナルDB構造を理解できておらず、結局IT部門がViewを作らないと(ユーザー部門だけでは)何もできない」「IT部門でダッシュボードを作成し、ユーザー部門は見るだけになっている。ユーザー部門が使いこなせていない」「ユーザー部門が機能を利用できていない。結局、IT部門で帳票を作成している」「ツールの問題ではなくDB構造を理解しておらず、使いこなせない人がいる」などの声だ。

 データを必要とするユーザー部門自体がBIを理解できておらず、結局、IT部門にリクエストを投げるだけになっているというIT担当者の悩みの声が目立った。利用のハードルが下がったとは言え、ユーザー研修を重ねて従業員の習熟度を高めながら「使われるBI」にしなければ無駄な投資に終わる可能性がある。ユーザー部門のITリテラシーを考慮した製品、サービス選定はもちろんのこと、導入後のユーザーフォロー計画も併せて考えたい。

 次に多く寄せられたのが「元データが汚く、期待したアウトプットを出すことが難しい」「参照元のデータベースに不備が頻発し、誤報告を招いた」など、そもそもデータや参照元が整備されていないといった声だ。品質の高いアウトプットを出すには、「生かせるデータ」であることが大前提だ。

 その他、「広く多くの従業員に使ってもらいたいが、ライセンス費用がかさむため限られた人しか利用できない」といった利用コストに関する声が上がった。

求めるのは「UIや操作性の向上」 課題に対するユーザーの声

 これらの課題を受けて「今後BIに期待すること」を尋ねたところ、「UIや操作性の向上」が最も多く(41.5%)、前項目で紹介した「ユーザー部門で使われない」というIT部門の課題が透けて見える結果となった。次いで、「経営指標の可視化」(39.9%)、「Excelなどの表計算ツールとの連携」(38.3%)が続いた。

 BIは既に市場が成熟している分野で、ベンダーも多くのプレイヤーが存在する。ユーザーは製品やサービスをどこまで認知しているのだろうか。7つの製品およびサービスに対する理解度について自身の感覚値を尋ねたところ、図2の通りとなった。

 業務プラットフォームとして「Microsoft 365」を利用している企業も多いためか(参照)、「Microsoft PowerBI」が最も認知度が高く、「知っている」とした割合は39.9%、次いで「Tableau」は同39.9%、「MotionBoard」は同14.9%となった。

図2 BI製品それぞれの理解度と利用状況(n=424)

 BIも製品やサービスによって一長一短があるが、ユーザー部門と目的を明確にした上で、自社にとって最適なものを選びたい。機能性だけではなく、UIや操作性も重要な選定指針となる。現場での活用法をイメージしながら、求めるインサイトを効率よく得られる方法を考えたい。

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