企業における「リスキリング」の実施状況を調査した。IT人材が考える、今後役立つスキルはいったい何だろうか。
キーマンズネット編集部は「人材と働き方に関するアンケート」を実施した(実施期間:2024年2月1日〜2月28日、有効回答数528件)。「リスキリング」「IT人材不足」「働き方・転職」「職場の人間関係・価値観」の4回に分けて、調査結果を紹介する。
第1回の本稿は、企業における「リスキリング」の実施状況を届ける。IT人材が考える、今後役立つスキルはいったい何だろうか。
まず、企業におけるリスキリングの実施状況を聞いたところ、全体の36.6%が「実施している」、60.0%が「実施していない」と回答した(図1)。
企業規模別に見ると、100人以下の企業は19.2%、101〜500人の企業が23.8%、501〜1000人の企業が42.4%、1001〜5000人の企業が42.1%、5001人の企業が54.5%と、企業規模が大きくなるにしたがって顕著にリスキリングの実施率が高まるのが分かる。
次にリスキリングの実施方法を聞いたところ、「e-learning」が全体36.8%で一番高い結果となった。企業規模別では、1000人以下が36.1%、1001〜5000人が39.6%、5001人以上が35.8%と、全ての企業規模で一番実施率が高い結果となった(図2)。全体2位は「オンライン講座」(20.7%)であった。
※回答者数30人以上で集計するため、100人以下と101〜500人、501〜1000人を1000人以下にまとめている。
リスキリングの実施方法に顕著な差が出たのは「社内研修」と「社外研修」だ。「社内研修」の実施率は従業員規模が大きくなるにつれて高まり、「社外研修」の実施率は従業員規模が小さくなるにつれて高まった。おそらく、企業規模が大きくなるほど社内の人材が豊富であるため、社外の力を頼らずにスキルトランスファーが可能になるのだろう。また、選択肢以外のリスキリング方法としては「通信講座」が複数寄せられた。
リスキリングでスキルの向上を実感できているかどうかを聞いたところ、全体では「実感している」(46.1%)、「実感していない」(49.2%)と、約半数がスキルの向上を実感できていないことが分かった(図3)。企業規模別に見ると、1000人以下が59.7%、1001〜5000人が41.7%、5001人以上が35.6%と、企業規模が大きくなるにつれてリスキリングの効果を実感できていないのが分かる。
企業規模が大きくなるにしたがって社内研修を実施する企業が増えることから、社内研修によるリスキリングはスキルアップの効果が薄い可能性がある。1000人以下の企業は社外研修の割合が一番高く、スキルアップの実感も一番高いため、社外の専門家による研修は効果が高いのかもしれない。
リスキリングを実施している項目は「AI、機械学習」が全体19.2%と一番高い結果となった(図4)。企業規模別に見ると、製造業は「AI、機械学習」が27.0%と平均よりも8.8ポイント高い。製造業は、工場の単純作業をAIによって効率化したいという狙いがあるのだろう。
※回答者数30人以上で集計するため、金融業、流通業、医療業、教育業、サービス業、官公庁・自治体をまとめている。
IT関連業は「AI、機械学習」が15.6%と平均より3.6ポイント低く、「部下やチームのマネジメント」が14.4%と平均を5.6ポイント上回った。物理的な商品ではなく目に見えないサービスを提供するIT関連業は、プロジェクトの成功に直接つながる「部下やチームのマネジメント」の需要が高いのだと思われる。
最後に「今後、一番重要性が高まると考えているスキル」をフリーコメントで聞いたところ、525件の回答が集まった。
コメントを集計したところ、「AI、機械学習」関連の回答が149件集まり、2位の「セキュリティ」の60件に大きく差をつける結果となった。「セキュリティ」は現在実施中のリスキリング項目の4位であった。それにもかかわらず今後需要が高まると多くのコメントが寄せられているため、企業がリスキリングしている項目と、従業員がリスキリングを希望する項目にギャップがある可能性が高い。
以降は「データ分析」が40件、「コミュニケーション能力」が33件、「インフラ、クラウド」が16件と続いた。以下では、各項目ごとに寄せられたコメントをみていく。
全回答者数528人のうち、「プロジェクトマネジャー」(14.4%)、「プログラマー・エンジニア」(10.8%)、「インフラ関連エンジニア」(8.9%)、「システムアーキテクト」(6.8%)、「IT戦略策定担当者、CIO(最高情報責任者)/CDO(最高デジタル責任者)」(5.7%)、「情報セキュリティ担当者」(5.7%)、「PC等のIT資産管理担当者」(5.1%)、「ヘルプデスク担当者」(2.7%)、「システム監査担当者」(1.9%)、「該当しない」(37.5%)といった内訳であった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
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