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オンプレERPは今後どうなる? 2024年の動向を解説

ある専門家は「2024年はクラウドERPに移行するのに最適な時期」「オンプレERPの販売はなくなる」と主張している。この発言を基に2024年のERPの動向を解説する。

» 2024年04月01日 07時00分 公開
[Jen A. MillerCIO Dive]
CIO Dive

 ERP市場の拡大が続いている。世界のERP市場は2022年以降8%成長し、2024年には140万社がERPに1830億ドルを費やすと予想されている(注1)。

 特に話題になっているのがクラウドERPだ。ある専門家は「2024年は、ERPをオンプレミスからクラウドに移行するのに最適な時期」と主張している。この発言を基に2024年のERPの動向を解説する。

ベンダーはオンプレERPの販売を辞める?

 現在、規制を順守するためにERPをアップグレードする企業と、オンプレミスソフトウェアの改善やAIの追加によってオンプレミスからクラウドに移行する企業が混在している。

 経営コンサルティング事業を営むWest Monroeのクリス・ペリー氏(M&A ERPリード)は「高速で動作するERPよりも多機能を持つERPを導入することが、より多くの利益につながる」と述べた。

 また、調査企業であるForresterのアクシャラ・ナイク・ロペス氏(シニアアナリスト)は「ほとんどの企業は、ERPベンダーに提案依頼をする前の段階にある。大きなプロジェクトが必要になると分かっている一部の企業は計画を立て、戦略を練っている」と語った。

 特に、ベテラン従業員の退職予定がある企業は、現行のERPが安定稼働しており、システムの仕様が十分に文書化されていることを確認することも重要だ。これにより、退職とともにシステムの知識が失われたり、クラウドへの移行が困難になったりすることを回避できる。

 2024年は、オンプレミスのERPからクラウド型に移行するのに最適な時期だという。ロペス氏は、「クラウドへの移行が迫っている。今後、オンプレミスのERP製品は入手が難しくなる」と付け加え、ペリー氏も次のように語った。

 「新規顧客として、オンプレミスのERPを導入したり、永久ライセンスを購入したりすることは難しい。よほど強い説得力がない限り、ベンダーはそれらを販売しない」

ERPの移行時に多くの機能を実装

 ERPの移行にかかる期間はおおよそ12カ月から2年で、これまでと大きな変化はない。クラウドERPを導入する企業は、移行期間にERPから多くの成果を得ている。

 「ベンダーの改善によってクラウドERPは容易に導入できるようになり、企業は余計なカスタマイズやアドオンを回避できるようになった。これらの改善によって、企業はカスタマイズやアドオンを回避できるようになった。ソフトウェアが改善されたことで、より複雑で高度な実装が可能になった」(ペリー氏)

 業界特化型のERPを提供しているVAIのジョー・サイオシア氏(エグゼクティブバイスプレジデント)は、「2024年、食品を扱う企業は国食品安全強化法の要件に(注2)迅速に対応しなければならない。そのため、ERPの段階的な改革が起こる」と予想している。

 「多くの企業はERPを部門ごとに分けて導入する。この方法は、異なる場所に複数の施設を持つ企業や、他の企業を買収して成長している企業に人気だ。こういった場合、ERPベンダーはシステムインテグレーターになる。複数のERPを導入し、複数のプラットフォームでそれらを統合している」(サイオシア氏)

AIはERPにどう取り込まれる

 AIはERP導入に決定的な革命を起こしたわけではないが、プロセスの段階的な改善に役立っている。

 「ERPのテスト時間を短縮するためにAIが活用されている。テスト期間を数カ月削減できるケースもある」(ロペス氏)

 また、ペリー氏は「AIは請求書を管理したり、故障の発生間隔やメンテナンス環境での欠陥を予測したりすることができる。これらは私たちが目にしている一般的な能力向上の一部である」と述べた。

 サイオシア氏はERPに関して、「サイバーセキュリティとAIへの投資も活発になる」と予想している。脅威の検出や対処のためにAIが役立てられている。

 「ランサムウェアやクラウド侵害の頻度が増すにつれて企業の懸念は高まっている。企業は、ランサムウェアによって廃業に追い込まれる事態を避けたいと考えている」(サイオシア氏)

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