チャットbotは、ユーザーが入力する文章に対して、あらかじめ定められたスクリプトを基に応答する。スクリプトの質はチャットbotの質に直結するため、作成には十分な配慮が必要になる。ユーザーに“ポンコツ”と思われないチャットbotのスクリプトを作成するヒントを紹介する。
ITアプリやサービスのノーコード化が進むにつれ、それらの作成はより容易で安価、迅速なものになっている。一方、開発者が決して軽視してはいけない領域がある。それは、チャットbotにおける効果的なスクリプトの作成だ。チャットbotは、ユーザーが入力する文章に対して、あらかじめ定められたスクリプトを基に応答する。
チャットbotの有効性は、スクリプトの質に依存する。結局のところ、チャットbotの目的は、シンプルなユーザー体験を作り出すことだ。しかし、その基準を達成するための文章を作る作業は容易ではない。チャットbotにおける効果的なスクリプトを作成するためのヒントを幾つか紹介しよう。
アプリケーションコーディングのルールは、チャットbotにおける優れたスクリプト作成のルールと似ている。どちらの取り組みにおいても、慎重な計画やスマートな実践、構造化されたレビュー、チームワークが効果的だ。
開発者がアプリケーションの開発を始めるとき、最初のステップはそのアプリケーションの定義だ。そのためには、複数の質問が必要だ。
・どんな問題を解決しようとしているのか
・誰のために問題を解決するのか。つまりユーザーは誰なのか
・ユーザーにどのような価値を提供するのか
・競合するアプリケーションと比較して何が特別なのか
・成功とはどのような状態か。具体的にどのような機能がユーザーを満足させるのか
これらの質問の答えが明確になれば、アプリであれチャットbotのスクリプトであれ開発が前進する。
開発者がアプリのコードを書く準備をする際、一般的に、アプリケーション内で発生するイベントの流れをまとめた図を作成する。この図は、ユーザーの相互作用の開始から終了までの流れを示す。
チャットbotのスクリプト開発にも同じことが当てはまる。最初の画面表示からユーザーが画面を閉じるまでの会話の流れを作成することは効果的であり、ユーザーが満足するスクリプトを作成するための強力なツールである。スクリプトの作成者は、望まれる全てのやりとりのみならず、偶発的なやりとりや予期せぬやりとりも考慮しなければならない。人間とチャットbotの対話は、結局のところ、アプリをうまく使ったりワークフローを実行したりするのと同じプロセスだ。
この段階では、スクリプトの内容を定義する作業が進行中であり、スクリプトの作成者は再び開発者のような思考が必要になる。開発中のアプリケーションには流れがあり、それは通常、厳密に分離された機能の塊であるモジュールで構成されている。
チャットbotのスクリプトも同様だ。コンテンツは、提示され収集された情報として定義され、必要な情報の塊はそれぞれ流れの一部を構成する。しかし、留意しなければならないのは、チャットbotは顧客と対話するということだ。顧客の旅を演出するツアーガイドとして機能する必要がある。
言い換えると、スクリプトの流れは、顧客の知りたいことや不満から、顧客の満足に至るまでの過程を反映している。顧客が学びたいことを学んだり、自分の状況を改善したりする過程だ。
最後に、スクリプトの作成者は開発者の役割を果たしながら、流れをまとめた図について他のメンバーと徹底的に話し合うべきだ。開発チームが行うように体系的に進めることが望ましい。実際の作成が始まると、ロールプレイングがプロセスを引き締める助けになる。
優れたチャットbotのスクリプト作成において重要なことは、開発者がコードを書く際のベストプラクティスと通じるものがある。
・簡潔に書く。2行で済む場面で10行も書かない
・一貫性を保つ。確立されたテーマからの逸脱は無意味であり、混乱を招く
・不測の事態に備える。全ての回答が首尾一貫した回答になるようにする
・文脈を考慮する。データの流れはしばしば変化し、それは対話においても同様である。ある答えが新しい情報を示し、それが全く異なる次の質問につながるかもしれない
・応答を多様化する。チャットbotが感情的に、あたかも一人の人間のように見えるようにする
応答の多様化は、チャットbotの体験において重要な要素であり、他の多くのアプリケーションでは見られない特徴だ。多くの開発者がこれを見落としている。ユーザーはチャットbotが人間ではないことを理解しているかもしれないが、それでも、チャットbotが人間のように感じられる方が効果的だ。
チャットbotのスクリプトを作成する際の他のヒントとして、受動的な応答ではなく能動的な応答を使用することが挙げられる。これによって、チャットbotの回答が人間らしい印象を与える。絵文字を使用し、感情的でないテキストのやりとりに温かみを加えることも大切だ。チャットbotが人間と同じ速さで応答するように、メッセージングのペースを調整することも忘れてはならない。応答テキストを生成する前に、短い休止時間を設けることも重要だ。
開発者による新しいアプリのリリースには最終ステップがある。それはユーザー受け入れテスト(UAT)と呼ばれるもので、開発者はこのステップをスキップしてはならない。これは開発チームにおけるロールプレイングと同様のもので、スクリプト作成においては、チャットbotが典型的なユーザーと対話する。このテストの目的は、ユーザーがチャットbotを実際に試し、実用に足るかをテストすることだ。
UATの価値は、開発者が見逃したスクリプトの空白を埋めることにある。これによって開発者は公開前に修正することができ、満足のいくユーザー体験を保証できる。これこそが、開発者にとって成功のための究極の定義と言える。
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