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AIで顧客ロイヤリティを爆上げさせる方法

顧客ロイヤリティ向上において、AIは中心的な役割を果たす。組織はAI戦略をコスト削減よりもCXの向上に集中させることでROI(費用対効果)を高められる。

» 2024年08月06日 08時00分 公開
[Tim MurphyTechTarget]

 予測AIおよび生成AIツールを活用することで、大量の消費者データを分析できる。そのため、顧客体験(CX)を担当するチームが顧客のニーズを予測し、顧客ロイヤリティーを向上させるのに役立つ。

求められる顧客ロイヤリティーの向上

 顧客ロイヤリティー向上の取り組みは、ますます厳しくなる顧客からの期待に応えるために重要であり、企業が競争を勝ち抜くために役立つ。調査企業であるForresterが開催した「2024 CX Summit North America」では、アナリストがAI戦略に関する洞察を共有し、これらの期待に応えるためのベストプラクティスを提案した。

 「顧客ロイヤリティーを促進するためのAI活用」というセッションにおいて、Forresterのメアリー・ピレツキ氏(バイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト)とフィル・ルビン氏(顧客ロイヤリティーエキスパート)は、予測AIおよび生成AIの活用に関するベストプラクティスと課題を共有した。この技術は、組織によるデータの収集および分析に役立つが、多くの企業は顧客ロイヤリティー向上へのAIの活用に困難を感じている。

 「データ収集に関して、私たちは素晴らしい仕事をしてきた。しかし、それを顧客への対応に生かす点では十分な仕事ができていない。そこに多くの機会がある」(ルビン氏)

予測AIは、文脈の関連性をより重視する必要がある

 予測AIは、データのパターンに基づいて予測をするソフトウェアで、数十年前から存在している。計算能力の進化と顧客データの急増により、1990年代以来効果が向上している。現代のCXチームは、これを利用して顧客の行動を予測し、体験を個別化し、顧客の旅路に沿った課題を先取りして特定することが多い。

 予測AIの進歩にもかかわらず、Forresterのレポート「米国顧客体験指数ランキング 2024年」によると、CXに関するスコアは過去最低を記録した。このスコアは3年連続で低下しており、消費者の期待とブランドが提供するものとの間にギャップがあることを示している。

 カンファレンスのセッションにおいて、ピレツキ氏とルビン氏はブランドに対して、AI戦略を、クッキー型のパーソナライゼーションではなく、文脈に即した関連性の創造に集中させることを提案した。パーソナライゼーションが単に顧客のファーストネームを電子メールに使用することを意味するのに対して、コンテクスチュアルレレバンス(コンテクスチュアルマーケティング)は、価値あるメッセージを適切なタイミングで配信することを意味する。後者は、顧客が知っておくべき情報や特定の商品の割引など、価値あるものを提供するのに対し、パーソナライゼーションは、組織が顧客の名前を知っていることを示すだけになる可能性がある。

 ピレツキ氏によると、単純なパーソナライゼーションでもCXをある程度高めることはできるが、顧客は金銭的なメリットや有益な情報、利便性といった価値を好むという。文脈上の関連性はこのような価値を提供し、これにより顧客ロイヤリティーを高められる。

生成AIを用いたビデオは顧客とのつながりを深める

 予測AIの場合と比較して、ブランドは、顧客ロイヤリティーにおける生成AIのユースケースを適切に見いだしていない。しかし、セッションにおいて、ピレツキ氏とルビン氏は「生成AIが作成したビデオが個別化やコンテクストの関連性を向上させ、それによって顧客ロイヤリティーを高めることができる」と述べた。ルビン氏は、このようなビデオを送ってきたある企業に関する体験も語った。

 「商品などを購入した後、企業のトップからあなた宛にビデオが届き、その中ではあなたの名前が使われている。そして、ビデオは非常に洗練されていて、そのビデオがあなたのために作られたかのような感覚になる。これは顧客と企業のつながりを確実に向上させる」(ルビン氏)

 また、ピレツキ氏も次のように述べた。

 「私は銀行からビデオを受け取った。彼らは私の名前を呼び、2023年に私がどれだけ節約したかを示してくれた。また、私がまだ活用していない利益の幾つかについても詳しく説明してくれた。非常に個人的な体験だった」

 AIが生成するコミュニケーションに過度に依存すると、顧客に非人間的な印象を与え(注7)、顧客ロイヤリティーの取り組みに悪影響を及ぼす可能性があるが、AIが作成した高品質なビデオは顧客のポジティブな感情を呼び起こすようだ。

生成AIを試すブランドへのアドバイス

 生成AIの迅速なコンテンツ作成能力により、CXチームは顧客からの電子メールに対する返信やソーシャルメディアへの投稿など、さまざまなタスクを自動化できる。しかし、自動化が進んだからといって、必ずしも収益性の高い組織になるとは限らない。

 「私たちは生成AIの問題に直面している。誇大広告や不正確なデータ、場合によっては節約できた額よりもテクノロジーのコストの方が高いという負のROI(投資収益率)、消費者の信頼の欠如も見られる」(ピレツキ氏)

 これらの課題を回避するために、組織はコスト削減のみを目的とせず、CXと収益を改善できると考えられる場合にのみ生成AIを導入すべきだ。ルビン氏によると、CX担当者の多くは効率性と有効性を取り違えており、それがCXの低下を招く可能性があるという。

 「結局のところ、より効果的で収益性の高いサービスを提供しなければならない。生成AIの活用によりコストに関連する問題の多くを解決できるかもしれないが、より多くの収益を生み出さなければ、成長はない」(ルビン氏)

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