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Copilotを中小企業でどう使う? 成功事例から学ぶ

米Microsoftが「Microsoft 365 Copilot」の活用事例を公開した。各国の中小企業やスタートアップ企業がCopilotでどのように業務効率化や生産性向上を実現しているかを参照できる。

» 2025年02月13日 08時00分 公開
[金澤雅子キーマンズネット]

 世界各国の企業が「Microsoft 365 Copilot Business Chat」(以下、Copilot)を活用した業務効率化や生産性向上などに手応えを得はじめているようだ。特に中小企業は、俊敏かつ革新的なアプローチでCopilotを活用し、ワークフローの最適化や事業成長を実現しているという。その成功事例は、業界や企業規模に関係なく、あらゆる企業の参考になるとして、Microsoftは、2025年1月28日付のMicrosoft Blogで、中小企業やスタートアップ企業によるCopilotの成功事例を紹介した。

中小企業でも増えるCopilot事例 どう活用する?

 Copilotは、ワークフローの合理化や生産性向上に貢献し、事業アイデアの実現や市場投入までの時間を短縮する助けになるとMicrosoftは主張する。MicrosoftがForresterに委託した調査“The Projected Total Economic Impact of Microsoft 365 Copilot for SMBs”(Microsoft 365 Copilotの中小企業に対する総経済的影響予測)によると、市場投入までの時間が短縮されることで調査対象企業の売上が最大6%増加したことが判明したという。

 Copilotでワークフローの合理化や生産性向上を実現した実例として、Microsoftは、イギリスのバイオテクノロジー企業Morula Healthの例を挙げる。同社は、「Word」でCopilotを使用して複雑な科学データ表などを要約し、コンテンツ作成の時間を数週間から数日へと短縮した。業界の厳格な精度や信頼性に関する基準を満たしたコンテンツを短期間で作成できるようになったことで、従業員はデータ分析により多くの時間と労力を割けるようになり、最終的には出力品質が向上したという。

 日本のAIベンチャー企業PKSHA Technologyは、「Teams」でCopilotを使って顧客フィードバックを分析し、製品開発の方向性の特定につなげている。これにより、納期を短縮し、製品納品の遅延を最小限に抑制できたという。

 また、アメリカの食品会社Newman's Ownは、WordのCopilotを利用して、キャンペーンブリーフの作成時間を従来の3時間から30分に短縮した。これにより、同社のマーケティングチームは、新キャンペーンを通じたソーシャルトレンドの把握を迅速化したという。

Copilotで業務効率化やコトス削減を推進

 Copilotの大きな利点の一つは、チームが繰り返し行う時間のかかるタスクを管理できることだ。Copilotの活用で、報告書の作成や、情報の要約、スケジュール管理などの定型作業を加速できる。これらを自動化することで、時間を節約できるだけでなく、エラーのリスクを減らし、チームが創造的な問題解決や革新に集中できるようになるとMicrosoftは説明する。

 また、Copilotは、コスト削減にも寄与できる。Forresterの調査によると、調査対象企業は運営コスト(59%の企業が1%から20%削減)やサプライチェーンコスト(51%の企業が1%から10%削減)で節約を実現したことが分かった。

 Copilotを効率性の向上に役立てている企業の事例として、カナダの機関投資運用会社British Columbia Investment Management Corporation(BCI)は、手動タスクの自動化により、業務変革を実現した。Copilotで業務メモや要約からレポートを作成できるようにし、集中議論での活用や効果的な問題解決が容易になった。Copilotの活用により、迅速かつ効率的な財務分析や意思決定プロセスの改善が実現し、従業員の生産性が10%から20%向上したという。

 金融インフラプラットフォームを開発・提供するイギリスの企業Flowwは、Copilotでデータ管理の効率化した。Word、Excel、Teams、Outlookなど、違い形式で届くデータから、技術文書や財務データ、規制要件に関するデータをまとめ、従業員が理解し、活用しやすい形に変換する。異なるリソース間のデータ照合が容易になり、共同作業を効率化できた。Copilotが、組織内の「共有脳」のような役割を果たしているという。

 高性能自転車製品を製造/販売するイギリスのRider Firmは、Copilotで在庫管理を改善した。ExcelでCopilotを使用し、製品仕様の統合を自動化して、データの標準化と整理を効率化した。これにより、Webサイトの製品データを最新の状態に保つことができ、顧客が求める自転車部品を素早く見つけられるようになったという。

 Copilotの活用で、パーソナライズされたエクスペリエンスの作成も可能だ。アメリカのヘルスケア/ウェルネスサービス企業のSenseiは、SharePointやその連携アプリからェルネスプラクティスに関するデータを取得し、Copilotを使用して患者ケアを強化している。Copilotでこうした情報を組み合わせて、カスタマイズされた推奨事項を作成し、顧客ごとにパーソナライズされた体験を提供できるようにした。これにより、ヘルスケア/ウェルネスの専門家は顧客エクスペリエンスの成果創出に集中する時間を増やせるようになったという。

Copilotでワークフローを最適化

 Copilotの活用により、企業はタスクの自動化だけでなく、ワークフローを変革し、効率性を高めることもできるとMicrosoftは説明する。Copilotは、業務計画や、反復的な手順の合理化、チームワークの効果化を推進し、ビジネス領域の変革を支援するという。

 その実例として、モバイル充電ステーションのサプライヤーであるイギリスのJoosの事例を挙げる。同社は、PowerPointでCopilotを使用して、営業提案のパーソナライズを実現した。最新情報を基に、顧客に適したセールスプレゼンテーションを作成するなど、顧客エクスペリエンス向上を図っている。従業員の業務効率化も進み、新規顧客との関係構築に割ける時間が増えたという。

 PKSHA Technologyのカスタマーサクセスチームは、ExcelのCopilotを使用して、顧客管理の改善で業務最適化を実現した。膨大な量の顧客データをCopilotで分析することで、1時間未満で最新の洞察を共有できるようになった。従来は3〜4時間かかっていた。チームが顧客に最適な、洞察に富んだ推奨事項を迅速に提供できるようになり、顧客エクスペリエンス向上や顧客との長期的な関係構築に役立っているという。

 また、TeamsでCopilotを活用すると、グローバルなコラボレーションが容易になり、多言語での議事録の文字起こしや翻訳を自動化できる。例えば、Joosでは、チームメンバーが自動翻訳機能を使って会議の要約を他の言語にローカライズし、コミュニケーションを向上させている。その結果、意思決定が迅速になり、プロジェクト管理を効率化できたという。

Copilot導入に役立つリソース集

 Copilotの導入は、一度きりのプロセスではなく、定期的に使用状況を評価し、価値を生み出している領域を見極め、改善点を特定することが重要だとMicrosoftは説明する。使用状況を追跡し、従業員のフィードバックを収集することで、Copilotの使用方法を改善し、自動化によって時間を節約できる領域や、新たに導入を促進できる領域を特定できる。

 Microsoftでは、Copilotの活用するために役立つトレーニングリソースを用意している。Copilotを日常業務にどのように取り入れるかを理解しやすい実践的な学習に役立つという。また、Microsoft 365の各アプリ内から、チュートリアルやリソース、ワークショップの情報などを参照できる。

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