Microsoft 365の法人向けプランは2022年から3年連続で値上げされ、「2025年も価格改定があるのではないか」と不安になる人もいるだろう。Google WorkspaceもAI機能「Gemini Business」が統合されたことで2025年1月15日に全てのプランが値上げされた。この状況を踏まえて、どのプランを選定するかが重要だ。
2024年12月にBusiness Research Insightsが公開した「グローバルオフィススイート業界調査レポート」によると、世界のオフィススイート市場規模は2023年に135億ドルで、2032年には1110億ドルに達すると予測されるという。オフィススイート市場が成長し、次々と機能が拡充される中で、付帯するサービスや機能などの情報をタイムリーにキャッチアップしたい。
そこで、キーマンズネットでは「Microsoft 365とGoogle Workspaceの利用状況(実施期間:2024年1月6日〜1月17日、回答件数:169件)」と題したアンケートを実施し、企業におけるオフィススイートの利用実態を調査した。本稿では、「Microsoft 365」と「Google Workspace」に焦点を当て、直近の価格改定の状況なども踏まえて、企業が契約しているプランやランニングコストなど、調査結果を紹介する。
まずはMicrosoft 365とGoogle Workspaceの利用割合について、2024年の調査と比較しながら見ていく。
アンケート回答者に勤務先で利用しているオフィススイートを尋ねたところ「Microsoft 365」が57.4%と半数を占め、2023年の調査と比較すると9.2ポイント上昇した。次いで「Microsoft Office(パッケージ型)のみ」が11.8%、「Microsoft Office(パッケージ型)とMicrosoft 365を併用」が7.7%と続いた(図1)。
従業員5001人以上の企業に絞ると、回答者の73.6%がMicrosoft 365を利用しており、100人以下の企業では、23.9%がパッケージ版officeのみと回答した。501〜1000人以下の中堅企業ではMicrosoft 365もしくはGoogle Workspaceとパッケージ版Officeとの併用が高い傾向にあった。
Microsoft 365のアプリケーションや機能は多岐にわたり、プランによって使用できるものが異なる。多くの機能を必要としない規模や業種の企業においては、安価なプランを用意している「Google Workspace」との併用を選択するケースが多い。
勤務先で「Microsoft 365を利用している」とした回答者に対して、勤務先で契約しているMicrosoft 365のプランを尋ね、企業規模別にまとめた。
その結果、「Microsoft 365 Business Standard」(22.2%)が最も多く、「Microsoft 365 E3」(19.7%)、「Microsoft 365 Business Basic」(13.4%)と続いた(図2)。中堅・中小企業向けに提供されている「Microsoft 365 Business Standard」や「Microsoft 365 Business Basic」「Microsoft 365 Apps for business」「Microsoft 365 Business Premium」の利用率が60.6%と半数を超え、特に101〜500人の規模帯で多く利用されている。2024年4月から、Microsoft 365およびOffice 365のプランに内包されていた「Microsoft Teams」が単体製品として提供されることになったが、Microsoft 365利用者の大半は「Microsoft 365に内包されたTeamsを利用中」(78.0%)で、「Teamsの単体製品を利用中」(4.5%)や、
「Teamsは利用していない」(11.4%)は少数だった。
同じくGoogle Workspaceユーザーにも利用プランを尋ねたところ、「Business Standard」が最も回答が多く48.6%、「Enterprise」が27.0%(図3)。「Business Starter」「Business Standard」「Business Plus」の利用割合を合計すると56.7%となった。これらのプランの最大利用ユーザー数は300人で、Google Workspaceは中小企業が主なユーザー層であることが見て取れる。
次に、Microsoft 365とGoogle Workspaceの「月額利用料金」の相場をみていこう。まずMicrosoft 365を利用している方に1ユーザー当たりの月額料金を聞いたところ「1000円未満」(14.2%)、「3001〜5000円」(11.8%)、「1001〜1500円」(11.0%)と続いた(図4)。
3000円以下のプランを選択した企業は、46.5%と約半数だったが、2023年12月の前回調査時と比較すると6.1ポイント減少した。2024年4月にはユーザー数が多い「Microsoft 365 Business Standard」が1560円から1874円に、「Microsoft 365 Business Premium」が2750円から3298円に値上げされたことで、1ユーザー当たりの月額料金が3000円を超える企業が増加したものと考えられる(いずれもMicrosoftのWeb Direct価格)。
2025年1月16日には、個人向けプランである「Microsoft 365 Personal」および「Familyプラン」が値上げされ、Personalプランは月額9.99ドル、Familyプランは月額12.99ドルとなった。これはAIアシスタント「Copilot」やAIを活用したデザインツール「Microsoft Designer」が統合されたことが要因だ。本稿公開時点では、法人プランの値上げに関する発表はない。しかし、Microsoftは3年連続で法人向けプランの改定を実施していることを考えると、今後契約更新や新規契約を計画する企業は注視しておく必要があるだろう。
続いて、Google Workspaceの1ユーザー当たりの月額料金は、最多が「1001〜1500円」(20.0%)で、「1000円未満」が20.0%、「1501〜2000円」が10.0%、「2001〜2500円」が10.0%だった。「3000円以下」のプランを選択している企業は65.0%、「2000円以下」は50.0%となった。300人まで利用できるBusinessシリーズの最上位プラン「Business Plus」も3000円以下で利用できることから、中堅・中小企業での利用率が高い傾向にある。
2025年1月15日に、これまでアドオンで有料提供してきたAI機能「Gemini Business」が統合されたことで、Google Workspaceの全てのプランが値上げされた。具体的には「Starter」が680円から800円に、「Business Standard」が1360円から1600円に、「Business Plus」は2040円から2500円に値上げされ、既存契約者は2025年3月17日から新料金での契約となる。
最後に、Microsoft Office 365(パッケージ)の利用状況を紹介する。
まず「Microsoft Office 365(パッケージ型)のみ」の単体利用率は11.8%で、Microsoft 365やGoogle Workspaceとの併用を含めると27.8%だった。一方、2022年3月からの経年比較では、単体利用で14.1ポイント、併用で15.3ポイントと共に減少傾向にあり、Microsoft Office 365(パッケージ型)の利用率は減少傾向にある。特にその傾向が顕著なのが、Microsoft Office 365(パッケージ型)の単体利用で、Microsoft 365への移行が増えていると考えられる。
ただし現時点では、Microsoft Office 365(パッケージ型)から「クラウド型オフィススイートへの移行」について40.0%が「移行する予定はない」としており、リプレースが大幅に進むことはなさそうだ(図5)。
ちなみに、併用含めMicrosoft Office 365(パッケージ型)で利用されているバージョンは「Office 2021」(44.7%)、「Office 2016」(25.5%)、「Office 2019」(19.1%)が上位に続いた。なお、Google WorkspaceとOffice 365を併用している企業は「Office 2016」や「Office 2019」の利用率が高い傾向にあることが見て取れた。両バージョンが2025年10月14日に延長サポートの終了を控えていることから、Office 365から徐々にGoogle Workspaceに切り替えることも考えられる。
以上、前編では企業におけるMicrosoft 365及びGoogle Workspaceの利用実態を紹介した。後編では、両サービスの満足度やよく利用されている機能、利用シーンなどの事例を紹介する。
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