Dot HomesはAIエージェント「Dot AI」を開発した。予約データを基に顧客像や予約行動を再現し、従来高コストだった顧客分析を低コストで実現する。
西武グループにおいて宿泊施設の集客支援を行うDot Homesは2025年9月18日、新たにAIエージェント「Dot AI」を開発したと発表した。累計150施設以上の支援実績と予約データを基盤とし、宿泊施設における予約成立や未成立の理由をAIが再現する仕組みを備える。
宿泊業界では人手不足や広告費の高騰、旅行者ニーズの多様化といった課題が顕在化している。とくに中小規模の施設ではマーケティング調査やデータ分析に十分な資源を投入できず、旅行者にとって最適な宿泊先を見つけることが難しい状況だった。レビューサイトやSNSの普及によって顧客行動は複雑化し、施設が予約成立の要因を把握することは容易ではない。従来の方法はインタビューや調査に時間と費用がかかり、中小施設には負担が大きい。
Dot Homesはこうした背景を踏まえ、近年注目される大規模言語モデル(LLM)ベースの「ソーシャルエージェント」技術を応用。数値的な分析だけでなく、感情や欲求、認知といった心理的要素を内部に組み込み、自然言語による人間らしい意思決定や行動をシミュレーションできる。宿泊施設の予約データと組み合わせることで、施設ごとの顧客理解を高精度に再現できる仕組みを構築した。
新たに発表されているAIエージェントは、匿名化されている予約情報を基に顧客像を生成し、予約に至るまでの思考や行動を再現する。年齢層や旅行動機、行動特性を備えた人物像を自動的に作成する「ペルソナ生成」。複数のペルソナを組み合わせてグループでの会話や検討過程を再現する「ペルソナグループ生成」。施設を知ったきっかけや検討に至った背景を可視化する「シナリオ生成」という3つの主な機能がある。
架空の設定ではなく、実際の予約データに基づくため、施設の魅力を感じている人物を高精度に再現できる。また予約に至らなかった理由も分析でき、公式サイトやSNSでの情報発信方法の改善につなげることも可能だ。従来は高額なデプスインタビューが必要だったが、AIを活用することで低コストかつ短期間で顧客理解を進められる点も利点だ。
これにより中小施設でも大手と同等の顧客分析を行うことが可能となり、地域資源を生かしたプランや体験設計の推進につながる。結果として、旅行者が自分に合った滞在体験と出会う機会の拡大が期待されている。
Dot Homesは今後、本プロダクトの精度向上と実用性を確認するため、年内に実証実験を実施する予定だ。限定的に提供されるこの実験では参加施設が最新の顧客理解手法を先行して体験でき、集客施策の改善に直結するフィードバックを受け取ることができるという。
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