メディア

超アナログ企業が2年でDXして営業利益20%アップ 直面した「3つの壁と2つの注意点」

超アナログだった町の手芸屋はどのようにDXを成功させたのか。京都府の手芸店であるハマヤが「2年間でDXを成功させた」取り組みを、超えるべき3つの壁と2つの注意点とともに紹介する。

» 2026年01月06日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 「ベテラン従業員の勘や経験に基づいて進められる業務をいかにDXするか」は、多くの中小企業に共通する課題だろう。京都府京都市に本社を置き、「手芸一筋五十年」で町の手芸屋さんとして事業を展開してきたハマヤも同じ課題を抱えていた。

 本記事では、ハマヤのクリエーション事業部に所属する永井執行役員による講演を基に、同社がどのようにDXを成功させたのかを紹介する。

本稿はアイティメディア主催のオンラインイベント「変わる情シス」における、永井氏の講演「ベテランの勘頼みだった老舗卸はどうDXした? ハマヤに学ぶデータ活用と生産性向上のコツ」の内容を基に構成した。

超アナログな業務を2年でDX、新ブランドの立ち上げにもつながる変革

 かつてのハマヤは、手芸用品の卸売業およびEC販売業を営み、経営の多くを個人の経験や勘に依存していた。しかし現在では、卸売業・EC販売業に加え、DX支援事業や受託開発事業へと事業領域を拡大している。わずか数年の間に、同社にはどのような変化が起こったのだろうか。

 永井氏は「ハマヤでは2年間でDXを成功させた」と語る。まずは、同社が長年展開してきた手芸用品の卸売業について、そのビジネスモデルを図を基に見ていこう。

図1 ハマヤのビジネスモデル(出典:ハマヤの提供資料) 図1 ハマヤのビジネスモデル(出典:ハマヤの提供資料)

 ハマヤのビジネスモデルには「データ管理」という概念が存在せず、商品の在庫管理や発注管理、入荷管理といった業務は個人の勘や経験に基づいて行われ、業務で取り交わされるのは紙のメモや記録だったという。

 永井氏は「まさに超アナログだった。注文請けと発注における確認事項は電話でやりとりしており、社内にノウハウやデータが蓄積しなかった。また、仕入や入荷管理における計算は電卓を使っており、伝票作成や発送作業に必要な書類は全て手書きで作成されていた。伝票は5枚複写の形式が採られており、データ分散およびデータ消失のリスクが常に存在した」としている。

 このように、かつてのハマヤでは各業務が属人的に進められており、経営陣が最新のデータを確認しようとしても、手元に集められるのは半年前のデータに限られていたという。

 そこでハマヤではこのアナログな経営を変革するため、業務のデジタル化とともに、データの収集、活用が進められた。永井氏によると、DXに取り組んだことにより、図のような成果が得られたという。

図2 DXの成果(出典:ハマヤの提供資料) 図2 DXの成果(出典:ハマヤの提供資料)

 さらに、DXの成功は新規事業や新ブランド「amioto」の立ち上げにつながった。DXにより従業員に余裕が生まれたからこそ、新たな挑戦に時間を割けるようになり、積極的なアイデアが次々と生まれるようになった。

DXのために超えるべき3つの壁と2つの注意点

 ここからはハマヤがDXにどのように取り組んだかを確認していこう。

 永井氏は、DXに必要なものとして「DXを推進するメンバーの覚悟」を挙げている。覚悟があったからこそ、手間のかかるデータ収集に取り組み、分析の結果に基づいた大胆な変革に着手できたという。

 永井氏は「DXに覚悟が必要なのは、『時間がない』『お金がない』『不満がでる』の3つの壁があるためだ」とする。

 同氏は「従業員は現在の業務に手いっぱいで、データを整理する時間を捻出できない。また、ハマヤ全体でITに関する知識が少なく、IT投資の費用対効果を正確に認識するのが難しかった。こうした状況が重なり、『現在の業務のままでよいのではないか』との声も挙がった。データ化により、自分の仕事ぶりが可視化されることに対する漠然とした不安もあったと感じる」と述べた。

 これら3つの壁を乗り越えるために覚悟が必要だったとし、「覚悟をもって、夢(目標)を描き、現在地を確認し、ギャップを知り、行動するとDXを成功させられる」と永井氏は語る。

 また、ハマヤでは、「システム導入はゴールではなく、目的を達成する手段だと意識する」ことと、「効果がでる+最小限のパワーで実行できることから始める」ことの2点に注意しながらDXを着実に進めた。

 永井氏は「手作業で行われていた業務を細部に至るまで正確に理解し、すぐにシステム化するのではなく、手作業でデータを収集しながらDXを行うべき業務の優先順位を決めていった。その際、基準にしたのが『効果がでる+最小限のパワーで実行できる』ことだ」と語る。

 DXの実現に当たり、ハマヤは「Google Workspace」の主要アプリケーション群を活用した。なかでも特に活用したのが「Google スプレッドシート」「Google Apps Script」(GAS)の2ツールだという。

 これらのツールを活用した1つ目の事例として、永井氏は発注管理業務の効率化に触れた。かつてのハマヤでは壁にメーカー別のポケットがあり、各スタッフが発注したい商品を用紙に手書きしてポケットに収めていた。各スタッフが自由に発注するため、最終的な発注数を電卓で集計しなければならず、手書きゆえに誤字や脱字が多かったという。

 こうした業務をDXするために、スプレッドシートとGASを使って簡単な発注システムを構築した。各スタッフが発注したい商品を入力すると自動で集計・通知され、ワンクリックで印刷および振分けができるシステムだ。

図3 発注管理業務のDX(出典:ハマヤの提供資料) 図3 発注管理業務のDX(出典:ハマヤの提供資料)

 これにより、今まで5人で対応していた発注管理業務に1人で対応できるようになり、データを用いて在庫管理や将来の発注予測もできるようになったという。

 2つ目の事例は、発送管理業務の効率化だ。かつてのハマヤでは、発送状況を確認する際に配送伝票の山から対象の顧客の伝票を目視で探していた。伝票が見つからず、顧客からの質問に直ちに回答できないことも多かったという。

 こうした業務をDXするために、ハマヤは運送企業が提供する送り状発行システムを導入した。送り状をPCで発行し、配送データをバーコードリーダーで読み込み、スプレッドシートに記録した。そして1日の業務の最後に「出荷通知」ボタンを押すと、蓄積された発送データに基づいて出荷通知がクラウドに保存され、顧客に自動で通知が送られる仕組みを構築した。これにより顧客満足度が向上し、問い合わせ対応の時間を年間で700時間削減した。

図4 発送管理業務のDX(出典:ハマヤの提供資料) 図4 発送管理業務のDX(出典:ハマヤの提供資料)

 永井氏は当時を振り返り、「これらのシステム構築を外部ベンダーに依頼できるような資金はなかった。資金がなかったからこそ知恵をしぼって工夫し、当社のような中小企業でもDXを成功させる方法を見つけることができた」と語る。

DXの成功には目的を見失わないことが重要

 永井氏は、DXを成功させるために覚悟をもって泥臭く取り組むことの大切さを強調し、大規模なシステムを導入できないとしても、従業員同士のコミュニケーションの方法を変えたり、人員配置を変えたりすることで業務を効率化できるとした。

 目的を見失わずに手段に工夫を凝らすことが重要で、DXには決裁者も積極的に取り組むべきだという。「これらを徹底して、私たちは0円でDXを成功させた。超アナログだった町の手芸屋でも変革を起こすことができた」と永井氏は述べた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。

アイティメディアからのお知らせ