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「水冷GPU」の商用利用フェーズ間近か? コンテナ型DCで安定稼働と電力効率を実証

NTTPCコミュニケーションズは、水冷GPUサーバの運用効率向上を目的としたPoCに成功した。コンテナ型データセンターでの統合検証により、高い電力効率を記録し、国内での商用利用に向けた有効性を確認した。

» 2025年12月24日 07時00分 公開
[後藤大地キーマンズネット]

 NTTPCコミュニケーションズは2025年12月17日、水冷GPUサーバの運用効率向上を目的としたPoC(概念実証)に成功したと発表した。コンテナ型データセンターで水冷GPUサーバを使った統合検証を実施した結果、電力効率を示す指標であるpPUEで1.114を記録し、国内での商用利用に向けた有効性を確認した。今回のPoCは、NTTPCコミュニケーションズとゲットワークス、フィックスターズの3社による共同検証として実施された。

水冷GPUの商用利用も? コンテナ型DCで安定稼働と高効率を実証

 企業における生成AIやHPCの活用が本格化する中、高性能GPUサーバの需要は急速に拡大している。GPUの高性能化に伴い、水冷方式への対応が不可欠だ。だが、国内のデータセンターは今も空冷方式が主流であり、水冷GPUサーバの商用事例は限定的だ。さらに、GPUの性能を最大限に引き出すには、データセンターとGPUサーバ、ソフトウェアを横断した統合的な調整が求められるものの、個別最適にとどまるケースが多く、それが課題となっている。

 今回のPoCでは、GPU専用のコンテナ型データセンターで水冷GPUサーバを実機稼働させ、商用利用を想定した環境下で安定性と性能、電力効率を総合的に検証した。データセンター設備とGPUサーバ、ソフトウェアを統合的に調整した環境を構築し、各種負荷条件下での計測を通じて、水冷方式と空冷方式のGPUサーバの性能を比較評価した。

 検証の結果、コンテナ型データセンターにおいて水冷GPUサーバを商用利用できる有効性が確認された。水冷方式では、最大負荷時のGPU平均温度が空冷方式と比べて約15℃低下し、冷却分配装置(CDU)を含む冷却設備が適切に機能していることが示された。さらに、サーバ負荷や温度をリアルタイムで可視化し、InRow空調制御やコンテナ内キャッピングを組み合わせることで、モジュール単位やサーバルーム単位の電力使用効率を示すpPUEを統合的に収集・管理できる運用基盤を構築した。

 その結果、pPUEは1.114を記録した。pPUEとはデータセンターの一部における電力効率を示す指標であり、水冷式の大規模データセンターでは1.1前後が高水準とされている。今回の数値は、比較的小規模なコンテナ型データセンターにおいても高い電力効率を実現できることを示した結果と言える。

検証結果の一例(出典:NTTPCコミュニケーションズのWebサイト)

 今回のPoCでは、NTTPCコミュニケーションズが大規模GPUクラスタを提供してきた実績を生かし、ハードウェアエンジニアリングの観点から検証を主導した。ゲットワークスは新潟県越後湯沢の湯沢GXデータセンターにおいて商用環境と同等の20フィート型コンテナデータセンターを提供し、キャッピングを含む環境調整を担当した。フィックスターズは水冷GPUサーバおよび冷却設備を提供し、コンテナ内の環境とハードウェア、ソフトウェアを一元管理する統合モニタリングツールを構築した。

 3社は、高性能GPUサーバの普及に伴い、水冷GPUサーバの需要が今後さらに拡大すると見込んでいる。日本国内におけるコンテナ型データセンターの商用利用拡大に向け、引き続き連携して取り組んでいく方針だ。

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