HFS Researchの報告書によると、多くの経営者はAIがコスト削減に寄与すると考えている。一方、セキュリティ上の欠陥や統合の複雑さについて懸念する声もある。
調査企業のHFS Researchと、ノーコード開発プラットフォームを提供するUnqorkが2025年11月18日(現地時間、以下同)に公表した報告書によると(注1)、企業がAIを急速に導入および展開する中で、全体の43%はAIツールが自社内に新たな技術的負債を生み出すのではないかと懸念しているという。この報告書は、HFS Researchが、「Global 2000」(経済誌『Forbes』が発表する世界の有力企業2000社のリスト)に掲載される規模の大手企業に所属する経営者を対象に、2025年9月に実施した調査に基づいている。
同報告書によると、AIが技術的負債に与える長期的な影響については依然として見解が分かれているようだ。55%は技術的負債が全体として削減されると予想する一方で、45%は増加を懸念している。
HFS Researchのフィル・ファーシュト氏(CEO兼チーフアナリスト)は、報告書に添えられたプレスリリースで次のように述べた。
「AIは万能薬ではなく、企業のテクノロジースタックにすでに存在している要素を増幅させる存在だ」
企業は、最終的にはコスト削減につながると期待してAIに投資しているが、その実態はどうなのか。
ITソリューションプロバイダーであるCDWが2025年の初めに公表した報告書によると、AI投資によるリターンは依然として企業にとって把握しにくいものとなっており、ITリーダーや意思決定者の約3分の2は、AIのROI(投資対効果)は50%以下だと見積もっている(注2)。CDWの調査対象となったほぼ全ての組織でAIプロジェクトが進行しているが、ITリーダーたちは損益分岐点に達するリターンをまだ得られていないと回答している。
しかし、ROIの伸び悩みは企業がAIの活用計画を前進させる上で足かせになっていない。企業は、この技術が将来もたらす可能性に目を向けている。HFS Researchの報告書によると、調査回答者の84%が、AIによってコストが削減されると期待しており、80%は生産性の向上がもたらされると見込んでいる。
ベンダー各社は、企業によるAI活用の動きを追い風にしている。NVIDIAは第3四半期の売上高が570億ドルに達し(注3)、前年同期比で62%の成長を記録した旨を報告した。これは、さまざまな業界における企業のAI需要の高まりに応えるため、ハイパースケーラーがインフラ構築に多額の投資をしていることを示している。
大手小売チェーンのWalmartおよび金融サービス企業のBank of New York(BNY)、老舗ジーンズブランドのLevi Strauss(Levi's)は、事業目標の達成に向けてAIプロジェクトを開発または導入している企業の一部だ。Levi'sは2025年11月初めの発表で、特定の業務を簡素化および自動化するために、Microsoftと協力してAIエージェントフレームワークを構築する計画だと明らかにした(注4)(注5)。
一方、AIの導入が急速に進むにつれ、IT部門の責任者には新たな悩みも生じている。HFS Researchによると、AIが既存の技術的負債をさらに増やしてしまう可能性もその一つだ。
調査対象者の59%は「セキュリティ上の脆弱(ぜいじゃく)性を懸念している」と回答し、50%は統合の複雑さに不安を示した。加えて、AIがテクノロジー全体に拡大していく中でブラックボックス化する挙動も新たな懸念となっており、42%が技術の可視性を失うことを恐れている。
HFS Researchのプラクティスリーダーであり、同報告書の著者でもあるハンサ・アイエンガー氏はプレスリリースで次のように述べた。
「私たちの調査は、企業が変革に伴う経済的な現実に気付き始めていることを示している。本当のコストが発生するのはソフトウェアの購入ではなく、その維持や統合の場面だ」
(注1)AI Won't Save Enterprises from Tech Debt Unless They Change the Architecture First(HFS)
(注2)ROI, full-scale deployment of AI remains elusive(CIO Dive)
(注3)Nvidia shows strong AI demand as enterprises grapple with ROI(CIO Dive)
(注4)Levi’s picks Microsoft to deploy ‘super-agent’(CIO Dive)
(注5)Levi Strauss & Co. Partners with Microsoft to Build Next-Gen Super-Agent(Business Wire)
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