キーマンズネットで毎年恒例で実施している読者調査で、2026年にIT予算の増額を予定している項目として最も多く選ばれたのは、2025年までは選択肢に入っていなかった「ある項目」だった。それは何か。
2026年度 IT投資トレンドレポート(最終確定版)
キーマンズネット編集部は2026年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「システム運用」「生成AI/AIエージェント」「業務自動化」「VMware」「データ活用」「情報収集」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2025年11月26日〜12月24日、有効回答数408件)。今回は番外編として「IT投資」を取り上げる。
各IT関連項目について「2025年度と比べた予算の増減予定」を尋ねたところ、2026年度のIT予算が「増額される見込み」と回答した割合は23.0%で、前回調査(2025年)の増額15.0%と比べると、8ポイントという大幅な伸びを示した。IT予算全体が大きく伸びる中で、「増額して投資する」という回答が最も多く集まった項目は何か。
IT人材の中でも特に不足が課題視されている領域や、AIブームの中でAI投資に起きている変化とともに見ていこう。
初登場なのに1位になった項目は?
「先に動く企業」と「様子見の企業」の温度差
なぜ課題を解決するための投資が実施できないのか
人材不足という根本問題
2026年度に「投資を増額する」という回答が最も多く集まった項目は2つあった。一つは2025年も1位だった「セキュリティ対策」(28.4%)だ。前回調査(2025年)に「前年よりも増額する」と答えた割合(15.2%)をさらに上回っており、日本企業を対象としたサイバー攻撃のニュースが広く報じられる中で多くの企業が対策を強化していることが分かる。
もはや「殿堂入り」とも言える「セキュリティ対策」と同じ28.4%を集めたのは、2025年は選択肢に入っていなかった「ある項目」だった。
今回初登場でセキュリティと同率1位になった項目とは、「AIエージェント」だ。3位以下は「AI/機械学習」(26.0%)、「クラウドIT基盤(IaaS、PaaS)」(15.7%)が続いた(複数選択可)。
AIエージェントの定義は揺れている部分もあるが、あらかじめ決められたルールに基づき、環境の変化に合わせて自律的に判断して動く点が特徴と言われる。
今回の調査によると、AIエージェントは業務自動化のツールとしても「RPA」(62.3%)、「AI(生成AI、機械学習、ディープラーニングなど)」(52.1%)、「ローコード/ノーコード」(39.3%)に次いで利用されている(複数選択可)。一定数の企業のAI活用が「既存の仕事の一部分をAIを使ってラクにする」フェーズから、「AIに仕事を代替させる」フェーズに移り変わりつつあることがうかがえる。
なお、「セキュリティ対策」に対し、「2025年と比べて増額する」、あるいは「2025年と同額投資する」を選んだ回答者の合計は72.5%と全項目中1位で、もはや削れない"聖域"化している様相もある。
一方、「AIエージェント」に対して2025年よりも増額、あるいは同額投資すると回答した人の割合は52.9%で、AIブームといえどもセキュリティ対策ほどの存在感はまだ示していない。生成AIのように大企業を中心としつつ多くの企業の業務に組み込まれるようになるのか、それともRPAのようにある程度普及した後は勢いが低下するのか、注目したいところだ。
投資している企業としていない企業の間には、課題の深さにも解決への期待値にも、はっきりとした「温度差」がある。「IT投資によって課題が解決に近づく」と回答した割合は、投資継続・拡大層では64.4%に上るのに対し、投資縮小・未導入層では47.8%にとどまった。
この温度差はどこから生まれているのか。従業員規模別に見ると、投資継続・拡大層では従業員5001人以上の企業が占める割合が29.2%であるのに対し、投資縮小・未導入層では11.9%にとどまる。逆に、100人以下の企業が占める割合は投資継続・拡大層では16.2%、投資縮小・未導入層では43.3%と、中小企業はAIエージェントへの投資に及び腰であることが分かった。
今回の調査ではITに関する課題も尋ねている。AIエージェントに対する投資を前年と比較して「継続する」「拡大する」層(継続・拡大層)と、投資を「縮小する」「投資しない」層(縮小・未導入層)の違いを比べたところ、興味深い点が見えてきた。
投資縮小・未導入層は、投資継続・拡大層に比べて、ITに関連する課題として「全社的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れ」を選ぶ割合が11.7ポイント高く、「セキュリティ対策の遅れ」を選ぶ割合も17.3ポイント高かった。
投資縮小・未導入層は、IT投資の効果に対する期待も低いようだ。IT投資によって上記で選んだ課題が解決に近づくかどうかを尋ねたところ、投資継続・拡大層で「大幅に解決に近づく」「ある程度は解決に近づく」という解答を選んだ割合は合計64.4%に上ったのに対し、投資縮小・未導入層で同様の回答を選んだ割合は合計47.8%にとどまった。逆に、「あまり解決に近づかない」「全く解決に近づかない」の割合は、投資縮小・未導入層では合計44.8%で、投資継続・拡大層で同様の回答をした人の割合を16.6ポイント上回った。
では、なぜ課題解決に向けたIT投資が不十分なのだろうか。投資縮小・未導入層は「経営層がITやDXの重要性を理解していないから」を最も多く選んでおり、「投資対効果(ROI)を具体的・定量的に示せないから」「短期的な成果が求められ、中長期的な投資が後回しにされるから」が続いた。
一方、投資継続・拡大層も悩みと無縁であるわけではない。「IT人材(開発、運用)の不足」(53.7%)、「サイバー攻撃への対応」(44.0%)、「IT人材(IT企画及びIT戦略立案)の不足」(43.1%)といった各種人材不足の悩みが特に深いようだ。
課題解決に向けたIT投資が不十分な背景には、「予算要求や企画を担える人材が不足しているから」(32.8%)が最も多く選ばれた。積極的な投資姿勢を見せる企業であっても、投資の実行フェーズにおいては「企画を担える人材の欠乏」が最大のボトルネックとして立ちはだかっている実態が浮き彫りになった。
こうした人材不足の余波か、「短期的な成果が求められ、中長期的な投資が後回しにされるから」(29.5%)や「投資対効果(ROI)を具体的・定量的に示せないから」(26.2%)といった項目も多く選ばれており、攻めのIT投資を推進する上でも「人材」という基盤の脆さが影を落としている。
前回調査(2025年)では、2024年度と比較して投資額を「増額」するという回答が最も多く集まった項目は「生成AI」(21.8%)だった。今回調査では生成AIを独立した項目としては扱っていないものの、生成AIを含む「AI/機械学習」を選んだ割合は26.0%でさらなる伸びを見せており、AIへの投資がさらに過熱している様子が浮かび上がった。
逆に投資額を「減額する」という回答が最も多く集まった項目は何か。前回(2025年)調査では「テレワーク/モバイルワーク環境整備」(9.6%)だったが、今回は「PC/PC管理」(10.5%)がトップだった。
「Windows 10」のサポート終了(2025年10月)を見越して前年に買い替えを済ませた企業が多く、その反動が出ているとみられる。
「投資しない」という回答が最も多く集まったのは「マーケティングや営業ツール(MA/SFA/CRMなど)」(20.1%)だった。これからAIを活用したい領域としてマーケティングや営業領域は各種調査で比較的上位に位置していることが多いが、出社回帰で需要が低減したとみられる「テレワーク/モバイルワーク環境整備」(19.9%)と同様に、ツール自体への投資意欲は低いようだ。
これらに比べると目立つ順位ではないが、気になるのが、「IT分野でのリスキリング、IT人材育成」に「減額して投資」(5.1%)、「投資しない」(15.0%)という回答の割合が比較的多いことだ。
ITに関連する課題の2トップに「IT人材(開発、運用)の不足」(52.5%)、「IT人材(IT企画及びIT戦略立案)の不足」(42.2%)が挙がる一方で、リスキリングや人材育成に「増額して投資」「ほぼ同額を投資」と答えた割合の合計は48.8%だった。先ほど投資が低調として取り上げた「PC/PC管理」の合計56.7%よりさらに7.9ポイント低い。
先ほど言及したように、攻めのIT投資を実施する企業も含め、IT人材不足を課題として認識しつつも、投資をはじめとする取り組みには及び腰という傾向は2026年も続きそうだ。
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