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サーバCPUの5000倍? 中身を見ずに計算しちゃうIntelの爆速新型チップ:872nd Lap

Intelが開発中の“5000倍チップ”が話題だ。だが、驚くべきは性能だけではない。このチップ、どうやらコンピューティングの前提そのものを変えてしまう可能性があるという。一体、どういうことか。

» 2026年03月27日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 半導体(チップ)の歴史は長い。1947年にベル研究所がトランジスタを発明し、1958年にはテキサス・インスツルメンツがシリコンで世界初のIC(集積回路)を開発した。翌1959年には、シリコンウェハに複数のICを形成するプレーナ型ICも登場し、現在の半導体技術の土台が築かれた。2000年代に入ると高性能化に加えてSoC化も進んだ。

 その進化の流れの中で、いま少し気になる新しいチップが登場しつつあると話題だ。現行のサーバ向けCPUと比べて最大5000倍という、とんでもない処理性能を持つCPUをIntelが開発中だという。注目すべきは単なる「速さ」ではないらしい。

 Intelが開発を進めている新型チップ「Heracles」は、「Fully Homomorphic Encryption」(FHE、完全準同型暗号)を実用化するための専用アクセラレーターだ。FHEとは、データを暗号化したまま計算処理を実行できる暗号技術であり、従来のように平文へ復号する必要はない。

 この技術が注目を集めたきっかけは、2026年3月10日に技術メディア「IEEE Spectrum」が関連記事を掲載したことにある。記事では、クラウドAIの利用時に個人情報の漏えいを懸念するケースや、遺伝子情報のような機微データを外部サービスへ送信する際の不安が例として挙げられている。FHEを使えば、こうしたデータを暗号化したまま処理できるため、プライバシー面での不安を軽減できる。

 しかしFHEは、従来のCPUやGPUでは処理負荷が非常に高く、平文計算と比較して数千倍から数万倍のコストがかかるという。そこで登場したのが、FHE処理に特化した専用チップであるHeraclesだ。

 Heraclesは、一般的なプロセッサとは異なるアーキテクチャを採用したFHE専用アクセラレーターであり、3ナノメートルのFinFETプロセスで製造されるほか、高帯域幅を誇るHigh Bandwidth Memory(HBM)を搭載。暗号計算に最適化された並列処理能力を備えている。同社のハイエンドサーバ向けCPUと比較して、FHE処理を約5000倍高速化できるとされる。

 実際に2026年2月に開催されたISSCC 2026では、Heraclesのライブデモが実演された。オンライン投票システムを想定し、投票者IDと投票内容を暗号化したまま送信、検証するという実験では、従来の「インテル Xeon プロセッサ」(Xeon)で約15ミリ秒を要した処理が、Heraclesでは約14マイクロ秒で完了した。さらに1億票規模の処理では、Xeonで17日以上かかるのに対し、Heraclesではわずか23分で完了するという差が示された。

 このプロジェクトは約5年前に開始され、米国防高等研究計画局(DARPA)のプログラムのもとで進められてきた。国家プロジェクトとしての側面もあり、その応用範囲は医療、金融、AIサービスの他、軍事・国防分野における機密データ処理にも及ぶと考えられる。

 もっとも、FHEは依然として発展途上の技術であり、計算コストの高さやソフトウェア最適化の難しさといった課題が残されている。実用化にはまだ数年かかるとみられるが、この新しい仕組みが現実のものになりつつある。

 FHEは「データの中身を明かさずに活用する」という、新たな情報処理の在り方を切り開く可能性を秘めている。今後の技術開発と製品化の進展が期待される分野だ。


上司X

上司X: Intelが、現行のサーバ向けCPUと比べて最大5000倍もの性能を持つチップ「Heracles」を開発し、デモに成功したという話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: それはすごい。でも、FHE技術に特化したチップなんですね。


上司X

上司X: ああ。CPUのように中心的な役割を担う、というよりFHE技術のための「アクセラレーター」として使われるチップのようだ。


ブラックピット

ブラックピット: GPUやNPUみたいな感じですかね。


上司X

上司X: そうだと思う。GPUやNPUみたいに、徐々に標準機能になっていくのかもしれないな。


ブラックピット

ブラックピット: ですが、暗号化のまま演算できるってよく考えるとすごいことですよね。


上司X

上司X: ああ。実際のデータの中身が分からないような状況で処理するんだからな。


ブラックピット

ブラックピット: DARPAが開発を依頼するぐらいですからねえ。これからのサイバーセキュリティにも欠かせない存在になるのかもしれません。


上司X

上司X: 今みたいに暗号化や復号なんてプロセスを挟まずに、全て安全性の高い通信、データのやりとりが可能になる新しいコンピューティング環境が生まれるかもしれない。まあ、まだまだ実用化は先の話だけど、そんな未来が来ることを期待して待ちたいものだよ。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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