給与や人事、発注、労務管理に関わる制度変更や制度見直しなどが進んでいる。中堅・中小企業の実務に関連しそうな5つの変化を、公式資料を基に整理した。
2026年度の始まりに合わせて、給与、人事、発注、労務管理に関わる制度変更が相次いでいる。とはいえ、法改正を細かく全部追うのは大変だ。そこで今回は、厚生労働省や公正取引委員会などの公式資料を基に、編集部が「これは中堅・中小企業の実務にも関係しそうだ」と感じた5つの変化を拾ってみた。新年度の“変化のメモ”として斜め読みしてほしい。
本稿で取り上げるのは以下の5点だ。
まず気になるのは、雇用保険法に基づく雇用保険料率の見直しだ。厚生労働省によると、2026年度の雇用保険料率は1.35%(13.5/1000)となる。内訳は労働者負担は0.5%(5/1000)、事業主負担は0.85%(8.5/1000)だ。数字だけを見ると小さな変化だが、給与計算や控除額の設定に関わってくる。なお、この割合は一般の事業を対象にしており、農林水産や清酒製造の事業、建設の事業では異なる。
出典:令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内(厚生労働省)
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく情報公表義務が強化される。2026年4月からは、これまで主に従業員301人以上の企業が対象だった男女間賃金差異の公表義務が、101人以上の企業にも広がる。さらに、101人以上の企業では女性管理職比率の公表も求められる。採用広報の話というより、人事データを整理して外に出せる状態にしておく必要があるという点で、かなり実務寄りの変化といえる。
出典:男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務が拡大(厚生労働省)
「法改正の名前は聞いたが、実務はまだ昔のまま」になりやすいのがこのテーマだ。「製造委託などにかかわる中小受託事業者に対する代金の支払の遅延などの防止に関する法律」、いわゆる「中小受託取引適正化法」(取適法)は、旧来の「下請代金支払遅延など防止法」(下請法)の見直しを含む制度で、2026年1月1日から施行されている。公正取引委員会の案内によると、手形払いの禁止や、「3条書面・5条書類」から「4条明示・7条記録」への見直しなどがある。発注側だけでなく、受注側にとっても、取引条件をどう残すかを見直すきっかけになりそうだ。
出典:2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(公正取引委員会)
出典:中小受託取引適正化法 テキスト(公正取引委員会・中小企業庁)
2026年4月から適用されるのが、労働安全衛生法に基づく高年齢者の労働災害防止のための指針だ。これは直ちに一律の新罰則を課すものではないが、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理などについて、事業者が講ずるよう努めるべき措置を示したものだ。採用や継続雇用を進めるなら、人数を確保するだけでなく、無理なく働ける現場づくりまで含めて考える必要がある。
出典:「高年齢者の労働災害防止のための指針」について(厚生労働省)
出典:高年齢労働者の安全衛生対策について(厚生労働省)
まだ義務化されていないが今後そうなる可能性が高いのがストレスチェックだ。労働安全衛生法の改正によって、これまで努力義務とされていた50人未満の事業場におけるストレスチェックは義務化の方向が決まっている。ただし、施行時期は公布後3年以内に政令で定める日で、2026年4月に直ちに始まるわけではない。とはいえ、厚生労働省は既に小規模事業場向けの実施マニュアルを公表している。義務化直前に慌てるのではなく、小さな会社でも無理なく回せるメンタルヘルス対策をどう組むか、そろそろ考え始める時期に入ったと見た方がよさそうだ。
出典:「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表します(厚生労働省)
出典:小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(厚生労働省)
出典:ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)(厚生労働省)
新年度の法改正は一気に何かが変わるというより、給与計算、情報公表、発注記録、安全配慮、メンタルヘルスといった日常実務を少しずつ“逃げにくくする”方向に進んでいる。今回の5項目は、その流れを示す小さなサインと見た方がよさそうだ。
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