220年続く物流企業 AIマニュアルで社内ナレッジを標準化
物流企業の鈴与は、AIマニュアル「Teachme Biz」を2017年から活用している。拠点間の共有で多能工化と顧客対応品質の向上を実現し、習熟度管理や災害案内への活用拡大を目指す方針だ。
220年を超える歴史を持つ物流企業である鈴与は、第三DC事業部においてスタディストのAIマニュアル「Teachme Biz」を2017年から約10年活用している。口頭指示への依存を減らし、全工程の標準化や多能工化、顧客との作業確認の効率化につなげた。
写真と動画で未経験者を支援 全工程マニュアルの作成体制
第三DC事業部は、食品や日用品、輸入品などの保管と流通加工、出荷を一貫して担い、埼玉県内に3拠点を置く。出荷精度99.999%を掲げるが、かつては教育が口頭中心で、管理者に知識が集中していた。繁忙期には月100人規模の新規派遣スタッフが入れ替わるため、管理者の不在で現場が止まる恐れがあった。動画を使った分かりやすい手順書や、作業者の視点に立ったマニュアルへの刷新も課題となり、2017年にTeachme Bizを導入した。
近年は法人用の大口案件だけでなく、個人用の小口配送や細かな流通加工の依頼が増え、作業は複雑さを増している。誰が担当しても同じ品質を再現できる仕組みへの必要性が高まる中、継続的に蓄積したマニュアルが現場変化への対応基盤となった。
運用においては、鈴与が作業を設計し、実務を担う鈴与カーゴサービスの現場リーダーが手順をマニュアル化する。担当者の確認と管理者の最終確認を経て、入荷や流通加工、ピッキング、梱包、出荷までの一連の業務について標準化を図る。言葉だけでは伝わりにくい製造工程や梱包手順は動画や写真で補い、未経験者がマニュアルだけで作業できるかどうかを確かめてから公開する。こうした運用により、現場が作成と更新を担い、実務に即した内容を保つ仕組みも定着した。改善を続ける体制も整えた。
同じ荷主の業務を複数拠点で担当する場合は、ある拠点で作成したマニュアルを別の拠点でも参照できる。別部署の資料も閲覧可能とし、同種工程の運用方法を社内で共有している。納品先ごとの条件や同梱物、梱包手順を写真付きで顧客に示し、作業内容を視覚的に確認して合意する用途にも使う。
導入後は、正確な手順へ誰でもアクセスできる環境が整い、担当者交代による停滞リスクが低下したという。スタッフの入れ替えが多い現場でも引き継ぎが円滑になり、他拠点の手順を即時に確認できるため、人手不足時に拠点間で要員を融通しやすくなった。顧客から作業依頼を受けるたびに詳細を確認する負担も減り、作業内容の合意を一度で終えられるようになった。業務品質の可視化は顧客との信頼形成にも結び付いた。
第三DC事業部の野田明子次長は、人手不足が深刻になる物流現場において、誰にでも分かりやすく、迅速に業務を進行できる仕組みが欠かせないと説明した。細かな作業でも担当者を問わず同じ品質を再現できる安定した仕組みは現場に必要な投資だとし、Teachme Bizで知識を積み重ねた経験は、省人化が加速する時代に大きな意味を持つとの考えを示した。
今後は、Teachme Bizのテスト機能と習熟度管理機能でスタッフの習得状況を可視化し、育成効率を高める。倉庫を訪れるドライバーに二次元コードで受付方法を案内する他、水害や地震の発生時に避難経路を掲示する用途も検討している。第三DC事業部は、長年蓄積したマニュアルを土台に、倉庫内外の業務知識を体系化し、省人化や自動化が進む物流現場でも安定した品質を再現できる体制を強める方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
事例で学ぶ! 業務改善のヒント
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
キーマンズネットに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
かんぽ生命が営業報告を50分→10分に AI時代に見直すべき「データ入力」の仕組み
-
2
C言語は「危険」と言われても、専門家が「使う価値は十分にある」と言うワケ:900th Lap
-
3
M365 Copilot全庁展開で月2000時間削減 現場がAIを「使いたくなる」習慣化の仕組み
-
4
6TBファイルのサーバ移行、M365ユーザーの八雲町がSharePointでなく「あえてBox」の理由
-
5
Claude Codeに「仕事を丸投げ」して事故らないための基本運用ルール
-
6
損保ジャパン、2万人の「Gemini活用」どう管理? 推進者が語る「リスク回避」の仕組み
-
7
「カスハラ対応」を個人に任せない 取手市がAIで変えた窓口業務
-
8
社員の「セキュリティ訓練」、他社はどの程度やっている? 気になる隣の実施状況
-
9
「Claude」3倍高速化の裏で、Anthropic開発者が「あえてしなかったこと」:899th Lap
-
10
20年物の基幹システム刷新に、マクロミルがあえて「全てを変えない」と決めた理由
キーマンズネット SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
キーマンズネットをフォロー