もう徹夜はしたくない……現役情シスが地獄の障害対応の後に見直した4つのこと
トラブル対応での徹夜、データ消失、深夜のリリース……。情シス担当者が経験した“地獄”には、次のトラブルを防ぐためのヒントが詰まっている。回答者の声から、再発防止につながる運用の在り方を探る。
前編では、データ消失、システム遅延、夜間のリリース対応など、情シス担当者が実際に経験したトラブルやヒヤリハット事例を紹介した。そんな“地獄の障害対応”を経験した情シス担当者は、そこから何を学び、日々の運用にどう生かしているのだろうか。
今回実施した「実録、情シス戦記 ~あの地獄のトラブルをどう乗り越えたか~/2026年」(実施期間:2026年5月20日~6月12日)では、トラブルを振り返ったフリーコメントから、再発防止策や運用改善へのさまざまなアドバイスが寄せられた。
その声を追っていくと、単に「気を付けるべきこと」だけではなく、トラブルを個人の経験で終わらせず、次の事故を防ぐための仕組みへと変えていくことの重要性が見えてくる。
「もう二度とやりたくない」 情シスを襲った地獄の障害対応
今回の回答には、データ消失による全社員の再入力や、真夜中のリリーストラブル、2日間に及ぶ徹夜対応など、過酷な障害対応の経験が数多く寄せられた。さらに、顧客や社内からのプレッシャーが重なり、心身ともに大きな負担を感じたという声もある。
こうした「もう二度と経験したくない」トラブルを経験した情シス担当者は、そこから何を学び、日々の運用にどう生かしているのか。ここからは、寄せられた声をもとに、再発防止や運用改善につながるポイントを見ていく。
教訓その1:「自分しか分からない」 属人化は障害時に表面化する
システムそのものの問題に加えて、情シスの現場では「誰が対応するのか」という問題もある。
情シスでは人や予算などのリソース不足に加え、緊急性や個別性の高い問い合わせが多く、特定の担当者に対応が偏ってしまう属人化が進んでいる。今回の回答にも、その状況をうかがわせるコメントが寄せられた。
トラブルを振り返って「1人で対応せざるを得ない状況になったこと」をつらかった経験として挙げる人がいる一方、周囲に相談できないまま、1人で抱え込んでしまった経験を振り返る声もあった。こうした状況では、担当者自身の負担が大きくなるだけでなく、担当者がいなければ業務が進まないという問題にもつながる。
そのため、経験者からは「引き継ぎ資料は非常に大事で作っておくべき」という声が寄せられた。さらに、技術力だけでなくコミュニケーション力やドキュメンテーション力を磨くことも重要だという。後から読みやすい報告書や明確な説明を残すことで、個人が持っている経験や知識を周囲と共有できるからだ。
障害対応では目の前の復旧が優先されるが、その経験を記録として残し、次の担当者につなげていくことも重要な業務の一つだろう。「その人がいなければ分からない」を少しずつ減らし、チームで情シス業務を回せる状態を作ることが、次のトラブルへの備えにもなる。
教訓その2:事故が起きてからでは遅い まず見直したいのはバックアップ
最も基本的であり、トラブル時にその重要性を痛感するのがバックアップだ。
今回の回答でも、削除や上書きなどの操作をする際、バックアップが取れない環境であれば確認を挟む仕組みが必要だという意見や、そもそも「可能であればバックアップは必ず取ること」という声が寄せられた。バックアップを取ること自体が難しいほど環境が窮迫している状態で作業することへの危険性を指摘する声もある。
一方で、バックアップは「取得している」だけでは十分ではない。実際にデータが消失した経験からは、バックアップを取ることと同時に、いざというときの復旧方法までしっかり対応できるようにしておくべきだという声もある。全従業員にデータの再入力を依頼するような事態を経験すれば、復旧できる環境を事前に用意しておくことの意味も大きく変わってくる。
さらに、バックアップストレージを丸ごと交換したという経験や、ハードウェアを寿命まで使い続けるのではなく、ほどほどの時期にリプレースすべきだという意見もあった。バックアップ環境そのものについても、継続して利用できる状態なのかを確認しておく必要がある。
こうしたトラブルを経験した情シスから寄せられたメッセージは、「バックアップを取っておこう」という一言だけではない。データが消えることを前提に、必要なデータを戻せる状態まで準備しておくことが、徹夜の復旧作業を避けるための基本になる。
教訓その3:「テスト環境では問題なし」でも、本番でトラブルは起きる
もう一つ、回答で目立ったのが、プログラムの本番反映やシステムの改修・更新に伴うエラーやデグレードへの対応だ。
こうしたトラブルは、夜間の長時間対応につながるだけでなく、顧客への影響が発生すれば、説明や交渉まで必要になる。だからこそ、経験者からは「リリースはリハーサルが大事」という声が寄せられた。全てのシステムを事故ゼロにすることは難しいからこそ、システムやサブシステムごとに重要度や優先順位を付け、重要なものにはコストをかけてでも厳重に対応する、という考え方だ。
また、テスト環境で問題なく動いたからといって、本番環境でも同じように動くとは限らないという指摘もある。特に、本番データが残っていない休日や夕方などに更新を適用すると、正確な検証ができず、問題を見つけられない可能性がある。そのため、現場に協力してもらいながら、当日の業務への影響が少ない時間帯に更新し、少量でも本番データを使って検証しておくことが重要だという。
こうした事前検証に加えて、イレギュラーな項目までテストすること、要件定義・設計・テストをきっちり行うこと、ダブルチェックの体制を整えることなども挙げられた。事前レビューを怠らず、システム入れ替え時には「事前検証をどれだけしても不足ということはない」というくらいの意識で臨むことが、トラブルを経験した担当者の教訓となっている。
その背景には、人が作る以上、どれだけ自信を持って仕上げても何らかの瑕疵(かし)が潜んでいる可能性がある、という考え方もある。「自分では大丈夫」と思ったところでも、もう一度確認する。その姿勢が、リリース時の事故を減らすための重要なポイントなのかもしれない。
教訓その4:「頑張れば何とかなる」ではなく、自分自身を守る
そして、今回の回答で忘れてはいけないのが、障害対応を担う人自身の心身への負担だ。
「体力的にも精神的にも経済的にも大変厳しかった」という声に加え、朝起きてすぐにトラブル連絡を受け、その後の対応や顛末書作成を考えて憂鬱になるという声もあった。長時間の対応や徹夜が発生すれば、当然ながら担当者への負担は大きくなる。
だからこそ、長時間対応が避けられない職業であることを自覚し、事前に睡眠を確保することや、対応後のオフタイムを確保する習慣を身につけることが大切だという。また、どれだけ忙しいときでも休暇や休憩を取っておくべきだという意見もある。
一方で、こうした自己管理だけではなく、失敗を「資産」に変える視点を持つことを勧める声もあった。トラブルを経験したことそのものを次の改善につなげるという考え方だ。ただし、追い込みすぎることで立ち直るのに時間がかかることもある。だからこそ、極限まで頑張ることを前提にせず、入念な検討やサポートを用意したうえで取り組むことが重要だという。
障害対応を乗り切ることだけを考えるのではなく、対応する人がその後も仕事を続けていける状態を保つ。これも、持続可能な情シス運用を考える上で欠かせない視点だろう。
現役情シスの「地獄」から見えてきた、再発防止の共通点
ここまで見てきたように、今回のアンケートには、データ消失やシステム更新、夜間リリース、長時間対応、属人化、心身への負担など、さまざまな経験が寄せられた。
一見すると、それぞれ別々の問題に見える。だが、その経験から寄せられた教訓をたどっていくと、共通する考え方がある。
バックアップなら、取得するだけでなく復旧まで考える。本番反映なら、テストやレビューを重ね、重要度に応じて確認を行う。業務が属人化しているなら、引き継ぎ資料や報告書を残し、個人の経験をチームで共有する。そして、障害対応を担う人自身についても、睡眠や休憩、休暇、対応後のオフタイムを確保する。
いずれも、トラブルが起きたときに担当者個人の頑張りだけで乗り切るのではなく、あらかじめ「どうすれば被害を抑えられるか」「どうすれば復旧できるか」「どうすれば一人に負担を集中させずに済むか」を考えておくという発想だ。
「地獄」を個人の経験で終わらせない
今回寄せられた回答者の声から得られる最大の教訓は、トラブルを「その場を乗り切って終わり」にしないことではないだろうか。
徹夜して復旧した経験も、リリースで帰れなくなった経験も、顧客や社内からのプレッシャーに耐えた経験も、1人で抱え込んでしまった経験も、そのままでは1人の担当者が背負った苦い思い出で終わってしまう。
だが、その経験からバックアップを見直し、復旧方法を整え、テストやレビューを強化し、引き継ぎ資料を残し、担当者自身の働き方を見直せば、それは次のトラブルを防ぐための資産に変えられる。
1人の情シス担当者が経験した地獄のような経験を、次の担当者が経験しなくて済む仕組みに変える。それが、今回寄せられた数々の「血と汗の教訓」を、これからの情シス運用に生かす一つの方法なのではないだろうか。
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