AIで営業は効率化した、でもなぜ売れない? 成果を出す人が大切にしていること
AIで提案書の作成や情報収集は効率化できても、それだけで営業成績は上がるのか。AIを導入した営業現場で今、問われているのは、ツールを使いこなす力だけではない。
営業現場でも生成AIの活用が進み、提案書や営業資料の作成、情報収集といった業務の効率化が進んでいる。一方、こうした効率化が必ずしも売り上げや受注率の向上など、事業成果に結び付いているわけではない。
教育テック大学院大学とウィルソン・ラーニング ワールドワイドが実施した「AI時代の営業力調査2026」によると、AIの活用によって資料・提案書の作成時間が短縮したと回答した営業担当者は50.9%に上った。一方、受注率の向上を実感した人は5.2%、案件単価の向上は4.6%にとどまった。AIによる業務効率化の効果は広がっているものの、売り上げに直結する成果を実感している人は限られている。
AIで営業業務は効率化、「でも受注率向上の実感なし」のギャップ
同調査は、教育DXと教育機関経営を専門とする教育テック大学院大学と、人材・組織開発コンサルティングを手掛けるウィルソン・ラーニング ワールドワイドが共同で実施したものだ。インテージが2026年8月26~28日にインターネット調査を実施し、全国の20~69歳の営業担当者841人と営業管理職216人の計1057人から回答を得た。営業担当者841人の回答を分析し、AI活用成熟度や対人営業力、自己成長力と営業成果の関係を検証した。
調査では、AI活用によって効果を感じた項目として「資料・提案書の作成時間短縮」が50.9%で最も多く、「情報収集の短縮」が27.5%で続いた。一方、「受注率の向上」は5.2%、「案件単価の向上」は4.6%だった。業績に直接結び付く効果を挙げた割合は平均6.0%にとどまっている。
AIによって営業活動の一部を効率化できても、それだけでは顧客の購買意欲を高めたり、案件の受注につなげたりすることが難しい実態が見えた。効率化によって生まれた時間を、どのように顧客への提案や関係構築に振り向けるかが課題だ。
対人営業力とAI活用力を兼ね備えた層は成果実感が2.7倍
営業成果との関係で注目されるのが、AI活用成熟度と対人営業力だ。
両方の水準が高い「AI協働型」では、営業成果の向上を実感した人が48.8%に上った。これに対し、AI活用成熟度と対人営業力の両方が低い層では17.8%で、AI協働型は約2.7倍となった。
また、AIによって効率化した時間の使い道にも違いがある。AI協働型では「顧客課題のリサーチや提案の深掘り」に時間を充てている人が41.4%だったのに対し、両方が低い層では7.3%にとどまった。
AIを単なる作業の代替手段として使うのではなく、顧客の課題を把握し、提案の質を高めるために活用できるかどうかが、営業成果を左右する要素だ。
AIの出力を見極める自己成長力も重要に
営業担当者自身が学び続ける力も、成果との関連が見られた。自己成長力が高い層では、営業成果の向上を実感した割合が52.2%となり、低い層の38.6%を上回った。この差は統計的に有意だった。
自己成長力が高い層には、AIの出力をそのまま受け入れるのではなく、内容を検証した上で活用する傾向も見られた。AIから適切な回答を得るための問いを設定する力や、出力された情報の妥当性を判断する力が、営業活動においても重要になると考えられる。
教育テック大学院大学の山田恒夫教授は、個人に適したAIエージェントが営業担当者の参謀や秘書の役割を担う可能性を指摘する。AIに任せる仕事と人が担う役割が明確になる中、人間には目標や問いを的確に示す力と独創的な判断が求められるという見解だ。
また、ウィルソン・ラーニング ワールドワイドの加山祥三執行役員は、AIの普及によって操作技術による差が縮まる一方、顧客情報の質と量、AIの出力を見極める力が営業成果を左右すると説明する。顧客に近い立場で良質な情報を得る対人営業力と、仕事を通じて成長し続ける力の重要性が高まるとしている。
AIの導入が営業活動の効率化にとどまるのか、売り上げや受注率の向上につながるのか。その分岐点となるのは、ツールの操作スキルだけではなく、AIによって生まれた時間を顧客理解や提案の深化に活用できるかどうかにある。企業には、AI活用の環境整備と並行して、対人営業力や自律的な学習能力を高める人材育成が求められるだろう。
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