システム移行を考えるに当たり、最もハードルが低いのが最新のWindows Server 2012あるいは2012 R2への移行と考えられる。例えば、ActiveDirectoryやWindowsファイル共有機能による情報共有機能、アクセス制御の利用などを考えれば、同じOS系列だからこその利点を生かせる部分が多い。
ただし、これはかつて検討した(と思われる)Windows Server 2008への移行以上に工数がかかる可能性を秘めている。Windows Server 2008では選択できた32ビット対応版は提供されていない上、さまざまな追加や変更が加えられているからだ。とはいえ、まったく別のOS系列に移行するのに比べれば、まだ工数はかからないと考えてよいだろう。
しかし、例えば5年先のIT運用環境を考えると、本当にそれが正解なのかという疑問もわいてくる。OS移行を尻込みしている間にIT環境は大きく様変わりしているからだ。主な変化は、クラウドサービスの登場とLinux系OSの台頭だ。
サーバを所有せずにその能力だけを使えるクラウドサービスは、これまで経験してきたシステム更改とはまったく異なる選択肢になる。また、導入コストが格安なLinux系OSが、企業の業務ユースに十分使えることが実績で証明されてきたことも見逃せない。
こうした変化を前に、ユーザー企業も多様な選択肢を探りつつある。IDCでは、Windows Server 2003のサポート終了後の対応について調査している。その結果は図2に見る通りだ。
Windowsの最新サーバに移行すると明言した企業は半数に満たない。その他はLinux系OS(4.5%)、UNIX系などその他OS(9.1%)への移行、そして「サーバを所有せずにクラウドサービスへの移行を図る」(5.4%)と、合計すれば2割近い企業がWindowsサーバ所有からの脱却を図っていることになる。
ただし、OS移行を行う予定の企業とほぼ同じ割合の企業が「Windows Server 2003を使い続ける」としているところにも注意が必要だ。この延命策については後述する。なお、「サポート終了を知らなかった」「まだ計画が何もない」企業も少なくない(合計19.6%)。こうした企業は早急に対応検討が必要だ。
次に、移行に当たっての問題点は何なのかを、詳しく考えてみよう。先ほどの調査の中で、「新OSへの移行障壁」は何かについても聞いている。その結果は図3に見る通りだ。
前述した通り、移行障壁の上位に挙げられているのがほとんどアプリケーションに関するものだ。「動作検証やテストにかかる作業負担」を重く受け止めている企業が55.1%、「自社開発アプリケーションの再開発や修正」が必要と考える企業が40.7%にのぼる。「現在使用しているアプリケーションの互換性がない」という回答(31.4%)も、実際には同じことを指しているかもしれない。
また、「新OSやアプリケーションのライセンス購入費用」(40.3%)や「サーバや周辺機器の買い替え費用」(25.8%)というコスト面での障壁、「サーバの管理システムを変更しなければならない」(26.7%)、「管理者に実施する教育やトレーニングの負担が大きい」(14.8%)という運用管理面での課題も意識されている。
これを踏まえ、次に主な移行の選択肢について考えてみよう。
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