クラウド型データウェアハウスから調達できるのは、あくまでもそのプラットフォームのみだ。実際に「使える」データウェアハウスを構築するためには、企業ごとの目的にあった設計やインテグレーションが必要となる。
例えば、分析目的に沿ってどんなデータモデルを構築、設計するのか、データを統合する際のクレンジングや名寄せをどうやって行うのか、どんなETLツールを組み合わせるのか、エンドユーザー業務に役立つ分析環境はどうあるべきかなど、検討すべき課題は多岐にわたる。
クラウド型データウェアハウスを提供しているプロバイダー自身が備えているコンサルティング能力、SIパートナー網によるサポート体制の充実度など、上流工程の要件定義からデータモデル設計、インフラ構築、運用、拡張まで、データウェアハウスのライフサイクル全般を見据えたサポート力を評価すべきである。
クラウド型データウェアハウスはスモールスタートできるのが最大のメリットだが、データ量が増大していくとともに当然ながら利用料も膨らんでいく。その将来的なコスト負担に耐えられるのかと危惧するかもしれない。
ただ、一般的には、目立った成果が得られていない段階から、データウェアハウスにどんどんデータを投入していくことはまずありえない。データ量が増大しているということは、それだけデータウェアハウスが順調に成長していることを意味する。
ステップごとの成果を評価しながら、バランスのとれた投資サイクルを確立することが重要である。
長期的な投資コストを見積もると、オンプレミス型データウェアハウスとクラウド型データウェアハウスの間には、ほとんど差が表れてこないケースもある。
ただし、その場合にはデータウェアハウス自体だけでなく、その周辺で起こってくるさまざまな課題についても考慮に入れておく必要がある。例えば、膨大なデータ量を抱えたデータウェアハウスのバックアップをどうするのか。さらに、DR(災害復旧)やBCP(業務継続計画)にどう対応するのかといったことが、重要な課題として浮上してくる。これらの対策をオンプレミスで施すには多大なコストがかかるとともに、インフラの運用管理にあたるスタッフにも重い作業負担がのしかかってくる。
クラウド事業者が提供しているデータ保護やマルチリージョンによる冗長化などの周辺サービスを利用することで、こうした問題をあっさりクリアできることがよくある。
また、オンプレミスで運用中のデータウェアハウスに対して機能拡張を行うのは容易ではない。これに対してクラウド型ならば、サービスプロバイダーが次々にリリースする新機能や新サービスを取捨選択しながら柔軟に取り入れていくことで、最新テクノロジーをタイムリーにキャッチアップすることができる。
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