中央制御装置なしで端末同士がネットワークを自動構成する「PAC」が登場した。IEEE 802.15.8規格の標準化を目指した動きに注目する。
今回のテーマは、中央制御装置を必要とせず、端末同士が相互にネットワークを自動構成する「Peer Aware Communications(PAC)」だ。2015年中の成立を目指して現在策定中のIEEE 802.15.8規格の標準化に貢献すべく、情報通信研究機構(NICT)が国内2エリアで実証実験を開始した。
PACは、端末だけで迅速にネットワークを構成する「端末間通信ネットワーク」の1つの形だ。類似する通信技術に「DTNマルチキャスト配信」や、Wi-Fiアライアンスが策定した「Wi-Fi Direct」、日本が主導権をとろうと積極的に開発を進めている「Wi-SUN」などがある。
2014年5月にNICTが発表したのは、これらとは異なりWi-Fi仕様を利用せず、インターネットも使わず、中央制御装置やアクセスポイントも必要としない「インフラレス」ネットワーク通信「Peer Aware Communications(PAC)」を目指す取り組みだ。
PACは、現在国際規格策定が急がれているIEEE 802.15.8が目標とする「無線を使って地域を面的にカバーする端末間通信ネットワーク」だ。他の端末間通信技術と根本的に違うのは、中央制御局を用意する必要がなく、通信経路(チャンネル)を確保して相手側との接続を確立する必要もないところだ。
1対1、1対多(特定多数)の通信ではなく、基本的には1対不特定多数への送信を行うブロードキャスト通信を行う仕組みが考えられている。ただし、送信時にグループを指定する仕組みを用意する。送信端末で例えば「グループA」に送信すると、その電波は周囲の全ての端末に届くものの、「グループA」に所属する端末以外では情報を取得できない。ブロードキャストとはいえ無差別な放送にならないセキュリティを備えるわけだ。
NICTが実証実験中のシステムは、PAC標準化への日本からの提案の一環であるとともに、実用化に向けた課題発見のための取り組みでもある。実験は2エリアで行われる。東京都港区の台場地域では、自治体と地域内でバスを運行する会社、バス路線内の商業施設などの協力により、図1のようなイメージで実施される。この図は実験概要を示すとともにPACの1つの実現イメージだ。
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