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モバイルファースト時代に押さえておきたいCMSの選び方IT導入完全ガイド(4/4 ページ)

» 2014年08月25日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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少なくとも更新作業は自社内で行うことを念頭にツールを選択

 現在のCMSツール隆盛のカギの1つは、Webサイト構築とその後の運用を切り分け、前者は専門の業者に任せ、後者は社内の担当者が担当できるようにしたことだ。

 Webサイト構築は絶えず新技術が登場し、魅力的な見せ方や仕掛けが登場し、主にデザインとアイデアの激しい競争が行われている世界だ。構築やデザインなどコンテンツの背後にある部分も企業が背負うと専任担当者が複数必要で、ノウハウ取得や技術学習に大きなコストを割かねばならない。そこを「餅屋は餅屋」と割りきって、企業内ではコンテンツの更新や新企画などに注力するのは、事実として正しい選択だ。

 肝心なのは更新作業が誰にでも分かりやすく簡単なことだろう。WYSIWIG方式のように仕上がりイメージが目に見える入力/編集画面は取っ付きやすいが、業務としてこなす場合に必ずしも最適とは限らない。

 仕上がりイメージはあくまで例であり、それで最終確認とはならない。CMSツールは無償利用ができる場合が多いので、まずはデフォルトのテーマでもよいので更新作業を体験し、使い勝手を確認することをおススメする。

ツールの性格を理解しよう

 CMSといってもECMに近いハイエンドなものから、Webページ作成ツールに若干の管理機能が付加された程度のものまで、ツールによってカバー領域が大きく違う。価格はある程度の目安にはなるものの、低価格なツール、無償なツールが低機能なのかといえば事実は異なる。ツールの生い立ちや実績を調べ、自社の目的に合致する性格のツールを選びたい。

よくあるオープンソース製品、無償版と有償版の違いと注意点は?

 最も大きな違いは、ベンダーサポートが得られるか否かだ。オープンソース製品は多くの場合ユーザーコミュニティが発達していて、情報はそこから得るのが普通だが、専門外の人にはハードルが高いものだ。また、日本語資料がない場合もある。

 企業IT部門では「オープンソース製品はサポートサービスが得られる場合だけ導入する」というのが共通理解といってよいだろう。業務部門主導で選ばれることも多いCMSツールだが、これは鉄則として考えた方がよい。

 無償製品は、体験用、テスト用として高い利用価値があるが、本番環境への移行には有償製品を購入したい。また、サポート品質、つまり日本語で質問や回答が可能か、返答が何時間でもらえるか、日本にサポートスタッフが常駐しているかといった面も確認しておきたい。

オンプレミス用パッケージとSaaSの違いと注意点は?

 SaaSは初期投資がほとんど不要で毎月の利用料がかかる。一般的には長く使うものならオンプレミス用が、短期あるいは臨時の利用ならSaaSが有利だ。

 自社内構築あるいはホスティングサービス利用の場合、ツールによってPHPやPerl、Ruby、Pythonなどの言語対応と、MySQL、PostgreSQL、SQLiteなどのDBMSが稼働する環境が必要だ。また、アクセス集中によるレスポンス悪化や障害時の対応を図るため、Webサーバを含めたインフラの負荷分散やスケーリングも肝心だ。

 一方、SaaSではこれらを気にする必要がない。バーストアクセスに強いスケーラビリティをもつIaaSをインフラとし、Webサーバやチューニング済みのCMSツールをセットにして提供するベンダーもある。この場合、月間1000万PVのサイトのレスポンスも劇的に改善可能だ。

「動的生成」と「静的生成」の違いを理解しておこう

 代表的なCMSツールの中に、Webページの「動的生成」をするものと、「静的生成」をデフォルトとするものがある。この違いは理解しておいた方がよい。

 動的生成を行うツールでは、アクセスされるたびにデータベースからコンテンツを呼び出し、テーマを適用して表示する。ワントゥワンのWebページ生成やリアルタイムデータ更新(システム連携)などが実現しやすい一方、アクセス集中によるパフォーマンス低下を考慮する必要がある。

 また、リクエストに応じてサーバ側からコンテンツを出力する動的の場合は、どうしても脆弱(ぜいじゃく)性の課題がつきまといやすい。旧バージョンや旧テーマ、プラグイン、あるいは公式以外のサイトから入手したテーマやプラグインには攻撃を受けると成功してしまうリスクがあるからだ。

 ベンダー側で脆弱性は迅速に修正するので最新バージョンを利用する限りは安心だ。テーマやプラグインは、公式サイトでは審査済みのものだけが提供されており、そこからのダウンロードだけを利用していれば問題はひとまずないはずだ。

 一方、静的生成を行うツールは、アクセスされる前に静的ページを生成して提供する。シンプルな仕組みでレスポンスも速く、アクセス集中にも強い利点がある。CMSツールが止まっていても、Web利用に支障もない。

 ただし、動的なコンテンツが利用できない弱点もある。とはいえ多くのツールが動的生成に相当する機能をページ内に組み込めるので、両者の折衷的なWebサイトを構築し、運用可能だ。

 以上、特に選択に当たって注意しておきたいポイントを挙げたが、これ以外にも管理権限の管理、アクセス制御、承認ワークフローなど、ツールによって異なる部分はある。

 ただし、管理機能が多いことが必ずしも自社の運用に有利とは限らない。あくまで自社の目的と要件を突き詰めて、課題を解決しながらオーバースペックにならず、セキュリティ面でも不安のない適切な着地点を見つけてほしい。

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