冒頭でも述べたように、オンラインストレージサービスの導入パターンには大きく2つの流れがある。現段階では「スマートデバイス」と「コラボレーション系SaaS」がもたらす新たなIT活用シーン(社外からの文書アクセス)による新規導入が主体だ。
だが、今後は「既存のファイルサーバからの移行もしくは併用」という流れも出てくると予想される。特に2015年7月にはWindows Server 2003がサポート終了を迎えるため、これを機にファイルサーバの在り方を見直す動きも活発になってくるだろう。
その際、ユーザー企業は既存のファイルサーバとオンラインストレージサービスをどのように使い分ければ良いのだろうか。そのヒントとなるのが以下のグラフだ。これは文書管理やファイル管理システムを導入済みの年商500億円未満の企業に対し今後のニーズを尋ねた結果である。「社内設置型文書管理システム(ファイルサーバとは若干異なるが、用途としてはファイルサーバに近い位置付けと見なすことができる)」と「オンラインストレージサービス」のそれぞれを導入している企業に分けて集計してある。
選択肢として挙げられた項目は以下の3つに大別することができる。
グループ1は「オンラインストレージサービスだけでなく、社内設置型文書管理システムにおいても利用可能になるかもしれない機能」に該当する。現在のオンラインストレージサービス導入がスマートデバイス活用によってけん引されていることは前述の通りだが、他の業務システムをスマートデバイスからアクセスするための基盤(リモートアクセスなど)を既に構築している場合にはスマートデバイスからの活用だけではオンラインストレージサービスへの移行理由としてはやや弱くなるかもしれない。
そこで重要となるのがグループ2の項目だ。これらは「オンラインストレージサービスと比べて、社内設置型文書管理システムに足りないもの」と見なすことができる。スマートデバイスからの利用に加え、「顧客や取引先とデータを共有したい」「社外にバックアップデータを保管したい」といったニーズがある場合にはオンラインストレージサービスへの移行または併用が有効と考えられる。
グループ3は「社内設置型文書管理システムと比べて、オンラインストレージサービスがまだ十分でない機能」に該当する。実際、ファイル権限設定やアカウント管理は個人向けサービスと企業向けサービスの主要な相違点であり、各サービスが最も注力するポイントでもある。今後は既存の認証システムとの連携も重要となってくるだろう。
このように考えると、オンラインストレージサービス導入の検討ポイントは以下のようにまとめることができる。
前者のニーズが強いほど、オンラインストレージサービスの新規導入や移行が有力となり、後者のニーズが強いほど既存ファイルサーバの強化やオンラインストレージサービスとの併用が有効になってくると考えられる。
以上、オンラインストレージサービスの導入状況、代表的なサービスの最新動向、今後に向けたニーズの整理といったポイントについて述べてきた。個人のみならず、企業が管理するデータについても、クラウドは新たな「格納場所」として受け入れられつつある。PCやサーバ、ストレージといった社内の「格納場所」に加えて、今後はオンラインストレージサービスが第3の「格納場所」(データストア)として利用されていく可能性は非常に高い。そうした近い将来に向けて、本稿が今後の指針作りの参考となれば幸いである。
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