指紋で人物を特定するように、工業製品の表面形状で本物がかどうかを特定する「物体指紋技術」が登場した。偽物撲滅につながるだろうか。
今回のテーマは「物体指紋認証」だ。指の指紋で人物を特定するように、工業製品の製造工程で生まれる微細な表面紋様のばらつきを「物体指紋」として、ICタグやバーコードなしで効率的な個品管理を可能にする技術が誕生した。
工業製品の一部の画像を管理データベースと照合して、短時間で一致、不一致を識別、認証する技術のこと。2014年11月、NECが指紋認証技術をはじめとするさまざまな画像認識技術を援用し、スマートフォン内蔵カメラを用いて瞬時に個品認証を行う技術を「物体指紋認証技術」として発表した。
まず、工業製品に「指紋がある」ということに驚かされるが、実は「指紋のように世界にただ1つしかない表面紋様」のことを指す。大量生産される製品であっても、その表面には製造工程でいくら均一に加工しようとしても残る、個品ごとの微細な差異がある。
典型的なのは、サンドブラスト加工による梨地表面だ。曇りガラスのように、本来は表面がツルツルピカピカする素材なのに、わざと微細な凹凸をつけて、光沢をなくしたり、滑りにくくしたり、見栄えをよくしたりする製品はよく見かける加工だ。これには製品の表面に研磨材を勢いよく吹き付けて微細な凹凸をつける方法がとられる。
このような加工をしなくとも、鋳物や粒子混合塗料など、多くの物体表面にはもともと細かな凹凸が存在する。その凹凸のパターンは均一に見えるものの、ルーペでよく見ると個品ごとに全く違う。どんなに精密にブラスト機を制御しても、個品ごとに完全に一致することはない。
その違いを指紋照合の場合と同じように、登録された画像と撮影された画像とで照合して見分けようというのが物体指紋認証の基本の考え方だ。
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