指紋を光学スキャンしてデジタル情報として読み取り、あらかじめ登録された指紋パターンと照合する「指紋認証」技術は1970年代から発達した。早期から取り組んだNECは1982年に実用化に成功し、その後も世界の第一線で指紋認証技術の普及と発展に寄与してきた。
また、画像を基に人物の特定を行う「顔認証」技術、さまざまなものが写った画像から特定の被写体を抽出し、認識する「被写体認識」技術も、これまで熱心に磨き続けてきた。
これらの技術を集めて、2011年にはメロンの表面の網目画像をデータベースに登録し、店頭のメロンの画像と照合して生産地の真贋などを判定するアグリバイオメトリクス技術を開発した。それぞれ微妙に違うメロンの網目をいわば「指紋」として照合する仕組みだ。
今回の発表はその延長上にあり、より微細な違いを、スマートフォン内蔵カメラのような一般的なカメラ(1メガピクセル程度)の画像で判別可能した上、ごく短時間での照合が行えるようにしたところが進化だ(図4)。
気になるのは認識精度だが、同社は1000本の金属ボルトの個品認証を実証した。それに要する時間は約1秒、しかも100万回の画像照合の認証成功率は100%だった。同一の金型によって作られた部品(図5)でも、その違いを見分けることは容易であり、1ミリ〜数ミリ角の面積であれば、1000個程度の照合は瞬時にできる。
金型を利用した製品の場合には、個別の特徴がある一方で、その金型に特有の紋様もあり、それを識別できる。金型で作ったサンプルが10個以上あれば、どの金型で作成した部品かどうかを識別できる。プラスチック部品についても有効性が検証されている。
なお、4Kなどさらに高精細なカメラによれば、もっと表面の変化が少ないものにも応用が可能だ。一方、例えば木目のある素材、壁紙などであれば一般的なカメラで撮影しても照合できる。要は、表面紋様がはっきりと写し出せれば、どのようなものにも応用可能ということだ。
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